面倒くさがり屋の異世界転生

自由人

第97話 始まる冒険

 街から外に出ると見渡す限りの平原が広がっていた。遠くの方には森まであるようだ。押し寄せる大自然に不思議と笑みもこぼれる。

「よし、冒険の始まりだ!」

 高揚する気分を抑えもせず、意気揚々と街道を歩いて行くが、暫くすると先程の高揚が嘘かのように、意気消沈していた。

「冒険しようにもここが何処だかわからない……」

 当たり前のことではあるが、この世界で生きてきた記憶を失っているため、地理が全くわからないのだ。

「どうするべきか……そういえばお金もないし、異世界転生って憧れてたけど、実際経験すると初っ端から行き詰まるな」

 うんうん唸りながら考え込むこと数分……

「そうだ! そういえばステータスの確認をしていなかった。先ずはそれからか。えぇと、ステータス……」

 すると、面前にステータスボードが映し出された。



ケン・カトウ?
男性 8歳
種族:人間
職業:Fランク冒険者
状態:記憶喪失

Lv.1
HP:270
MP:520
筋力:150
耐久:120
魔力:270
精神:250
敏捷:500

スキル
【言語理解】【創造】【センス】
【隠蔽】【偽装】【千里眼】
【完全鑑定】【剣術適性】【魔法適性】
【体力増大】【魔力増大】【無限収納】
【無詠唱】【並列詠唱】
【胆力 Lv.3】【剣術 Lv.6】
【身体強化 Lv.6】【属性強化 Lv.6】
【完全探知 Lv.8】【生命隠蔽 Lv.8】
【状態異常無効】【魔力操作 Lv.EX】

魔法系統
【火魔法 Lv.5】【水魔法 Lv.6】
【雷魔法 Lv.5】【土魔法 Lv.5】
【風魔法 Lv.7】【光魔法 Lv.2】
【闇魔法 Lv.1】

加護
女神の寵愛
原初神の加護

称号
アキバの魔法使い
女神の伴侶
ゴロゴロの同志
舐めプの達人
逃走者
憤怒



『レベル1なのに、このステータスは何だ? 欠かさず鍛錬したって事なのか? それなら何で筋力と耐久が少ないんだ? 魔法系統の方が強い気がする。以前の俺は魔法使いを目指していたのか? 気持ちはわからんでもないが、出来ればバランスよく鍛えて欲しかった……』

 自分のステータスを眺めて、自問自答を繰り返してある程度の納得を得るが、問題があるとすればこれからだった。お金を稼がないと、宿にも泊まれないしご飯さえ食べられない。

