面倒くさがり屋の異世界転生
第12話 教会と洗礼の儀式①
教会に着くまでは暇なので母さんと話そうかとも思ったんだが、敷地から外に出たのは初めてのことだったから、周りの景色が新鮮でついキョロキョロとしてしまう。
「そういえばケビンが外へ出るのは初めてでしたね」
「落ち着きがなくてすみません」
俺も母さんも既に他所行きの喋り方に変更している。家の中ではない以上、しっかりしないとな。
「いいのよ。ケビンの年齢ならヤンチャをするのがお仕事みたいなものですし、街の景色を楽しみなさい。お父さんのお仕事の一端が垣間見れますよ」
「父上の仕事ですか?」
「そうよ。お父さんは領民が平和で楽しく暮らせるように、毎日頑張るのがお仕事なのよ」
「領主というのも大変なんですね」
「そうね。あなたは三男だから家督を次ぐ必要はないけれども、知っていて損はないわ。それにアインやカインが困っていたら手伝ってあげてちょうだいね」
アインというのは俺の6つ歳の離れた1番上の兄で、カインは5つ歳の離れた2番目の兄だ。あと4つ歳の離れたシーラという姉がいるのだが、実はこの姉に1番手を焼いている。
その理由というのが極度のブラコンで、俺にベッタリなのだ。そのくせ兄たちには普通に接している。
本人曰く、1番下だった時からずっと弟か妹が欲しかったそうだ。そんな時に俺が誕生したわけで母さん並みの愛情を注いでくる。
その様子に2人の兄は微笑ましいものでも見るかのような目付きでいるため、俺を助けてくれたりなどはしない。今は3人とも王都の学校に通っているから長期休暇がなければ会うことはない。
「領主を継ぐのはやはりアイン兄さんなのですか?」
「そうね。カインでも別に構わないのだけれども、多分アインが継ぐでしょうね。カインは表立って動くのは好きじゃないから、アインの補佐に徹すると思うわ。それにアインは弟思いだから、そんなカインの気持ちを知って自分が継ごうとしているのよ。結局のところ2人とも優秀だから、どちらが領主になってもいいのだけれど、お父さんとも話し合って本人たちの意志に任せることにしているの」
「そうなんですね。では、私は2人の兄が困っていたら全力でサポートできるように成長したいと思います」
「えぇ、お願いするわね、ケビン」
話の区切りがついたところで、アレスから声が掛かる。
「奥様、教会に到着しました」
なんというタイミングだ。やはり、できる男だな。
それから馬車を降り教会内へ入ると、祭服を着た男性がこちらへやってきた。
「お待ちしておりました。カロトバウン夫人」
「今日はよろしくお願いするわ、ガイル司教。この子が3歳になったので洗礼の儀式をして頂きたいの。さぁ、自己紹介しなさい」
そう言って母さんは俺の背中をそっと押して前へ出す。
「ケビン・カロトバウンです。本日は洗礼の儀式のためお伺いさせていただきました。お忙しいとは思いますがよろしくお願いします」
「承りました。それにしても聡明なお子さんでいらっしゃる。将来が楽しみですな」
「そうなんですの。私も時々、実年齢を疑うくらいですのよ」
「では、こちらへ」
誘導された先には神像が立っていた。その前には小さな魔法陣があり、どうやらそこに入るようだ。
「この円の上で膝をつきお祈りをして下さい。祈りが神に届けば体が光に包まれるので、その時は慌てずに光が収まるまで祈り続けてください」
意外とすぐに済みそうな儀式だな。とりあえず円の上に跪き祈りを始めてみた。
『ソフィ、無事に3歳になったよ。この世界に生まれさせてくれてありがとう。君にまだ会えないのが残念だけど、これからもこの世界で精一杯生きていくよ』
ケビンが祈りの最中に体が淡い光に包まれ始めたと思ったら、神像からも光が発してそれを見た司教たちは目を見開いていたのだった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
ふと空気が変わった様な気がしたのでこっそり目を開けてみると、目の前には懐かしの万能空間が広がっていた。
「久しぶりね、健……」
「……ソフィ?」
「そうよ。他の誰に見えるの?」
「えっ? でも、さっきまで教会にいたはずなんだけど……」
「そうね。私もいきなり健が現れてビックリよ」
「それにしては落ち着いているような気がするんだけど」
「何故健がいきなり現れたのかだいたい予想はついているの。それよりいつまでお祈りの格好をしているの? 新鮮だから見物ではあるんだけど」
そう言われて俺は跪いたままだと気づく。頭が混乱しているせいだな。立ち上がってソフィに近づくと、今の姿のせいか見上げる形になってしまった。
「ソフィを見上げるなんて新鮮だな」
「そうね。以前は私の方が少し身長が低かったから、見上げていたのは私の方だものね」
ソフィが膝をつくとケビンを抱き寄せる。
「会いたかった……寂しかったんだからね」
「俺もだよ。でも、ソフィは寂しくなったら逢いに来ると言ってなかったか?」
「あなたが小さい時に逢いに行っても独り占め出来ないじゃない」
「そりゃそうか。まだ親の庇護下にいるからな。とりあえず懐かしの我が家で話でもしようか」
そう言ってソフィと手を繋いだケビンは、懐かしの我が家へと向かっていくのであった。
(この状況は傍から見たら完全に親子だな)
