白い魔女に魅入られて
第一章 運命は巡る BOY MEETS GIRL?(5)
そして、その日、最後の講義が終わった。
ここまですべての授業の内容は昨日と同じだった。すでに小テストの問題がすべて同じの時点でかなりおかしい。
そもそも、本当に今日なのか? 仮に予知夢を見ていたとしても、普通授業内容を予知するか? いやいや、授業なんてそれっぽい内容のことを今までに聞いたことがあったから。知ってるように思えるだけ。ほら、そういうの誰にでもある。
それに、やっぱ授業内容予知するっておかしいだろ。こういう予知はたいてい漫画でも小説でも大抵、人の死を…………。いや、ネガティブになるな。今日を思い出せ。何があった?何かしら否定できる根拠があるはずだ。
大河の俺の号泣いじり以外の会話は……。
全部が全部同じだった訳ではなかった……。
俺が言いたいのは、全部が全部同じ会話内容ではなかったということではない。同じ会話をするには間違いなくおかしな会話があったということ。絶対に二度しない会話――――。
「あ、彼女と別れたわ」
聡太のこの一言。
「はぁ!?」
一同皆絶句。あんなに好き好き言うてただけに驚いた。別れる気配がなかった。
俺のクラスの面々はお互いの恋事情には関与していなかったため、本人から聞くまで誰一人として知らなかった。しかも、その彼女は他大学だから尚更知らない。
普通、別れた話なんてものは同じ人間に二回もしない。しかも、同じ場所で同じ口調でするか?
それに周りを見れば、この話が初めて聞いたときと同じ反応だった。孝基なんて驚きすぎて今回? も口を開けて固まっていたし。
この夢の最後に大河の死を予知したとして、これは回避できるのか?
周りの生徒らの会話に耳を澄ます。
「まじ、疲れたわー」
「今日の講義、一番眠たかった」
「お前寝てたやんけ」
「私これからバイトー」
「じゃぁ、一緒に帰ろ。ミクはー?」
「ごめん。今日はサークル! 先輩から招集かかったの」
「じゃ、部活行くわ」
「おぅ! がんば!」
心臓の鼓動がだんだんと早くなる。この後、あの三人が来るのかどうかを考えていた……。
気を紛らわすために携帯を手に取った。
LINEが二件。
……。
息を飲んだ。
――――肩がグイッと寄せられた。
「悠矢、もう帰んの?」
心臓が止まるかと思った。
「急にやめろ。心臓に悪い」
「ん? どうした?」
すぐ横に来た聡太が不思議そうに聞いてきた。
「絡み方いかつ〜」
孝基が。
腕が肩から離れた。
……。
「はぁ、お前の図体のデカさの方がいかついわ!なぁ、大河!!」
聡太が。
……
「いや、お前の方がいかつい」
大河が。
……。
夢で聞いた会話。
背筋がゾッとした。
鼓動がはっきりと聞こえる。
息を飲んだ。
嫌な予感がする。
夢で見た光景がよみがえる。
あの――悲惨な――。
「――それで、悠矢はどうする? 帰る?」
「あ、う、うん。 帰るよ」
意識が現実へ戻った。
「ん? やっぱ、なんかあったやろ?」
聡太が真剣な眼差しを向ける。
意外と鋭い。
「朝のときもおかしかったしなー」
大河はこれ見よがしに聡太に合わせてきた。
煽りなのか、真剣なのか、分からない。どっちだよ。
「いや、何もない。大丈夫」
自然な感じに言えた気がする。
「んー、そーか。 それじゃ、行こか」
聡太はあっさりと引いた。見た目以上に繊細なことができる男みたいだった。
出会って一ヶ月。まだまだ知らない部分の方が多いってか。
こういうところが人気なんだろな。男にも女にも。
聡太の後に続いた。
「そういや、またクラスで――――」
聡太が振り向いて話だした。そのタイミングで俺が聡太の前へ――三人よりも前へ出た。
聡太に目を向けた。
教室を出ようと扉に手をかけた。
扉をスライドして開けた。
ぶつかった。
「あっ」
小さい声だった。しかし、しっかりとした声。
「あっ、すみません。よそ見してま――」
その女性は《《白衣》》を着ていた。
あれ? この人……
その女性は右手で頭を抑えていた。
眉間には皺を寄せていた。
はっと思い、落ちた白衣の女性の鞄を拾い上げた。
「あの……大丈夫ですか?」
「…………」
頭痛? 体調でも悪いのだろうか。
「……」
左手を差し出していた。
「えっと、すみませんでした。……お大事に」
鞄を渡した。
そうして、俺は教室を出たのだった。
あの白衣の女性――夢でもぶつかったな。夢のときとは違った反応だったけれど。
なんでぶつかったのだろう?
多少なりとも、夢の中で教室にいた時間より長くいたと思うからぶつからないと思うんだけど。干渉していないはずなんだけどな。
なぜ?
「おい! 悠矢」
「えっ? あっ、ごめん。聞いてなかった」
「おいおい。またか。本当に大丈夫か?」
聡太がまたもや心配そうにしていた。
「そう思い悩むなよ。まぁ、話したくなったら話せよ」
「あぁ、そうするよ。ありがとう」
「さすが! 男前は言うこと違うな~」
大河がまた煽った。
こいつは隙あらばすぐ煽り、いじるな。
「じゃ、部活やし。行くなー」
孝基に各々別れを告げた。
小走りで去って行く。
空気を読んで待っててくれたらしい。部活大丈夫か?
