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僕の心臓が動いていることと、心があついこと

月影そら

お好み焼き

「分かったよ。じゃあな」
 後藤は電話を切った。
「大丈夫?」
 考えてみたら、昨日は僕の家だったし、二日続けてな訳だ。
「いいんだよ。まあ、こんなもんだ」
 後藤はワハハと笑った。小池は何も気にしてない風で、後藤と一緒に笑った。
 僕らは、一駅向こうのお好み焼き屋へ行った。後藤の三つ年上の大学生の兄さんが働いていて、食べ放題の割引券を持っているとのことだった。お好み焼きなんて、一人では食べなかったから、随分と久しぶりだった。
 お好み焼き屋に着いて席に通されると、今夜もバイトをしているらしい後藤の兄さんがやってきた。
「悟、また来たのか」
「へへ、いいだろ」
 後藤よりは少し背が低いかもしれないが、僕よりは高く、ガッチリしているけど、全体的にバランスのとれた体系をしている人だった。後藤とは違って、女にもモテそうな感じの人だった。
「こっちの子は初めて見る顔だな」
「そうだ、最近友達になった」
「こいつ誰にでも慣れ慣れしいから、嫌だったらはっきり言っていいよ」
 後藤の兄さんは、そう言って後藤の頭をガシガシ撫でまわした。兄弟仲は良好らしい。
「そんなことないよな」
 後藤は僕の方を見て言った。
「大丈夫です。友達になれて楽しいです」
「そっか、じゃあ、みんなで仲良く食べていってよ」
 後藤の兄さんはそう言ってから、僕たちの注文を受けて奥へ下がっていった。
 やってきたお好み焼きは、後藤が焼いてくれた。本当によく来ているのだろう、随分慣れた手つきだった。小池もそれに倣っていろいろ手伝っていた。
昨日、僕が教えながら唐揚げを作ったから、今度は俺の出番だと後藤は張り切っているようだった。
 少しお腹が満たされてくると、小池がさっきの続きを話しだした。
「神崎君、髪の毛を切ってすっきりしようよ。きっと気持ちも変わるよ。後藤君や僕もいるし、もう独りじゃないでしょ」
「もう、その話はいいだろ?翔の好きにすればいいと思うけどな」
「それはそうなんだけど、僕は神崎君にも学校生活を楽しんでもらいたいんだ」
「小池の気持ちはわかるよ。でも、少しお節介じゃないか?」
 なんだか少し気まずい雰囲気になってきているようだった。
「分かったよ。この週末にでも切ってくるよ」
 その場を収めるためには、そう言うしかないと思った。でも僕がそう言うと、小池が勝ち誇った様な顔をした。
「別に小池君にしつこく言われたからってわけじゃ無くて、最近、身体を動かすことが多くなってきたから…それで、邪魔になってきていたんだよね」
「そっか、おまえがそう言うなら、それでいいと思う」
「みんな、何処で髪の毛切ってる?」
「俺はいつも行っている美容院があるけど…よし、そこを特別に教えてやるよ。腕は確かだ」
[えっ、ただのスポーツ刈りにしか見えないのに。本当に腕は確かか怪しいものだ]
 だけど、正直何処へ行っていいのかさっぱりだったから、後藤頼みにするしかなかった。
「分かった、それじゃあ、そこに試しに行ってみるよ」
「雰囲気がだいぶ変わるだろうね」
 小池が嬉しそうに言った。小池に悪気がないのは分かっている。でも、思ったよりも面倒臭い奴かもしれないと僕は内心思った。
「それにしても、二人とも本当によく食べるね」
「ワハハ、そうだぞ!小池も見習え」
 小池はもうとっくに箸を止めていた。まあ、いくら部活をやった後だとしても、小池の体格じゃあ、無理もない。
「後藤君は分かるけど、神崎君がこんなに食べるなんて思わなかったよ」
 まだ食べ続ける僕を見て、小池は驚きの声を漏らす。
「うーん、それが最近前よりもずっとお腹が空いて仕方がないんだ」
「急に成長期になったんだ、翔平は。すごいだろ」
「僕らまだ、皆、成長期でしょ」
 僕の言葉に小池は頷く。
「確かにその通りだ」
 後藤はまた笑いだす。本当によく笑う奴だ。でも、悪い気はまるでしなかった。

 

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