【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう ~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1388話 サリエ純愛ルート 快復

「見てください、サリエお嬢様。今日はお日様が出ていますよ」

「ふふ……。本当ですね、タカシさん。なんだか心が洗われるようです」

 ハルク男爵家の令嬢であるサリエ=ハルクは、穏やかな表情で笑う。
 俺は今、彼女の散歩に付き添っていた。

「タカシさん……いつもありがとうございます。私なんかのために……。この車椅子というものも、タカシさんが用意してくれたんですよね?」

「いえ、このぐらい当然ですよ。私はサリエお嬢様の専属治療魔法使いなんですから」

 俺はそう答える。
 この世界に、車椅子は存在しない。
 いや、ひょっとしたら世界のどこかに似たようなものはあるかもしれないが……。
 少なくとも、ラーグの街やハルク男爵領では見かけなかった。
 俺が独自で開発したと言っていいだろう。

「タカシさんのおかげで、こうして外に出ることができます。私はこのひとときが大好きです」

 サリエは嬉しそうにしている。
 彼女は俺よりもいくつか年下だが、とてもしっかりした少女だ。
 難病に侵されていたため、体力は落ちてしまっているが……。
 病が進行する前までは本をたくさん読んでいたらしく、様々な知識を持っている。
 貴族としての教育も、しっかりと受けていた。
 深窓の令嬢という言葉がぴったりの少女だ。

「もうすぐ、この治療も終わりますね……。タカシさんには感謝しかありません」

 サリエは深々と頭を下げる。
 彼女の病気は完治まであと少しだ。
 俺がこの屋敷に拉致されてきたときは、俺は中級の治療魔法までしか行使できなかったが……。
 1年以上が経過した今、俺は上級の治療魔法を使えるようになっている。
 彼女の治療も、もうすぐ終わるだろう。

「いえ。私としても、良いお仕事をさせていただきましたよ」

 俺は笑みを浮かべる。
 始まりこそ、拉致同然の連行だったが……。
 報酬は高額だし、屋敷での待遇は意外に悪くないし、サリエお嬢様はかわいいし……。
 なんだか、ここに来てよかったんじゃないかと思えるようになった。
 あのままラーグで治療行為を続けていたら、それこそ本物の盗賊に狙われていたかもしれないしな。

「お仕事……。タカシさんにとって、私を助けることはあくまでお仕事だったと?」

「え……? ええ、まぁ……」

 俺は戸惑いながら返事をする。
 サリエはじっと俺を見つめていた。

「タカシさん……。治療がすべて終わったら、私と結婚していただけませんか?」

「えっ……?」

 唐突なプロポーズに俺は戸惑った。
 彼女は頬を赤く染めている。

「タカシさんは、私のことをどう思っていますか?」

「お綺麗で素敵な女性だと……」

「では、私のことが好きですかっ!?」

「え……。そ、それは……」

 俺は口ごもる。
 治療魔法使いとして、患者に手を出すわけにはいかない。
 だが、サリエは真剣なまなざしで俺を見つめていた。

「私、タカシさんのことが好きなんです……!」

 サリエがきっぱりと言う。
 彼女の気持ちはよく分かった。
 だが、それは治療行為への感謝の気持ちだろう。
 俺はそう判断した。

「サリエお嬢様、お気持ちは嬉しいのですが……」

「タカシさん……。私は本気です……!」

 サリエが車椅子から立ち上がり、俺に抱き着いてくる。
 彼女の体温と柔らかな感触、そして甘い香りが伝わってきた。
 俺は慌てて彼女を引き離す。

「お、落ち着いてください! こんなことがバレたら、私はハルク男爵からどのような目に遭わされるか……! 私はただの平民ですから」

「タカシさん……」

 サリエは潤んだ瞳で俺を見つめている。
 俺は彼女を抱きしめたい衝動に駆られた。
 だが、治療魔法使いとしての理性がそれを押しとどめる。

「……分かりました。身分が問題だというのであれば……やりようはいくらでもあります」

「え……? サリエお嬢様、何を言って……?」

 俺は嫌な予感を覚えた。
 サリエの目が怪しく光ったように見えたからだ。

「タカシさん……。私、頑張ります……!」

 サリエは何やら決意を固めたようだ。
 一体、何を頑張るつもりなんだ……?

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