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僕の心臓が動いていることと、心があついこと

月影そら

鍛錬の怪物? こいつらはいったい??

僕は少し迷ったが、次の行動に移ることにした。試してみたいこともあったのだ。
「霊長類五匹、蛾三匹出てこい」
 僕がそう叫ぶと、その通りの数と怪物が姿を現した。ここは僕の鍛錬の場。この中に入った最初は自由が利かないけど、その後鍛錬をする自由はあるんだ。
 霊長類の怪物と蛾が、一斉に僕に向かってくる。だけど、僕はじっと待っていることなんてもちろんしない。僕の方からも突っ込んでいき、寸前で身を翻して、他の怪物を切りつける。その勢いのまま、振り向きざまに、最初に向かっていった怪物も切りつけた。
 戦えば戦うほどに、腕が上がっていくのが分かった。戦う上での勘みたいなものもついてきている。
 僕は、動きを止めないで飛び上がり、蛾の怪物を上から切りつける。その僕の下では、霊長類の怪物が待ち構えている。僕はそいつを足で蹴り飛ばす。すぐにそのままもう一度飛び上がって、下から蛾を切り裂き、他の飛び上がってきた霊長類の怪物も切りつける。
 蛾のストローの攻撃を横跳びに避けて、背後に飛び掛かってきた霊長類の怪物を、僕の肩から後ろにラウラスを突き上げて刺しぬく。それもすぐに抜いて、クルリと一回りしながら、蛾の翅の下の方を切り落とした。
 バランスを失いながらも、蛾はストローで攻撃をしてくる。そのストローを切り落とし、僕は蛾の身体をラウラスで貫く。
 流石に息が上がってくるが、残りはあと霊長類一匹だった。僕が強くなる為に、経験を増やす為に呼ばれて、そして殺されていく怪物たち…。
 初めは、僕の意志などなく、僕は怪物と闘わなくてはならなかった。勝手にそう仕組まれていた。戦わなくては、僕は怪物に体を引き裂かれていく。だから、戦って怪物を消滅させることを正当化できた。でも? 今はどうだろう? 僕は自分の意志で怪物を登場させている。
 最後の霊長類の怪物は一匹になると、僕を襲ってくるのに躊躇いを明らかに持っていた。攻撃性が強く、前に逃がそうとしたときは逃げなかったのに、どうしてなのか?
 前よりも、僕との力の差があることを、本能的に感じ取っているのだろうか? そして、攻撃性で支配されているような怪物が、恐怖でも覚えたのだろうか?
「もういい、僕を戻してくれ」
 僕はそう叫んだが、僕の部屋には戻れなかった。怪物を全部消滅させない限り、戻れないのかもしれない…?
「おまえ、戦いたくないなら戦わなくていい。逃げろ」
 僕は、霊長類の怪物にそう言った。
「グウウウ」
 怪物は唸り声を上げる。
[こいつ、さっき蹴り飛ばした奴だ]
 よく見ると、僕の靴の跡が怪物の頭部についていた。緑色の体液もうっすら滲んでいる。
「もう僕は、今は戦いたくないんだ」
 怪物は動かない。でも、襲ってくる動きも見せない。
「じゃあ、好きにしろ」
 僕は怪物に背を向けた。だが、意識はそこにもおきながら、初めの戦いで完全に消滅させていなかった蛾の様子を見に行った。蛾はまだ消滅していなかったのだ。
 蛾は弱く翅を動かしている。その様子はあまりに哀れだった。僕はどうしていいのか分からなくて、ジッと見ていた。
「…一思いに消滅させた方がいいのか…」
 僕が呟くと、霊長類の怪物の方が動き出した。殺気は感じられなかったが、僕の方へゆっくりと近づいてきたのだ。
 霊長類の怪物は、僕の隣までくると、蛾を少しの間見つめていた。更に蛾に近づくと、蛾の頭部を触ろうとした。その瞬間、蛾は霊長類の怪物に襲い掛かった。
 蛾は口吻で、霊長類の怪物に食らいついたのだ。霊長類の怪物の叫び声が辺りに響いた。僕は瞬時に体が動いて、蛾を横に真っ二つに切り裂いた。
 蛾はすぐに消滅した。口吻からも、切られた箇所からも、緑色の体液を流しながら。そして、霊長類の怪物は、蛾の後を追うかのように消滅した。
 次の瞬間に、僕は自分の部屋に戻っていた。
 部屋に戻ってくると、ラウラスはいつも僕の手から消えている。怪物の体液で汚れた僕の服も身体も全く汚れていない。
 僕はその場にしゃがみ込んだ。少しの間そうしていたが、自分の汗で濡れている服の気持ち悪さに、風呂場へ行ってシャワーを浴びた。
 風呂から出ると、僕は家中の掃除をした。家中の窓を開け放つと、家の中を風が抜けていって、不純なものが出ていくような気がした。
 掃除機をかけていると、ミャアが掃除機にじゃれついてきた。最初の頃は怖がっていたが、今ではじゃれついてくるようになっていた。そんなミャアの姿には少し和まされた。
[気持ちを切り替えなきゃ]

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