ケビンのその思いは誰に知られることもなく、ケビンの中で消化されることとなった。
「そういえばケビンが外へ出るのは初めてでしたね」
「落ち着きがなくてすみません」
俺も母さんも既に他所行きの喋り方に変更している。家の中ではない以上、しっかりしないとな。
「いいのよ。ケビンの年齢ならヤンチャをするのがお仕事みたいなものですし、街の景色を楽しみなさい。お父さんのお仕事の一端が垣間見れますよ」
「父上の仕事ですか?」
「そうよ。お父さんは領民が平和で楽しく暮らせるように、毎日頑張るのがお仕事なのよ」
「領主というのも大変なんですね」
「そうね。あなたは三男だから家督を次ぐ必要はないけれども、知っていて損はないわ。それにアインやカインが困っていたら手伝ってあげてちょうだいね」
アインというのは俺の6つ歳の離れた1番上の兄で、カインは5つ歳の離れた2番目の兄だ。あと4つ歳の離れたシーラという姉がいるのだが、実はこの姉に1番手を焼いている。
その理由というのが極度のブラコンで、俺にベッタリなのだ。そのくせ兄たちには普通に接している。
本人曰く、1番下だった時からずっと弟か妹が欲しかったそうだ。そんな時に俺が誕生したわけで母さん並みの愛情を注いでくる。
その様子に2人の兄は微笑ましいものでも見るかのような目付きでいるため、俺を助けてくれたりなどはしない。今は3人とも王都の学校に通っているから長期休暇がなければ会うことはない。
「領主を継ぐのはやはりアイン兄さんなのですか?」
「そうね。カインでも別に構わないのだけれども、多分アインが継ぐでしょうね。カインは表立って動くのは好きじゃないから、アインの補佐に徹すると思うわ。それにアインは弟思いだから、そんなカインの気持ちを知って自分が継ごうとしているのよ。結局のところ2人とも優秀だから、どちらが領主になってもいいのだけれど、お父さんとも話し合って本人たちの意志に任せることにしているの」
「そうなんですね。では、私は2人の兄が困っていたら全力でサポートできるように成長したいと思います」
「えぇ、お願いするわね、ケビン」
話の区切りがついたところで、アレスから声が掛かる。
「奥様、教会に到着しました」
なんというタイミングだ。やはり、できる男だな。
それから馬車を降り教会内へ入ると、祭服を着た男性がこちらへやってきた。
「お待ちしておりました。カロトバウン夫人」
「今日はよろしくお願いするわ、ガイル司教。この子が3歳になったので洗礼の儀式をして頂きたいの。さぁ、自己紹介しなさい」
そう言って母さんは俺の背中をそっと押して前へ出す。
「ケビン・カロトバウンです。本日は洗礼の儀式のためお伺いさせていただきました。お忙しいとは思いますがよろしくお願いします」
「承りました。それにしても聡明なお子さんでいらっしゃる。将来が楽しみですな」
「そうなんですの。私も時々、実年齢を疑うくらいですのよ」
「では、こちらへ」
誘導された先には神像が立っていた。その前には小さな魔法陣があり、どうやらそこに入るようだ。
「この円の上で膝をつきお祈りをして下さい。祈りが神に届けば体が光に包まれるので、その時は慌てずに光が収まるまで祈り続けてください」
意外とすぐに済みそうな儀式だな。とりあえず円の上に跪き祈りを始めてみた。
『ソフィ、無事に3歳になったよ。この世界に生まれさせてくれてありがとう。君にまだ会えないのが残念だけど、これからもこの世界で精一杯生きていくよ』
ケビンが祈りの最中に体が淡い光に包まれ始めたと思ったら、神像からも光が発してそれを見た司教たちは目を見開いていたのだった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
ふと空気が変わった様な気がしたのでこっそり目を開けてみると、目の前には懐かしの万能空間が広がっていた。
「久しぶりね、健……」
「……ソフィ?」
「そうよ。他の誰に見えるの?」
「えっ? でも、さっきまで教会にいたはずなんだけど……」
「そうね。私もいきなり健が現れてビックリよ」
「それにしては落ち着いているような気がするんだけど」
「何故健がいきなり現れたのかだいたい予想はついているの。それよりいつまでお祈りの格好をしているの? 新鮮だから見物ではあるんだけど」
そう言われて俺は跪いたままだと気づく。頭が混乱しているせいだな。立ち上がってソフィに近づくと、今の姿のせいか見上げる形になってしまった。
「ソフィを見上げるなんて新鮮だな」
「そうね。以前は私の方が少し身長が低かったから、見上げていたのは私の方だものね」
ソフィが膝をつくとケビンを抱き寄せる。
「会いたかった……寂しかったんだからね」
「俺もだよ。でも、ソフィは寂しくなったら逢いに来ると言ってなかったか?」
「あなたが小さい時に逢いに行っても独り占め出来ないじゃない」
「そりゃそうか。まだ親の庇護下にいるからな。とりあえず懐かしの我が家で話でもしようか」
そう言ってソフィと手を繋いだケビンは、懐かしの我が家へと向かっていくのであった。
(この状況は傍から見たら完全に親子だな)
ケビンのその思いは誰に知られることもなく、ケビンの中で消化されることとなった。
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