何で死ぬのに生きてるのですか〜ネズミに転生した最強闇魔法使い、銀髪の少女のペットになる〜

にくまも

24.兄妹愛

 
 明人はローブをなびかせ短い金髪を揺らし歩いて来る。そして流れるようにベットの隣に置かれた椅子を引き出し、ゆっくりと腰かけこちらに微笑む。


 ……結衣の仕返しにでも来たのだろうか。


 「ああ、僕は明人あきとって呼んでくれればいいよ」


 ……私の左脚にゆっくり手を伸ばしで優しく撫でてきた。名前呼びといい最初から随分と気さくだ。黒須はもしかして仲が良かったのか? まだ映像は全て見ていないからその可能性は十分ある……だとしたら不味いな。


  明人
 「突然来て申し訳ないね、実は一つお話があってね」


 優しい声色でそう言って顔を見てくるがまだろくに発音もできないから私はただただじっと明人の顔を見るしかできない。どうすればいい……これでは怪しまれてしまう。


  明人
 「ああ、首を火傷してろくに話せないのは分かっているだから無理しなくても大丈夫だよ。それでね……話っていうのは黒須君はこの学校にも生徒会があること知ってる?」


 火傷、そうか……これぐらいの火傷なら普通は喋れないか。おまけに手術後まだ数時間しかたっていないから離せなくても不自然ではないか。……生徒会、アニメで見たことあるが生徒たちが集まって企画とかするやつか? 明人の顔を見るが彼はニコニコしてるだけだった。


  明人
 「まぁ、知らないよね。大体は普通の学校と同じなんだけどね……一つ、そう一つだけ違うんだ」


 右手の人差し指だけを上げながら言ってくる。


  明人
 「……それはねー、身勝手な行動をする人に罰を与えることだよ」


 ――撫でていた左手が止まり、引きちぎられるのではないかと錯覚するほどの力で握られる。


  明人
 「君さー、今日刺したよね……女の子をさ、滅多刺しに……酷いもんだったよ。君と同じように手術して無事一応命が助かってけどさ、君とは違ってまだ眠ってるんだよ。可哀そうに……本当に可哀そうに……」


 明人の手の形に脚が凹み、爪が皮膚に刺さる。明人の表情は先ほどと変わらず笑顔のままだ。


  明人
 「……僕はね、優しくない人は嫌いなんだよ。あの女の子はさ……何も抵抗していなかったのにさ、刺したよね……倒れた後にもさ、なんども……なんどもなんどもなんどもッ!」


 熱ッ


 その手が徐々に発光し熱くなる……ああ、また火傷か。火などが出ていないということは明人は光系統か。


  明人
 「――ああ、ごめんね。つい感情的になってしまった。普段なら好き勝手し殺し合いをしたらその人を私たちが罰を与えるはずなんだけど、今回は君から始めたわけじゃないから罰はないよ。桐ケ谷君も死んじゃったわけだしね」


 口ではそう言っていたが明人は手を緩めることなく手形に火傷した皮膚をそのまま強く握りつぶし、空いた右手で銀色に光るものを取り出してこちらに見せつけた。


  明人
 「……これ、分かる?」


 それは黒須が持っていたものと瓜二つのナイフだ。私の表情を確認し明人はうなずきそのナイフを煌めかせる。


  明人
 「そう、君が刺した時に使ったナイフだよ。本当はこれで私も君を刺したかったのだけれど、やめとくよ」


 ナイフを左脚に近づけながら明人はそう言いそのままナイフを少しずづ、少しずづ私の左脚の骨と筋肉を分離させるかのようにえぐりながら潜り込ませてきた。


 「ッ――」


 突然のことでとっさに声が少し漏れてしまう。そしてそれを聞いた明人の笑顔は一瞬だけ吊り上がる。やはり仕返しに来たか、だが最初から殺す気ならこんな回りくどいことはしないだろう。


  明人
 「……ん、何痛がってるの? 女の子だって何倍も痛かったんだから我慢だよ、がまん」


 明人の声は明らかに先ほどよりも高揚していた。彼は脚の中に入ったままのナイフを手首から折り曲げ、その結果ナイフが脚の中から皮膚を引き裂き顔を出す。既に足元白かったベットは流れ出た血で赤く染まっていた。


  明人
 「あ、やっぱ我慢できなかったよ」


 笑顔は崩れ去り怒りに満ちた表情で勢い良く立ち上がり、その衝撃で座っていた椅子が音を鳴らして後ろに倒れる。だがそのことは全く気にする様子もなく私の左脚を押さえ込み、ナイフを大きく振りかぶる。


  明人
 「左脚、そう左脚だけッ!」


 そう叫び声をあげながら切りさいた箇所ではなく今度は太ももの方に向かって何度も刺し始め、ナイフに付着した血が白い部屋に花を咲かせる。明人の表情は喜怒が喧嘩をしているような顔だった。


 明人
 「ァ゛ァ゛――――」


 そしてもう一度大きく振りかぶる。だが、今度は脚に届くことはなかった。


 振りかぶった手はそのまま空中で止まり、そして明人の手からナイフが零れ落ちそのまま太ももに開けられた穴に追い打ちをかけるかのように綺麗に刺さる。


 「――ッ、結衣の意識が戻ったというのは本当ですか?」 


 ……私は包帯の両手でナイフを震えながら挟み上げ、床に投げ捨てた。



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