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僕の心臓が動いていることと、心があついこと

月影そら

ある程度なら僕の自由が利く?

 僕は五匹目の怪物の首をはね、僕の背中を引っ掻いてきた奴に一太刀を浴びせる。そのまま六匹目の身体を貫きながら、襲い掛かってきた奴を蹴り飛ばす。七匹目の身体を剣で貫いて、抜きざまに八匹目を深く切りつけた。
 九匹目は、僕の左太ももを引っ掻いたやつだ。そいつを深く切りつけながら、十匹目に軽く蹴りを入れて、倒れた十匹目を足で踏みつけた。そいつを剣で貫こうとしたが、怪物は、怯えるような眼をしていた。僕は脚をどかして、怪物を放した。
「早くどっかへ行け」
 僕はそう強く言うと、怪物に背を向けて、何処へ行くわけでもないけど、歩き出した。だが、怪物は、僕の背中に飛び乗って来て、左肩に思いっきり噛みついた。
 僕は後ろ手に怪物を捕まえて、背中から引きはがして投げつけた。怪物の口の周りは、赤く染まっていて、下には赤い雫が垂れた。
 今までも噛まれてきたけど、こんな風にはっきり見るのは初めてだった。怪物は、自分の口の周りを舐め回した。僕はその仕草にゾクリとした。
「バカ野郎―! 」
 僕は剣で怪物の身体を貫いた。
「もう嫌だ。元に戻してくれ」
 僕がそう叫ぶと、その次の瞬間には、僕は自分の部屋にいた。
[戻れた…]
「もしかして、僕の思い通りに動く? 」
 僕はそう呟いてハッとした。僅かではあるが、テレビの音が聞こえてきていることに気が付いたのだ。
[そうだ…後藤がいたんだった]
 僕はなんとなく、自分の状態を見回した。汗をかいているのと、髪が滅茶苦茶になっている以外は、やはり衣服の破れた部分も元通りになっていた。
 僕は、汗が引くのを少しまって、髪の毛も少し撫でて元通りにすると、後藤がテレビを見ているリビングへ行った。

 後藤は、テーブルからテレビの前のソファに移っていた。そして、テレビを観て馬鹿笑いをしていた。僕はそれを見ると、少しホッとした。
「よう、着替えてきたのか」
「ああ、遅くなってごめん」
「えっ?全然大した時間経ってないけど」
「あ、そうだね」
 僕は少し焦りながら、テーブルの上の皿を片付け始めた。すると、すぐに後藤もそれに倣った。
「いいよ、別に。テレビ観てなよ」
「俺はそこまで図々しくできてないよ」
 後藤はそう言ってニイッと笑った。
「じゃあ、僕が片付けて行くから洗ってもらえる? 」
「よし、任せろ。茶碗洗いは時々家でもやらされているからな」
 後藤は、妙に楽しそうに皿を洗い始めた。少し力を入れたら、皿が割れてしまいそうなほど逞しい手をしている。
「後藤…じゃなくて、悟はいつから柔道やっているの? 」
「ああ、俺は小学一年の頃からだな」
「じゃあ、僕と一緒だ」
「えっ? おまえも柔道やっているのか? 」
「あ、違う違う。僕、実は合気道をずっとやっているんだ」
「へえ~なんか意外だな。でも、合気道なんてカッコいいじゃん」
「でも…合気道だけじゃダメだな…」
「なんで?他の武道でもやりたいのか? 」
「うん、ちょっと考えているんだ」
「合気道も受け身とかあるんだろ? 」
「あるよ。柔道と似ているところもある」
「体育で柔道やったことあるだろ?そのとき、柔道はどうだった? 」
「結構楽しかった」
[最も、目立たないようにするのに必死だったけど]
「なら、柔道部に一度来てみろよ!体験だけでいいからさ」
 後藤は、柔道で中学の時にいい成績を収めたらしく、僕と同じ高校に推薦で入ったらしい。学力は、あまりついていってないから大変だと、前に大声で誰かと話していた。
「そうだね。一度行ってみるよ」
「じゃあ、明日来いよ。先輩や先生に話しておいてやるから」
[強引だな…]
 だけど僕は少しも嫌な気持ちにはならない。
後藤は何故か楽しそうにしている。後藤と一緒に柔道部なんて行ったら目立ちそうだけど、僕の今の状況では、そんなことも言っていられない気がしている。
「わかった。明日行ってみるよ」
「よーし、こいこい。明日は道着を持ってこいよ」
 食べたものの片づけがすっかり終わると、後藤は帰っていった。
「お腹が減った」
 僕はそう呟いてから、お茶漬けを二杯とカップ麺の焼きそばを食べた。それでも空腹は静まらなかったので、バナナとヨーグルトを食べてから、風呂に入った。
 自分の部屋に入ると、ミャアは既に所定の位置で眠っている。
「猫は夜行性のはずなのに、ミャアは早寝だな」
 僕もミャアにつづくことにした。明日の朝の鍛錬は七時だった。僕は目覚ましを六時にセットした。
 目を閉じると考えたいことが沢山あったはずなのに、物凄い勢いで睡魔が襲ってきた。僕はそれに抗うことができずに、眠りの深部へと入っていった。

         三章
 翌日、僕は目覚ましが鳴る直前に目が覚めた。すぐに鳴り出した目覚ましを止めると、僕はジャージに着替えて外へ出た。
[あれ?こんなに早く走れたっけ? ]
 今までよりも身体が軽く感じた。少し早く走っても、そんなに息も切れなかった。ジョギングなんて、学校の体育で無理やり走らされたのくらいだった。だから、すぐに辛くなるかと思ったが、むしろ気持ち良かった。一キロくらい走れたらいい方だと思っていたけど、僕は結構長い距離を走ることができた。
 家に着くと、僕はそのまま今度は筋トレを始めた。腕立て伏せくらいは前からできたけど、三回くらいが限度だった。でも、三十回も普通にできた。その他、僕が知っている筋トレをやってから、僕は空腹に耐えきれずに朝食を食べた。今までは、朝食は面倒臭くて抜かすこともよくあったが、それに耐えられそうになかった。
 朝食を食べ終わって時間を確認すると、あと少しで七時になるところだった。
 僕は慌てて靴を履いた。初日は靴も履けないでひどい思いをしたから、それだけは絶対に嫌だった。
 七時になると、またあの草原に僕はいた。既に霊長類の怪物はいた。今回は結構多かった。十五匹くらいか?
 僕はすぐに剣を出すと、切りかかっていって、難なく怪物を倒した。もう霊長類の怪物に手こずることはないかもしれない…。
「元の部屋に戻れ」
 僕は怪物が全て消滅すると、すぐにそう叫んだ。すると僕はすぐに自分の家の玄関にいた。さっき靴を履いた場所だ。
「やっぱりある程度は、僕の思い通りに行くんだ」
 僕はその事実に少し嬉しくなった。全て、あの白い奴にコントロールされていることが、癪に思えていたから。コントロールされていることは、されているのだろうけど、それでも自由が利くことができたし、それが分かったから。
 空腹をまだまだ抱えていた僕は、冷凍食品のパスタ二つとアサリ飯を、レンジで温めて食べた。汗を沢山かいていて気持ち悪かったので、軽くシャワーを浴びて学校へと向かった。

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