「じゃ、俺らも帰ろうぜ」
「購買寄ってもいい?」
「おぅ! いいぜ」
聡太の言葉に俺はこう返した。
一先ず、これでいい。
ここまですべての授業の内容は昨日と同じだった。すでに小テストの問題がすべて同じの時点でかなりおかしい。
そもそも、本当に今日なのか? 仮に予知夢を見ていたとしても、普通授業内容を予知するか? いやいや、授業なんてそれっぽい内容のことを今までに聞いたことがあったから。知ってるように思えるだけ。ほら、そういうの誰にでもある。
それに、やっぱ授業内容予知するっておかしいだろ。こういう予知はたいてい漫画でも小説でも大抵、人の死を…………。いや、ネガティブになるな。今日を思い出せ。何があった?何かしら否定できる根拠があるはずだ。
大河の俺の号泣いじり以外の会話は……。
全部が全部同じだった訳ではなかった……。
俺が言いたいのは、全部が全部同じ会話内容ではなかったということではない。同じ会話をするには間違いなくおかしな会話があったということ。絶対に二度しない会話――――。
「あ、彼女と別れたわ」
聡太のこの一言。
「はぁ!?」
一同皆絶句。あんなに好き好き言うてただけに驚いた。別れる気配がなかった。
俺のクラスの面々はお互いの恋事情には関与していなかったため、本人から聞くまで誰一人として知らなかった。しかも、その彼女は他大学だから尚更知らない。
普通、別れた話なんてものは同じ人間に二回もしない。しかも、同じ場所で同じ口調でするか?
それに周りを見れば、この話が初めて聞いたときと同じ反応だった。孝基なんて驚きすぎて今回? も口を開けて固まっていたし。
この夢の最後に大河の死を予知したとして、これは回避できるのか?
周りの生徒らの会話に耳を澄ます。
「まじ、疲れたわー」
「今日の講義、一番眠たかった」
「お前寝てたやんけ」
「私これからバイトー」
「じゃぁ、一緒に帰ろ。ミクはー?」
「ごめん。今日はサークル! 先輩から招集かかったの」
「じゃ、部活行くわ」
「おぅ! がんば!」
心臓の鼓動がだんだんと早くなる。この後、あの三人が来るのかどうかを考えていた……。
気を紛らわすために携帯を手に取った。
LINEが二件。
……。
息を飲んだ。
――――肩がグイッと寄せられた。
「悠矢、もう帰んの?」
心臓が止まるかと思った。
「急にやめろ。心臓に悪い」
「ん? どうした?」
すぐ横に来た聡太が不思議そうに聞いてきた。
「絡み方いかつ〜」
孝基が。
腕が肩から離れた。
……。
「はぁ、お前の図体のデカさの方がいかついわ!なぁ、大河!!」
聡太が。
……
「いや、お前の方がいかつい」
大河が。
……。
夢で聞いた会話。
背筋がゾッとした。
鼓動がはっきりと聞こえる。
息を飲んだ。
嫌な予感がする。
夢で見た光景がよみがえる。
あの――悲惨な――。
「――それで、悠矢はどうする? 帰る?」
「あ、う、うん。 帰るよ」
意識が現実へ戻った。
「ん? やっぱ、なんかあったやろ?」
聡太が真剣な眼差しを向ける。
意外と鋭い。
「朝のときもおかしかったしなー」
大河はこれ見よがしに聡太に合わせてきた。
煽りなのか、真剣なのか、分からない。どっちだよ。
「いや、何もない。大丈夫」
自然な感じに言えた気がする。
「んー、そーか。 それじゃ、行こか」
聡太はあっさりと引いた。見た目以上に繊細なことができる男みたいだった。
出会って一ヶ月。まだまだ知らない部分の方が多いってか。
こういうところが人気なんだろな。男にも女にも。
聡太の後に続いた。
「そういや、またクラスで――――」
聡太が振り向いて話だした。そのタイミングで俺が聡太の前へ――三人よりも前へ出た。
聡太に目を向けた。
教室を出ようと扉に手をかけた。
扉をスライドして開けた。
ぶつかった。
「あっ」
小さい声だった。しかし、しっかりとした声。
「あっ、すみません。よそ見してま――」
その女性は《《白衣》》を着ていた。
あれ? この人……
その女性は右手で頭を抑えていた。
眉間には皺を寄せていた。
はっと思い、落ちた白衣の女性の鞄を拾い上げた。
「あの……大丈夫ですか?」
「…………」
頭痛? 体調でも悪いのだろうか。
「……」
左手を差し出していた。
「えっと、すみませんでした。……お大事に」
鞄を渡した。
そうして、俺は教室を出たのだった。
あの白衣の女性――夢でもぶつかったな。夢のときとは違った反応だったけれど。
なんでぶつかったのだろう?
多少なりとも、夢の中で教室にいた時間より長くいたと思うからぶつからないと思うんだけど。干渉していないはずなんだけどな。
なぜ?
「おい! 悠矢」
「えっ? あっ、ごめん。聞いてなかった」
「おいおい。またか。本当に大丈夫か?」
聡太がまたもや心配そうにしていた。
「そう思い悩むなよ。まぁ、話したくなったら話せよ」
「あぁ、そうするよ。ありがとう」
「さすが! 男前は言うこと違うな~」
大河がまた煽った。
こいつは隙あらばすぐ煽り、いじるな。
「じゃ、部活やし。行くなー」
孝基に各々別れを告げた。
小走りで去って行く。
空気を読んで待っててくれたらしい。部活大丈夫か?
「じゃ、俺らも帰ろうぜ」
「購買寄ってもいい?」
「おぅ! いいぜ」
聡太の言葉に俺はこう返した。
一先ず、これでいい。
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