【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1400話 レイン純愛ルート 先輩

 数か月後――

「うーん……。天井を掃除したいのですが、手が届きませんねぇ……」

「私にお任せください、レイン先輩! うおおおおおぉっ!!」

 俺は気合を入れて、天井の埃を払い落とす。
 レイン先輩はそんな俺の様子を、感心した様子で眺めていた。

「すごいですね! タカシさん!」

「ありがとうございます!!」

 俺は素直に礼を言う。
 彼女こそ、俺を絶望の淵から救ってくれた恩人だ。
 まぁ、賊たちを倒したのはハルク男爵領の衛兵だったそうだが……。
 それでも、レイン先輩が俺を牢から出してくれたのは事実だ。

「でも、本当に良かったのですか?」

「何がでしょうか? レイン先輩」

「あなたは違法に奴隷狩りに捕まっていた身。本来なら奴隷から解放され、自由の身となられたはずでしょう? それなのに、こんな雑用として働いて……」

 レイン先輩が不安そうな表情を浮かべる。
 確かにその通りだ。
 違法な手段で奴隷にされていた俺は、どこに行こうとも自由だった。

 助けてくれたのが冒険者などであれば、いくらかの謝礼は必要だっただろうが……。
 実際に助けてくれたのは、ハルク男爵が手配した衛兵やその他の人員。
 自分が治める領地の賊を討伐するのは当然の行為であるため、救出された側の者たちが謝礼を支払ったり恩を返したりする必要はない。

「俺には行く当てもありませんから……。それに、ここでの仕事を気に入っていますし」

「そう言っていただけると助かります」

 レイン先輩はホッと胸をなで下ろす。
 俺も微笑んだ。

「さて、そろそろ休憩にしましょうか。お茶を持ってきますね」

「あ、私がやりますよ」

「いえいえ、レイン先輩はお疲れでしょう? 座っていてください」

 俺はレイン先輩に着席を促す。
 そして、お茶の用意を始めた。
 チートスキル『ステータス操作』でいろいろな能力を伸ばしているので、これぐらいはお手のものだ。

「ところで……それ、やめていただいてもいいですよ?」

「それ……?」

 レイン先輩の指摘に、俺は首を傾げる。
 彼女は苦笑した。

「私のこと『先輩』って呼ぶの、やめてもらっていいですか? 私、年下ですし……」

「いえ、私にとってレイン先輩は先輩です! この屋敷での働き方を教えてくれたじゃないですか!!」

 俺は断言する。
 俺の恩人であるレイン先輩に、敬意を払いたいと思ったのだ。

「で、でも……。私だって、タカシさんより少し早くここに来ただけの新人なんですよ? それなのに、『先輩』だなんて……」

「確かにそうらしいですが……。この屋敷で働くよりも前から、別の場所でメイドをしていたともお聞きしました。やはり、メイドとしてレイン先輩は一人前の先輩だと思います。学ばせていただくところがたくさんあります!」

「そ、そうですか……?」

 レイン先輩が照れたように俯く。
 そんな仕草も可愛いらしい。
 俺は改めて彼女を見つめた。

「レイン先輩、本当に可愛いですね」

「かわっ!? な、なにを言い出すんですかっ!?」

 レイン先輩が顔を真っ赤にする。
 俺は首を傾げた。

「思ったことを言っただけなんですが……。何かおかしなことを言いましたか?」

「い、いえ……。その……」

 レイン先輩はモジモジと体をよじらせる。
 俺はまだ彼女の魅力を語り足りなかった。

 だが、物事には順序というものがある。
 屋敷で働くメイドと雑用係が、安易にそういう関係になるべきではない。
 職場恋愛が絶対禁止というほどではなくとも、働き始めて1年も経っていない半人前がかき乱すことは避けた方がいい。
 俺は咳払いをして話を変える。

「私は執事を目指します」

「執事……ですか?」

「はい。ただの雑用係ではなく、男爵様の執事――バトラーとして、この屋敷で働いていきたいのです」

 俺はそう宣言する。
 そして、レイン先輩を見つめた。

「私が無事に執事として認められた暁には……。貴方に伝えたい言葉があります」

「は、はい……」

 レイン先輩が頬を赤らめる。
 俺は彼女に微笑みかけた。

「その時を、楽しみに待っていてくださいますか?」

「……はい!」

 こうして、俺は執事を目指すことにした。
 レイン先輩への想いを伝えるために――。

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