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僕の心臓が動いていることと、心があついこと

月影そら

ずいぶん久しぶりの美容院、僕はかなり場違いだ!

掃除がすっかり終わると、僕は格闘技関係を調べた。空手、剣道、拳法、ボクシング、キックボクシング、フェンシングに居合い…。調べてみると、様々なものがある。そのすべてをやるのには無理があるが、家から通えそうな場所にあるものを習ってみようかと思った。できるなら複数のものをやりたいと思った。
 そのうち、剣道とキックボクシングが割と近くで、合気道の練習日とも重ならないようだった。キックボクシングは月の会費を払ったら、好きなときに行くことができるようだった。剣道は僕の家から歩いても行ける、市民センターで行っている。柔道もあったが、これは後藤に一言声をかけようかと思った。
 そうこうしているうちに、昼近くなっていた。僕は自分が凄く空腹感があることに気が付いた。
「そう言えば、さっきは何も食べなかった」
 僕は鍛錬の後何も食べないで過ごしていた。それに気が付くと、その空腹感に倒れてしまいそうだった。
 僕は二種類のパスタを作って、それとお菓子や果物を大量に食べて、お腹を満たした。
 僕は、後藤が教えてくれた美容院の前に、本屋へ行きたかったから、早めに家を出た。ちょうど美容院がある駅には、大きなショッピングセンターがあって、そこには結構大きな本屋がある。自分には場違いな気がする場所だったが、その本屋にだけは昔からよく行っていた。
 僕は、先に後藤に教えてもらった美容院の場所を調べた。あっさり見つかったその場所は、僕にはかなり敷居が高い場所だった。後藤が、
「ちぇっ、俺も一緒に行きたかったけどな。でも、その日部活だから無理だな」
と、残念そうに言っていたのを思い出した。後藤から紹介されて、後藤が予約していなかったら、僕は行っていなかったかもしれない。でも、行かないときの後藤の反応が怖いから、行かない訳にはいかなかった。
 僕は重い気持ちで本屋に向かった。今日はフェンシングの本が無いか調べたかったのだ。ラウラスは剣だ。刀とは違う。剣道なら刀でもいいのかもしれない?習ったら役には立つだろうけど、フェンシングの方が近いものがあるような気がしたのだ。だけど、近くにフェンシングを習える場所はなかったのだ。
 本を見て覚えるだけでも、少しは役に立つような気がしたから、僕は本を探すことにしたのだ。ネットで調べた感じでは、フェンシングは主に剣で突いて戦うスポーツらしい。
 いろんな本を少しずつ手に取ってみるが、結局僕はフェンシングと剣道の本を購入した。
 気が重くて仕方がないが、時間はもうすぐ三時になるところだった。仕方がなく、僕はショッピングモールを出て美容院へ向かった。そもそも、僕なんて美容院へ行く必要もない気がする。その辺の床屋で十分なんだ。年齢のいった、あまり身なりに気を使わないようなおじさん達が行くような床屋が、僕には相応しい。
 
美容院の前に来て、僕は入るのを躊躇う。自分で言うのもなんだが、もっさりした感じの僕が美容院へいくこと自体、やはり間違っている。
 僕が美容院の前で立ち尽くしていると、中から人が出てきた。カットを終えたお客とそれを見送りに来た店の人だ。
 女性の客は、僕の横を通り過ぎる際にチラリと僕の方を見た。分かっている、なんでこんな奴がここにいるのかってことだ。しかし、男の店員の方は気さくに僕に話しかけてきた。
「こんにちは、もしかして…悟君のお友達?」
[えっ、何で分かる?]
「今日三時から予約をされている神崎様ではないですか?」
 僕は腹を決めた。背中から冷や汗が流れてくるようだった。
「は、はい。実はそうです…」
「あ、やっぱり。では中へどうぞ」
「では、中へどうぞ」
「は、はい」
 僕は掌に汗をかいていた。
「こちらにご記入をお願いします」
 店員は用紙とペンを持ってくると、僕に渡した。それは、名前や住所に年齢などを書くものだった。あと、どういった髪型にしたいかも書く欄があった。僕は初めから決めていた通り短めでお願いしますと書いた。
 店員はそれを受け取ると、いくつかの質問を僕にしてから僕を席へ案内した。どうやらその店員も美容師で、僕を担当するらしい。おそらくは後藤の担当もしているのだろう。
「確か、悟君とは学校の友達だったよね」
「そうです」
初対面なのに、いきなりフレンドリーに話しかけてくる。そういうのに僕は慣れない。
「悟君楽しそうに神崎君のこと話していたよ」
「あ、あの…何で僕を見てすぐに分かったんですか?」
「ああ、悟君が神崎君の事、説明しておいてくれたから。なかなか店に入って来れないかもしれないから、時間になったら見てくれないかって」
[悟はそんなことまで…]
「かなり長い間ちゃんと切ってなかったかな?」
「あ、はい」
 美容師は僕の長い前髪を少しめくってみる。そしてアッという顔をした。
「実は結構可愛い顔をしているじゃん。これは、このままでは勿体ないかもしれない」
「…いやー…」
 僕は苦笑いする。
「髪の毛がすっきりしたら、背も結構あるし、もてまくるんじゃないかな」
 僕は再び苦笑する。すると、急に美容師が笑い出した。
「いやーごめん。あまりに悟君とタイプが違うからさ。でも真面目に褒めているから、もう少し自信を持った方がいいよ。でも、僕が今日その自信がつくような外見にしてあげよう」
「はあ…」
[なんだかちょっと迷惑]
 美容師はそれから、なんだかとても楽しそうに僕の髪の毛を切り出した。話しかけてもきたけど、ほんの他愛もない話ばかりしてきた。

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