【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1404話 想い【ミティたちside】

 タカシが幻影たちと戦っている頃――

「うぐっ……!? な、なんですか……この記憶は……」

 ミティは頭を押さえてうずくまる。
 彼女がいるのは、ヤマト連邦『中煌地方(ちゅうこうちほう)』の『暁紅(ぎょうく)』という街だ。
 強制転移により単独行動を余儀なくされた彼女は、状況を整理し態勢を立て直している最中だった。

 そんなとき、タカシが脳内に流れた『存在しないはずの記憶』がミティの脳内にも流れてきたのである。
 それは、『霧隠れの里』の里長カゲロウや地下遺跡の巫女イノリが意図したことでは、断じてない。
 彼女たちはあくまでも、タカシを惑わすために『夢幻流転の術』や『英霊纏装・並行幻影の術』を発動しただけだ。

 しかし……タカシとミティには特別な絆がある。
 単なるロマンチシズム的なアレではない。
 チートスキル『加護付与』によって相互に強く結びついているのだ。

「タカシ様が……私だけを愛してくれる世界? なんて甘美な……。はうぅ……」

 ミティがうっとりする。
 彼女にとって、それは理想の世界のように思えた。

「でも……カトレアちゃんが死んで……。それに、アイリスさんやモニカさんも……」

 ミティはふるふると首を振る。
 幼なじみにして親友のカトレア。
 闇の瘴気の影響により、彼女はミティを陥れるために画策していた。
 この世界線でのカトレアは、タカシたちの聖魔法によって無事に浄化され改心し、冒険者として新たな道を歩んでいる。
 いずれまた会うこともあるだろう。
 だが……『存在しないはずの記憶』におけるタカシは聖魔法を習得していなかったこともあり、カトレアは死亡するという結末を迎えた。

 また、アイリスはオーガたちとの戦争で、モニカは魔物の襲撃で、それぞれ命を散らしている。
 彼女たちはミティにとってかけがえのない仲間だ。
 最愛のタカシが自分だけを愛してくれるのは嬉しい。
 だが、彼女たちがいない世界なんて、今のミティには考えられなかった。
 今しがた流れた『存在しないはずの記憶』の中の彼女たちに思いを馳せ、ミティは自然に涙を流していた。

「タカシ様……。ひょっとして、精神攻撃を受けられているのでしょうか……」

 ミティは最愛の夫を想う。
 サザリアナ王国からヤマト連邦への海上にて、ジャイアントクラーケンを引き付けるために単身囮になった彼。
 魔道具『共鳴水晶』により無事は確認できているものの、やはり心配である。

「タカシ様……。私は幸せです。この世界のタカシ様の選択こそ、みんなを幸せにする最善のものだったと信じています」

 ミティがギュッと拳を握る。
 そして、彼女はゆっくりと立ち上がった。

「迷うことはありません……! 届いて、私の想い! はああああっ!!」

 ミティが『共鳴水晶』に魔力を込める。
 その輝きは、まるで彼女の心を映し出しているかのようだった……。



 ――そして、ヤマト連邦の他の地域に飛ばされた者たちも、ミティと同じような思いをそれぞれ抱いていた。

「タカシ……」

「またみんなで……美味しい料理を食べよう」

「た、タカシさん……」

「ふふん。こんな精神攻撃なんかに負けるような男じゃないでしょ……?」

「タカシお兄ちゃん、元気出してっ!」

 アイリス、モニカ、ニム、ユナ、マリア。
 彼女たちがそれぞれ、語りかけるように独り言をつぶやく。
 その目には涙が流れている。
 彼女たちもまた、別々の地で『存在しないはずの記憶』を思い出していたのだ。

 それは単なる幻ではない。
 タカシが自分だけを愛してくれる甘美な記憶。
 熱く尊い時間の記憶だ。

 しかし、今の彼女たちには関係ない。
 彼女たちが愛しているのは、この世界のタカシ、そしてこの世界の仲間たちだ。
 幻影の記憶に惑わされるわけにはいかない。

「タカシさん……。あなたならきっと乗り越えられます」

「まだまだ……世界の美食を味わい尽くせていませんわよ……? しっかりなさいまし」

「大和連邦で起きたという惨劇……。この世界のたかし殿なら、きっと回避できるでござろう」

「お館様がどんな選択をされても、私は全て受け入れます! 私の想い……少しでもお館様に届いて……!!」

 サリエ、リーゼロッテ、蓮華、レイン。
 彼女たちもまた、タカシに語りかけるように独り言をつぶやく。
 そして、その想いが届くことを祈りつつ『共鳴水晶』に魔力を込めたのだった。

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