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Me262, ドイツ・ジェット戦闘機奮戦す。

いわのふ

Final Operation ソ連軍最後の攻勢、そしてその終焉

三月。

ソ連は正念場を迎えていた。ドイツ軍はポーランド内から出ることはなかったが、意気揚々たるポーランド軍はたびたびソ連領を侵した。一方ソ連は、連日の爆撃により重戦車の製造が間に合わなくなってきた。

しかも早春であるため、必ずしも重戦車は有利ではない。ぬかるみに足をとられた重戦車は単なる砲台となってしまう。好機とみたフィンランドは積もり積もったスターリンへの恨みもあり、ゲリラ的な攻撃を繰り返した。

ソ連はいまだウラン原爆の開発途上であり、量産性のあるプルトニウム原爆は爆縮レンズの開発に失敗していた。ウランは実に単純な方法で爆弾を作ることができる。ウラン235を必要な量だけ濃縮するのに、途方もないコストと時間がかかるという難点を除けば。

ウラン235をウラン238と分離して濃縮するには遠心分離機を多数かつ長時間稼働させることが必要だからである。ウランは臨界量、というある量のウラン235を一か所に集めれば爆発する。だから、いったんウラン235さえ濃縮できればあとは簡単だ。二つの塊にわけたウラン235のうち、片方を爆薬で吹き飛ばして、もう片方にくっつけてやればいい。砲弾型という単純な構造で実現できる。

ウランに対しプルトニウムの分離は容易だ。しかし、プルトニウムはウランのように単純な手法では爆弾にならない。早期爆発という小規模な核分裂をおこしやすいため、ウランのように二つの塊をちかづけていくと早々に核反応を起こしてしまう。これを早期爆発とよび、ほとんどのプルトニウムは無駄に飛散する。そこで小さなプルトニウムを球体の内側に多数配置して、これを球体中心一点に爆薬で飛ばして正確に集める”爆縮レンズ”をつくらなければ原爆として機能しない。そんな技術的困難もあり、いまだソ連はウラン原爆もプルトニウム原爆も作り出せていない。「最終兵器」をスターリンは手にしていないのだ。その完成には絶望的に長い時間が必要におもえた。

東方戦線の日本軍に手を焼いてスターリンは焦っていた。補給がままならず、通常なら優位なはずの戦闘力を生かしきれず、極めて情勢不安定である。日ごろの補給不足に怒りをぶちまける兵士にやる気なんぞまるでない。旧型のゼロ戦を相手にしても、航空機はかたっぱしから撃墜され、制空権を完全に喪失していた。連日の艦砲射撃もいやらしいことこの上ない。

そこで、西方戦線のポーランドに向けて大反抗を決意した。主に陸軍精鋭を軸とした陸上機動部隊でポーランドを一挙に占領するという、かつてのバルジ作戦に似た電撃作戦であった。主力戦車はT34とし、IS2戦車は後続して周辺破壊を担当した。航空機も動員されたが、ドイツ空軍には遥かにおよばない戦闘機であり、無力に近かった。つまり、陸軍のみでポーランドを大規模攻撃しようとしたわけだ。

三月中旬に作戦は実行された。機動的なソ連軍のT34戦車は極めて迅速にポーランド国境を越え、進撃を続けた。一方、デーニッツはそれを放置した。いずれ、春の雪解けがピークになればぬかるんだ陸上で部隊は停滞するに違いない。暖かい晴れた日、あるいはその翌日に爆撃隊を動員して責め潰すつもりであった。

果たしてチャンスは四月中旬にやってきた。ドイツの爆撃機大編隊がT34の上から爆弾を降らせた。またMe262ZはV0によって各個撃破を試みた。停滞するIS2重戦車に対してはネーベル・ヴェルファーロケットが頭上から降り注がれ、ソ連軍主力部隊はわずか一日で崩壊しはじめた。

進軍が止まり、弱ったソ連軍へのドイツの攻撃は執拗かつ徹底しており、重戦車隊を包囲して降伏するまで強力な88ミリ対戦車砲とロケット弾による攻撃を続けた。時には、ティーガーを改造した自走砲である「シュトルム・ティーガー」を動員して巨大なロケット弾を撃ち込んで壊滅させた。シュトルム・ティーガーのロケット弾が炸裂するとビルをまるごと吹き飛ばすほどの威力を発揮する。これは抵抗を続ける部隊に対して大きな脅威となった。また、このロケット弾は巨大なうえに高いうなり声をあげながら自転して飛び込んでくる。このために心理的脅威を与えることにも成功した。数が少ないシュトルム・ティーガーの補助としては米軍からM7プリースト自走砲が供与された。

この戦いにより、ソ連軍は大半の戦車を失い、インフラも寸断され、もはや経戦能力にさえ問題が生じた。スターリンはついに落としどころを考え始めた。とにかくも、国内的には有利な戦いであったことを主張しなければ、自身が粛清されるかもしれない。ストラヴィンスキーの楽曲「春の祭典」を模して、陰で「早春の惨事」とまでよぶものまでいる始末だ、真っ先にこいつらは粛清しておかねばならぬ。

