何で死ぬのに生きてるのですか〜ネズミに転生した最強闇魔法使い、銀髪の少女のペットになる〜

にくまも

26.ありふれた遠き場所





 「――ン……ンン゛ー!!」


 助けられた子はいずりながら近づきもう一人の血だまりで泳ぐ。


 「ン゛ン゛! ゥンン!!」


 彼女は血と土で汚れ涙を垂れ流した顔で私を見ながら布を噛みしめ叫ぶ。


 「……」


 「ンンッンンンン!」


 何を喋っているのか気になった私は彼女の口に結ばれた布を外す。


 「――げほげほ、お願いッ助けて……お願い、私はどうなってもいいからお姉ちゃんだけでも助けて……」


 彼女は舌を動かせないように口の中に入れられたもう一つの唾液まみれの布を吐き出しせき込みながらも必死な表情で話しかけてきた。


 姉、と言うことは今話しかけてきているのは妹の方か。だが今はそんなことより彼女の言った言葉の方が気になった。
 それは私に助けを求めるありふれた懇願、されど有象無象とは違う懇願だった。恐怖を押し殺し、されど自分のことよりも助からないであろう死にかけの姉を救ってほしいと手をかけた本人に願う。そんな可能性が低い道が複数入ったものを彼女はわざわざ選んだのだ。


 彼女には聞きたいことがたくさん生まれたが……そんなことを悠長に聞いているうちに彼女の姉は死ぬだろう。


 アンデッドの魔法を姉の方にかけ肉体を補完する。


 「――ぇ……た、助けてくれたの?」


 切り離されかけている姉の胸がつながっていく姿を見て妹の方は目を丸くし、私の向かってそうつぶやいた。


 「……ああ、姉は助ける」


 影を伸ばして今度は簡単には外れないよう妹をしっかり手足を拘束する。もちろん姉を助ける気など私には毛頭ない。私は嘘つきなのだから。


 「――わ、分かった。でも先にお姉ちゃんを外に出して……ください」


 妹は震えながら涙を浮かべ、寝込んでいる姉を見ながら私に頼み込む。だがそんな戯言ざれごとに返事などしない。


 『魂の砂場』




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 「――わ、分かった。でも先にお姉ちゃんを外に出して……ください」


  ……成功か。だけれど効率が悪いな。


 「ああ、別に構わない」


 そう答え、地面で眠っている姉を蹴り飛ばし起こす。


 「――ッ」


 姉は蹴飛ばされた勢いで転がり壁にぶつかりうめき声を上げ目を開ける。


 「目を開けたか、君はもう必要なくなったからあそこから扉から出て行っていいぞ」


 扉を指さしながら出口を教える。だが姉は驚いた顔で自分の体を触っていて話をあまり聞いていなかった。


 「おい、出口はあそこだ」


 2度目で姉はやっと出口を見た、だがそれも一瞬で手前にいる妹の方を彼女はずっと見ていた。


 「出口……ラーネは、妹は?」


 「君の妹? 実験に付き合ってもらうよ。君はおまけみたいなものだからあそこから出て行ってかまわない」


 ――だけれど姉は動かなかった。


 「ダメ! 実験なら私を好きにしていいから妹を出してあげて!」


 妹の前に両手を広げて立つ。


 「……ダメだよお姉ちゃん、私がもう頼んだんだ。だからね、お姉ちゃんだけでも生きて……」


 妹は泣きながら押し殺した声で姉に伝えていた。だがそんなことはどうでもいい。


 ――なぜ……なぜこの二人は逃げない。なぜ二人とも自分の身よりも相手の身を案じる……いや、まだだ、まだ確証は得られていない。この二人が本当に自分の命なんかよりも相手を助けるのか確かめなくてはならない。


 「はぁ、どちらでもいい。だけど助かるのは一人だけだ。実験が終わったら一人だけ助けよう」
 

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