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僕の心臓が動いていることと、心があついこと

月影そら

いきなり話しかける女子怖い

昇降口で、僕は三人組の何処のクラスかも分からない女子に声をかけられた。
「君、C組の神崎君でしょ」
「あ、はい」
「『はい』だってー。可愛い」
[やめてくれ]
「神崎君はもう帰るの?」
[見れば分かるだろ?]
「ねえ、それなら、うちらと一緒にカラオケでも行かない?」
 僕はカラオケなんて行ったことない。音楽は嫌いではないし、いろんなものを聴くけど。
「ねえ、行こうよ」
 次々に話かけてくる。僕は掌に汗をかき始めた。
「駅近くに安いとこ知っているの。割引券もあるよ」
[そういう問題ではない]
 三人のうちの一人が、僕の腕に自分の腕を絡めてくる。すぐに振りほどきたいのに、それもできない。
「黙ってないで、何か言ってよー」
[後藤、助けてくれ]
 後藤がここにいたら助けてくれる気がした。でも、今、後藤はここにはいない。
「カラオケが嫌なら、他のものでもいいよ」
[そういう問題ではない]
「神崎君、待たせてごめんね」
 その声に僕は反応して振り向くと、水瀬さくらがいた。珍しく一人だった。
「何、なんでさくらがいるの?」
 水瀬とこの三人は知り合いらしい。
「うん、神崎君に待ってもらっていたの」
「え?二人はそういう関係?」
「ううん、違うよ。でも、先生に文化祭で使うものを試しに買ってくるの頼まれているの」
「文化祭委員なの」
「うん。私と奈子はね。でも、もしかしたら、荷物が多いかもしれないから、荷物持ちで神崎君もついて来てくれることになったの」
「そっか、それなら仕方がないか」
「神崎君、またね」
「今度は絶対にカラオケに行こう」
「楽しみにしてるよ」
 三人は口々に言うと、思ったよりあっさり行ってしまった。
 僕はため息を大きく吐いて、肩をガクッと落とした。
「大丈夫?」
 挨拶以外でほとんど話したことない水瀬と、今日はよく話をする。
「ごめん。ありがとう」
「行こうか」
 このまま水瀬と学校を出た方がいいことは、僕にも分かった。あの三人は怖すぎる。
 学校の外に出ると、水瀬が口を開いた。
「あの三人、悪い子じゃないよ。楽しい三人なんだけど、強引なところがあるから。でも、ちゃんと話せば大丈夫だから、また誘われて嫌だったら断ればいいよ。根に持つタイプでもないしね」
「うん。頑張ってみる」
 僕にも非があるわけだ。いつまでもこんなじゃ、何もできない…。
「じゃあ、私こっちだから。奈子が待っているし」
 水瀬は駅と違う道を行こうとした。
「もしかして、本当に先生に頼まれているの?」
「うん、実はそうなの。私忘れ物して、一回取りに戻ったから、奈子には先に行ってもらったの。じゃあね」
 水瀬さくらの背中を僕は見送る。
「あ、あの。今日は本当にありがとう」
 僕は少し大きめの声で言った。水瀬さくらは、にっこり笑って手を振ってくれた。
 家までの道のり、僕は改めて気を引き締めていこうと思った。鍛錬も、その先の戦いもできるなら避けたいけれど、どうせ避けることもできない。それなら、自分にできることをやるしかない。

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