この後、一週間ほど大規模な戦闘は世界のどこでもおこらず、戦争に関係した主力国、ソ連、日英米独はベルリンで会談をすることになった。ここは駆け引きだ、とスターリンは思った。自分の生命さえ危ないのだ。

ベルリンで顔を合わせた各国首脳は、もはやこの戦いは終結させるより他ない、ということにおいて一致していた。しかし、それぞれの国には思惑があり、調整しろは数多くあった。デーニッツは今後のソ連の脅威を考え、緩衝地帯としてポーランドの主権回復と独立を主張した。一方でソ連はポーランド割譲を執拗に要求した。

英国は、かつての植民地維持にこだわった。日本は満州の独立を完全に認め朝鮮半島も放棄し、ドイツと同様の理由でソ連との緩衝領域とすることを希望した。米国には特に現状で得るものも失うものもなかったが、世界の盟主としての立場が約束されたようなものだった。ソ連と対決すればやがて核戦争になるかもしれないが、米国の方が有利だ。

しかし、世界的に疲弊し、死傷者が多数出ていることから考え、折衷案が何度も提案されては否決された。結局、合意としては次のようなものとなった。

一、ポーランドはロシア人居住地区の一部をソ連に信託領として割譲する。ソ連は認められた信託領において、ポーランドの警察力介入を認めること。

二、ドイツはフランスを完全放棄し、ベネルクス三国、オーストリアも独立させる。ポーランドからも撤退する。また、フランスは仏印植民地化を放棄すること。

三、英国はかつての植民地の名目的支配は認めるものの、現地の希望次第で独立を認めること。この項は日本が非常に強く望み、かつインドとの関係を継続的にしたいという意思も強く働いた。背後では「中村屋のボース」やチャンドラ・ボース、A. M. ナイルらが日本政府に働きかけを実施した。

四、日本は満州を完全に独立国家として承認し、一切の政治的干渉を即中止する。さらに、日本はソ連の脅威を食い止めるために朝鮮半島の返還と半島および満州における軍事監視団の設立を希望した。

五、樺太千島交換条約に従い、日本軍は樺太から撤退し、千島列島南部において日本の領有権を認める。

骨子は以上であり、各国の南方領土については、今後の趨勢にまかせることになっていた。しかし、すでにインドネシアでは日本政府の意思とは別に、残留日本軍とオランダ軍のゲリラ戦が始まっていた。ベトナムではフランスが再度の植民地構築を試み、現地は大混乱に陥った。また、一方でソ連のスターリンはいかにポーランド侵攻が大変だったか国内的宣伝に注力せざるをえまい。

条約発効は一九四六年五月十五日とされた。「戦争は終わった」とデーニッツは思った。デーニッツはもう引退したいと思っていた。Uボートによる通商破壊作戦で息子を亡くし、気をはっていられたのもヒトラーがなにをしでかすか分からないからであった。幸いにして、ドイツには経済発展を支える基礎技術がある。軍備も縮小して、国内を充実させよう、それが終われば引退だ。

チャーチルはかなり不満ではあったが、荒廃する国内立て直しを国民に約束せねばばらなかった。何より、物資の滞りがひどく、国内にはチャーチルを批判するものまでいる。インドでは独立運動が激しくなっており、植民地経営など二の次の状態である。

ソ連は各地工場が破壊されたとはいえ、広大な領土と資源でやがて復活し、米国と対立するであろう。スターリンのことだ、強引にことをすすめるのだろう。

日本は資源も食料も米国に頼っており、ドイツとは別途に米国と安全保障協力宣言を発表した。国内世論も厭戦的で、だれも世界支配とか、大東亜構想などという人間はいない。

いずれにしても、この戦いでまだ余裕があるのは人的資源と領土を持つソ連、米国であることは明らかで、両者が戦後にいさかいを繰り返していくことも想像できた。

五月十六日には各国で戦勝パレードが実施されたが、実態はむなしいものであった。戦争は今後、誰も得をしないものになってしまうだろう。原子爆弾の威力を見た各国もそれをつかおうなどとは思うまい。山本五十六にちなんで、五月十六日は祝日となった。

デーニッツと軍幹部はその夜、久しぶりにモーゼル・ザール地方産の甘いシュペートレーゼワインを何本も開け、泥酔した。かつての総統お気に入りの地下壕はパーティ会場と化し、婦人たちもほろ酔い加減でダンスを披露した。ヨーゼフ・ゲッペルス夫人は普段は強気な女性だが、アルコールのせいもあってか彼女の友人たちと全裸になって踊った。深夜になって、上機嫌のデーニッツは、士官に抱きかかえられながら帰宅した。毎日のように総統地下壕での寝泊まりが続いたデーニッツは、自宅を見てほっとした。

「ああ、これでよかったんだ。」

デーニッツは酔いながらも、つぶやき、そして深い眠りにおちていった。

日本の撤退した朝鮮では監視軍の存在にもかかわらず、すぐに米ソの戦いがはじまり、中国では引き続き共産軍と国民軍が内戦を続けている。しかし、そのようなことはデーニッツの想定外であり、今このひとときを休みたい、そう思った。

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