何で死ぬのに生きてるのですか〜ネズミに転生した最強闇魔法使い、銀髪の少女のペットになる〜

にくまも

29.科学の力

 「X線はどうですか?」


 「いや、未だに何も見えない。真っ黒だ。それに見ろ臓器にちゃんと色が見えているからだから別に体内に闇を放出させているわけでもないようだ」


 男の声が二人、彼らは話しながら開かれた腹の肉壁をさらに刃物で切りとった。抵抗するべき事態、けれど憶測でしかないがきっと今回も麻酔は使われている。抵抗しては事態が悪い方向に進む可能性が出てしまう。
 それにX線とは一体なんだ……見える見えないの話をしているから目に映るものというのは分かるが、まさかこの世界だけの特殊なものか? まずい、知識が明らかに不足している。


 「見ろ、肉体から切り取った瞬間に流れるように肉片がX線に映るようになったぞ。別に特異体質という訳ではなくなった。これはどうゆう訳か細胞の内側に闇を放出させてるもの……? いや、それにしては闇が消えるのが滑らかすぎるか」


 肉片の中に潜ませているはずの闇の動きがことごとく暴かれる。


 「は……? そ、そんなッ先生! 患者の目が開いてます!」


 一人が耳に手を当てたかと思うとすぐさま私の顔を見る。まずい、気づかれた。だが幸いなことにまだ眼球を私は動かしていない。なんとか過ごせないだろうか?


 「ああ、こちらも聞いてる。覚醒しているのかもしれない……瞳孔は?」


 光が左右に移動しながら目に当てられる。私は気づかれないために一切の操作を眼球から切断する。


 聞いてる?


 誰が伝えた?


 誰が私を見ているんだ?


 光、水、風と候補が上がるが声を伝えたということは風か?


 いやまて、声を聞こえさせないことが出来るならば逆に聞こえさせることもできる。昨日見ていたテレビを思い出し、遠くの部屋の映像を見ることも不可能ではない。もはや誰でもできる可能性がある。この世界はそうゆう世界だ。


 「いえ、こちらも縮瞳も散瞳もしていませんので問題ないかと」


 「バイタルにも異常はないからメスを入れた衝撃で反射的に開いてしまったのかもしれない。とりあえずこの患者は終わりだ」


 切り開かれた腹が1本1本と縫い合わされてどんどん塞がっていくのを感じる


 「あとは女の子の方ですね」


 ……女の子?


 「ああ、だが彼女の方もきっと同じ結果になるだろう」


 「でも彼女の場合、適性は光のはずでは? X線を闇が吸収するような結果にはならないと思いますけど……」


 ――まずい、結衣の方の魔法陣を切っていない。あの状態で切り開かれたら騒ぎになる。いや、同じ魔法陣が使える人がいるかもしれない。大事にはならないか?
 ダメだな、それならば今この場で私の傷を縫う必要なんてものはない。魔術学園で治癒に使用しないのならば少なくとも使える人がいないか、使ってはダメなんだ。


 「それはお前、たまたま反射しちゃったーっとかだろ。全く……宇宙空間で少しは役に立つかと思ったら使うことすらできないんだから、まず酸素より魔力がある惑星を探せってか?」


 考えろ考えろ、結衣はどうなる? 少なくとも魔法陣が隠されていただけなら魔法陣のでところを聞かれる。だが初めて見たのなら効果を調べるため実験されてしまう。その中で万が一頭を吹き飛ばされでもしたら死ぬ。


 「そういえば先生は昔、宇宙飛行士の医療担当でしたね」


 「忘れてたのかね、でっ結局役に立ったのは地球に戻るとき衝撃を減らしたぐらいだ。……ああ、その患者はもう部屋に戻して良いぞ」


 「っあ、分かりました」


 そう女性の返事の声が聞こえたかと思うと一人が私が載せられた台ごと押して手術室から運び出される。頃合いを見て部屋を抜け出し結衣を探さなくては。


 「黒須さん、黒須さん」


 そして廊下に出たと思ったら足元で押していた人が顔の方に近づき私の体を揺らしながら名前を呼ぶ。


 何だ? もう起きていいのか?
 眼球に感覚を戻し起き上がり声を出そうとしたその時。


 「おい何してるんだ、意識が覚醒してしまうだろ! そのまま起こさないで部屋に運べば良いんだ」


 そう荒らげた声が先ほどの部屋から聞こえた。先ほどの中で話していた声の一人、先生と呼ばれてた方の声だ。


 「えっでも麻酔後は呼吸の確認を――」


 「その患者が無呼吸だろうが私たちには関係ないことなんだ。いいから部屋に、部屋に」


 「あっはい、すみません……分かりました」


 その後は黙々と台を転がされ、部屋に運び込んだかと思えば押していた人はそそくさと部屋を出て行った。


 少しずつ火傷で包帯が巻かれた腕に力を入れ揺らし、麻酔が今抜け出したかという演技をする。


 手術中に私を見ていた人が誰かは分からない。だがまだ見ているかもしれない。


 そして開いていた目蓋もゆっくり動かし開閉させ。


 よしっ


 ゆっくりと上半身を起き上がらせる。窓の外を見る部屋は私が寝る前に
 まず結衣がどこいるのか調べなくてはいけない。とりあえずこめかみに包帯が巻かれた手をあて画面を起動させ、地図を見つけ押そうとしたが起動したのは近くの友達というやつだった。


 『相川あいかわ かや


 ただ一人その名前が鎮座していた。


 一人だけ? と思ったが今はそんなことを考える時ではない。すぐに閉じようとも思ったが、検索ボタンが目に入る。


 試しに中院 結衣を入力してみると友達登録のボタンの下に場所のボタンを見つける。


 『警告 友達になるまで場所は表示されません』


 じゃなぜ友達になるまで場所のボタンを表示させる。


 少しイラっとしながら初期画面に戻し、もう一度ちゃんと地図を押し病院を検索する。


 『1件』


 この病院しかない? こんな大きい島でただの一つだけ? 冗談だろ、この建物が壊れたらどうするんだ? まぁそれならそれでこちらにとっても探しやすくて都合がいい。
 そういえば中院 明人が来た時に近くにいるからすぐに行くと言ってたのを思い出す。


 この病院にいるのは間違いなさそうだな。


 最後にいちいち人を見るたびに名前が表示されて鬱陶しいので設定を開きその機能をオフにした。


 ベットから立ち上がり部屋を出る。


 「っぁ」


 開いた扉の前をムーアが果物が入ったを持ちながら横切り目が合い、彼は小さく声を漏らし一瞬ばつが悪そうな顔をする。そして目を私の足や腹に向けた後、何事もなかったかのように張り付けた笑顔をこちらに向け


 「おはよう、黒須くんももう歩けるようになったんだね」


 黒須ならどう返すのか正しいことなのか考え、大人しい彼と怒りに満ちた彼が頭に浮かぶ。


 「……ああ」


 とりあえず無難に肯定する。


 「……」


 そう答えた瞬間にムーアは顔をしかめて私をじっと見る。……どうした? この一言がそんなにおかしいか?


 「…………君はいったい誰?」





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