【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1399話 レイン純愛ルート 奴隷狩り

 グウゥ~。
 俺はお腹の音で目を覚ます。

「あ……う……」

 俺はうめき声を上げた。
 剣で貫かれた腹が痛い。

 ……ん?
 いや、違う。
 俺は腹が減っているのだ。
 空腹のまま寝ていたことで、腹を貫かれる夢を見てしまったようだ。

 ……え?
 空腹と刺し傷は全然違うだろって?
 いや、知らんけど。
 そんなの俺に聞かれても困る。
 とにかく、そういう夢を見たということだ。

「う……ぐ……」

 俺はうめき声を上げて、牢の中で何とか起き上がる。
 そう、俺は牢に囚われているのだ。

「くそ……。うう……」

 どうしてこんなことになったのだろう?
 異世界転移と言えば、チートで無双してハーレムを作っちゃうのが定番だ。
 そして、その過程で俺は『勇者』や『英雄』と呼ばれるようになっていた……はず。
 しかし、現実は厳しい。

「最初に……空間魔法を取得しなければ……。見せびらかさなければ……。くそ、どうして……」

 俺は牢の中で頭を抱える。
 チート付きで異世界に転移してきたのなら、冒険者になるのが手っ取り早いだろう。
 だが、俺には冒険者になるという選択肢はなかった。
 なぜなら……怖かったからだ。
 そんな中、活路を見出したのが『空間魔法』だった。
 空間魔法があれば、運び屋としてガンガン稼げると踏んだのである。

「まさか……こうなるとはな……」

 俺は牢の中で肩を落とす。
 空間魔法が使えることをアピールしまくった結果、俺の名はすぐに王国中に知れ渡った。
 だが、それは悪目立ちだったのだろう。
 奴隷狩りに狙われ、こうして捕らえられてしまったというわけだ。

「くそ……。せめて、『魔封じの枷』さえなければ……」

 俺は牢の中で歯ぎしりする。
 しかし、いくら念じても魔法は発動しない。
 この枷のせいだ。
 この『魔封じの枷』があるせいで、俺は牢で大人しくすることしかできない。

「……腹が減ったな」

 ぐきゅるるる~……。
 俺の腹が鳴る。
 空腹の限界だ。
 このままでは、いずれ餓死してしまうだろう。

「なぁ、誰か……! 飯をくれないか……!!」

 俺は牢の中から叫ぶ。
 しかし、見張りの気配はない。
 妙だ……。
 俺は空間魔法を使える貴重な奴隷である。
 逃げ出す体力を奪うため、最低限の食事しか与えないのは理解ができるが……。
 餓死寸前まで食事を与えないのは、さすがにおかしい。
 俺がそう訝しんでいると――

 ガンッ!
 ドガンッ!
 キンキンキンッ!!

「な、なんだ!?」

 突然大きな音が鳴り響く。
 まるで、激しい戦闘が繰り広げられているかのような音だ。
 その音はどんどん大きくなっていき……やがて静かになった。

「終わった……のか?」

 俺は不安になる。
 いったい何が起きているのだろうか?
 もしや、奴隷狩り同士の抗争か?
 ならば、俺という奴隷の有用性を示して媚びを売らないと……。

「私はこっちの部屋を見てきます! ……はい! もちろん、賊の残党には気をつけます!!」

 部屋の外から、ガヤガヤといろいろな声が聞こえてくる。
 何やら慌ただしい。
 俺が取るべき行動は……。
 そんなことを考えていると、いつの間にか牢の前に何者かが立っていた。
 その人は、牢の中を覗き込んでくる。

「あ、あの……大丈夫でしょうか?」

「っ!?」

 俺は驚きのあまり、声も出ない。
 奴隷狩りのアジトには似つかわしくない、可憐な少女だったからだ。
 メイド姿の彼女は、心配そうな眼差しを俺に向けてくる。

「その……奴隷狩りに捕まってしまった方ですよね?」

「え、ええ……」

 俺はなんとか声を絞り出して答える。
 すると、少女はホッとしたような表情を浮かべた。

「良かった……。間に合って」

「あなたは……?」

「申し遅れました。私はレインです。ハルク男爵領に巣食う賊を一掃するため、微力ながらお手伝いしているところでして……」

 メイド姿の少女――レインさんはそう言って微笑む。
 絶望の淵にいた俺は、彼女の微笑みに救われたような気がしたのだった。

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