【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1398話 東雲高志『サムライ・スタイル』

「ま、まだだ……! 俺は、まだ……!!」

 俺はかろうじて立ち上がる。
 今しがた俺の脳内に流れた、存在しないはずの記憶……。
 復讐に囚わされた悲しさはあったものの、子どもも含めて3人仲良く暮らす幸せな記憶……。
 俺はその記憶を、とても尊いものだと思った。

 この世界の蓮華とも、そんな幸せを手に入れられるだろうか……?
 いや、違う。
 幸せは、自ら勝ち取ってこそだ!

「ふん……。まだ立ち上がるか」

 幻影が剣を構える。
 俺はそれに対抗するべくして、剣を握りしめた。

「俺は、こんなところで負けるわけにはいかない。愛する家族のために、俺はお前たちを打ち破る!」

「……その心意気は認めよう。だが、貴様では拙者に勝てぬ。拙者は東雲高志『サムライ・スタイル』。刀に生き、刀に死ぬ者。貴様の剣とは覚悟が違う。勝負にすらならぬぞ」

「やってみなけりゃ……分からないだろうが!!」

 俺は剣に魔力を込める。
 そして、幻影へと斬りかかった。

「愚かな……。潔く散れ」

 幻影が刀を構える。
 その刀身には、無駄なものが一切ない。
 魔力も闘気も、己の肉体にのみ注ぎ込んでいる。
 そんな彼が操るのは、純粋な剣技だ。

「――【無明斬】」

 またアレか!
 目にも留まらぬ斬撃……。
 今の俺の剣技では、受け止めることは難しいが――

「【ワープ】」

「なにっ……!?」

 俺はワープで幻影の背後へ跳ぶ。
 そして、その背中に向けて斬撃を放った。

「【魔皇炎斬】ん!!」

「ぐああっ!」

 幻影が吹き飛ばされる。
 俺はさらに追撃すべく、幻影へ迫った。

「くっ……!!」

 幻影が体勢を立て直す。
 だが、ダメージは大きいようだ。
 これも特化型の弱点と言えるだろう。
 治療魔法があれば、自分で回復できるから問題ないのだが……。
 彼は治療魔法を扱えないらしい。
 少なくとも、戦闘中に大ダメージを癒せるほどではないことは確かだ。

「トドメだ!! ――むっ!?」

 俺はさらに追撃をしようとする。
 だが、咄嗟に攻撃を中断して後方へ跳んだ。
 その直後――俺のいた場所に剣の雨が降り落ちる。

「次から次へと……!!」

 俺が歯噛みしていると、また別の幻影が現れた。
 執事服に身を包んだ幻影だ。
 彼は優雅に一礼する。

「ふむ……。なかなかの勘をしておりますな。今のを避けるとは……」

「また新手か……! お前は何の特化型なんだ? ちょっとやそっとじゃ、もう驚かんぞ!」

 俺は幻影執事に宣言する。
 すると、彼は含み笑いをした。

「これは失礼を致しました……。では、見せて差し上げましょう。完成されし私の力を……」

 幻影が魔力を高めていく。
 これは……何系統の魔力だ?
 火や水なら分かりやすいのだが、それ以外の属性はパッと判別できない。

「さて……貴方はどう動きますか? 受けるか、避けるか……。あるいは一目散に逃げ出すか……」

 幻影が優雅に微笑む。
 その表情からは余裕すら感じられた。

「ふん……。正面からの攻撃なんぞ、対処法はいくらでも――」

「否。貴方にそんな選択肢はありません」

「なに……? ――ぐっ……!!」

 幻影執事が訳の分からないことを言う。
 だが、それを追求する時間はなかった。
 次の瞬間、俺の腹に剣が突き刺さっていたからだ。

「ぐはっ……!」

 俺は血反吐を吐く。
 完全に油断していた。
 なんだ、今のは……?

「私の空間魔法を用いれば、このように……。回避も防御も不可能です」

「く……!」

「私はこの技を……こう名付けました。月夜に紛れ突き立てられる牙――【月牙】と」

 幻影が告げる。
 俺はなすすべもなく、そのまま崩れ落ちたのだった。

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