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僕の心臓が動いていることと、心があついこと

月影そら

剣が出てきた! 

辺りにはもうほとんど生徒がいなかった。僕は、少し緊張をしていた。だけど向かっている道すがらの辺りの状況も、養護教諭の先生の態度も、何も変わっていなかった。
さっきのことは全て夢だったのだろうか?そもそもあんなことが現実に起こるなんておかしい話だ。なんて言っていたっけ?僕は剣を作り出すことができるだっけか?
 僕はふと立ち止まった。右手の平を少し眺めて見る。だいたい、剣を出すってどうやって?念じて見たりでもするのか?僕は少し自虐的な笑みを浮かべてから、掌に剣を念じてみた。
すると、次の瞬間に、刃の部分が一メートルくらいはある剣が、僕の手には握られていた。
刃の中央には、二本の蒼い線が柄の部分から先の方まで伸びている。柄の部分は黒だが、銀色で何かの装飾が施されている。そして、不思議と僕の手にとても馴染んだ。
剣自体が美しかったのと、それが今僕の目の前に現れたことで、僕はボーっと剣を眺めていた。でも少しすると、誰かの足音が聞こえてきた。僕が慌てると、剣はスッと消えた。
「神崎」
 すぐに、僕を呼ぶ声が背後から聞こえてきた。担任の鈴木先生だった。三十代で、最近子供が生まれたとか。背は僕くらいの、百七十センチにギリギリ届かないくらいで、細身の頼りない感じの先生だ。
 僕は、呼ばれたのでそのまま待った。鈴木先生は、すぐに追いついてきた。
「目が覚めたんだな。昨日の夜はほとんど寝ていないって、さっき平木先生から聞いた。もう、こういうことはないようにしなさい」
「はい、すみませんでした」
僕は軽く頭を下げて言った。
「これは神崎の荷物だ」
 鈴木先生はそう言うと、右手に持っていた僕の鞄を手渡してきた。
「もう今日は、このまま真っ直ぐに帰りなさい」
「はい」
 僕は、教室をこの目で確かめたくて仕方がなかった。剣が出てきたのだから、あれは夢ではなかったことが濃厚になっていた。でも、自分の中を整理する為にも、一度教室も見ておきたかったのだ。
だけど、鈴木先生はそれを許してくれそうになかった。一緒に並んで歩きだしたのだ。それ以上何を話すでもなく、昇降口まで来て、僕は先生に挨拶をして帰るしかなかった。
 外へ出て見て、少し校舎から離れたところで、後ろを振り返ってみた。校舎は、いつもと何も変わらずに佇んでいた。それを見て、僕は少しだけホッとした。
 
駅から電車に乗り、三駅目で僕は電車を降りた。そこから歩いて、五分ほどで自宅のマンションに着くが、冷蔵庫にあまり何もないことを思い出して、スーパーへ寄った。
帰ってから何か作ろうかと思ったけど、なんだか気力が湧かなかったから、適当な弁当とカップラーメンをカゴに入れた。そうして僕は、自宅の7階のマンションの部屋へ帰りついた。
マンションの部屋に入って、エアコンを付けて、荷物を置いた途端に、少し変な感覚が身体に走った。次の瞬間に、僕がいるのは自宅のマンションではなかった。僕は茫然として、辺りを見渡した。何が起きたのか、すぐには呑み込めなかった。
 僕は、見渡す限りの草原にいた。四方のずっと向こうまで、草原が続いていた。風が吹き抜けていて、さっきまで熱い中にいた僕でも、すぐに半袖では少しだけ肌寒く感じた。だけど、こんなに広い草原が広がる景観は、爽快感を僕にもたらした。
 そこへ、後方からうなり声が聞こえた。僕は恐る恐る振り返る。そこには、僕の背丈の半分くらいの大きさのサルの様な、ゴリラの様な、とにかく霊長類と言えそうな怪物がいた。
明らかに僕に対して、威嚇をしているようだった。牙は長くて、目が赤く燃え上がっていた。毛は、全身逆立っているように見えた。

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