「死活問題だ……」

 色々考えた挙句、お金を得る方法として、ギルドでのモンスター買取を選んだ。善は急げと早速行動に移す。

「確か、スキルに丁度いいのがあったな」

 そう思い、使ったスキルは【完全探知】と【千里眼】。2つを併用して使う事は誰に教わったでもなく、直感的に感じ取り使っただけだった。

 それによりゲームで言うような【マップ】に酷似した、あえて言うなら下位互換の仕上がりになった。

「これなら【マップ】を作った方が早いな。【千里眼】だと焦点を合わさないと見れないし、俯瞰したものが見たいから……てことで、【創造】……」

 【創造】を使おうとしたら、頭の中に使い方が流れ込んできて、何が必要かも把握出来た。

 イメージするのはゲームにある様なマップ。【鷹の目】と【千里眼】を元にして詳細機能搭載、任意で切り替え可能、オプションで【完全鑑定】付与。

 良いものが出来上がったと思った瞬間、身体から力が抜け目眩を引き起こして、その場で仰向けに倒れた。

「魔力が枯渇したのか? ……『ステータス』」

 映し出されたステータスに驚愕する。HPが250も減っていたのだ。当然、MPは0だ。

「魔力だけじゃ足りなくて、生命力も使われたってことか……250も消費されるなんて【創造】は思ったよりもヤバいスキルだな。迂闊に創って死んだらとんだ笑いものだ」

 今回は自分でマップ機能に色々と高望みしたから、それだけの消費となった事を本人は知らない。

「気怠いし、暫く横になっておくか」

 広がる草原の上で気持ちよさそうに、風を浴びる一人の少年。傍から見れば絵になる様だが、実際は疲れ果ててゴロゴロしているだけだった。

 称号の恩恵でみるみるうちに回復していく。気怠さが抜けてきたところで、次の行動に出た。

「もう少しすれば完全回復するな。称号様様だな。取り敢えず創ったものを使ってみるか。【マップ】」

 すると、視界の端に周辺の地図が表示される。

「こりゃいいな。迷子にならなくて済む。さて、ギルドに売る為のモンスター表示っと」

 マップ上には赤いマーカーで、▼が表示されていった。

「やっぱり草原地帯にはあまりいないか。見晴らしがいいから仕方ないけど。近くだとやっぱり森になるな……よし、森に行って狩りをしよう」

 動けるほどに気力が回復すると、森の方へと方向転換し歩いて行く。

 暫く歩き続けると森の端までやって来た。

「よし、とりあえず弱いモンスターから戦ってみよう。さすがにスライムはいないか……仕方ないからゴブリンでも倒して戦い方を学ぶとするか」

 マップ上に映るマーカーに注視すると、ゴブリンという名称が出た。どうやら、獲物を探して彷徨っているようだ。

 マーカーを頼りにゴブリンのいる方へと進み出す。視認できるくらいまで近づくと、獲物を探してキョロキョロしていた。武器は錆びれた剣を持っており、血糊がべっとり付いてる。

『どうやって倒そうか……武器がないから魔法で倒すしかないけど、森にいるから火はやめておいた方が良さそうだな。そうなると……風でやるか』

 どの属性を使うか決めたところでイメージする。そんなことをしているとゴブリンがこちらに気付く。

「ギャギャッ!」

 こちらを弱いと思っているのだろう。明らかに下卑た笑いを浮かべながら、剣を掲げて威嚇している。

「《ウインドカッター》」

 三日月状の風の刃がゴブリンを襲い、通過した刃はそのままゴブリンの後ろの木まで到達し、綺麗な断面を残して切り倒していた。

(バキバキバキッ……ドオォォン……)

「グ……ギャ?……」

 その言葉を最後に、ゴブリンの頭と体がサヨナラした。

「もうちょっと威力を抑えないと、周りの木々に迷惑がかかるな」

 初戦闘を難なく終わらせ、とりあえずは武器がなくとも戦えることがわかったので、次のモンスターを探しに歩き出した。

 それから、モンスターを見つけては魔法の練習台になってもらい、丁度いい手加減というものを把握していった。

 かれこれ2時間はモンスターを倒しただろうか。魔法を使うのが楽しくて時間が経つのも忘れていたようだ。

 しかしながら、そろそろ街へ戻らないと、日が暮れる前に到着できそうにない。何の準備もなく野宿するのは嫌なので、そそくさと帰ることにした。

 街の入口に到着すると、ギルドカードを提示して街中へと入る。ギルドが何時まで開いているのかわからないが、早めに向かうことにした。

 ギルドに到着しても、どこを尋ねればいいのかわからなかったので、結局、2階受付の登録時に担当してくれた人に話しかけた。もちろん、踏み台を持ってきて。

「こんにちは」

「はい、こんにちは。どうされましたか?」

「素材の買取って何処でやってるんですか?」

「それは1階の奥ですね。本来は1階の受付カウンターにて対応しますが、また同じ事を聞くのも面倒でしょ? 今回は私が案内しますね」

「ありがとうございます」

「では、着いてきて下さい」

 カウンターの横に備え付けられていたドアから、受付嬢が出てきて案内をしてくれた。

「今日の冒険はどうだった? 買取依頼って事は、モンスターでも倒して素材を剥ぎ取ったのかな? ここら辺だと、ホーンラビットね」

 いきなりフランクに話しかけられて困惑するが、とりあえず返答しておく。

「そんなところですね。他にもありますけど」

「そっか。怪我とかはしてなさそうだね。それよりも、手ぶらに見えるんだけど、素材はちゃんと持ってるの?」

「はい、落とさないように持ってます」

「ほら、着いたわ。ここよ」

 ギルドの奥に繋がる通路を歩いていたら、一際大きな広場に出て大人たちが解体作業を進めているのが見えた。

「うわぁぁ……」

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