何で死ぬのに生きてるのですか〜ネズミに転生した最強闇魔法使い、銀髪の少女のペットになる〜

にくまも

23.背負う業

 
 ドローンは私の両腕をアームで挟み持ち上げ、その後お腹と足も別のドローンに掴まれて下向きに倒され上昇し雨降る中、島を眺めさせられながら運ばされる。


 大雨の中で風に流されるためかドローンは時々左右に傾いて揺れていた。だが、それでもさらに上空を飛んでいる傘ドローンのおかげで私には雨粒一つ落ちてこない。どこに行くのかと思っていると学園と反対側にある商業地区の方に飛んでいく。




 その後、私はビルの上に設置されたテーブルに置かれたかと思うと勝手に動き出し、建物の中に吸い込まれた。中は病院のようで担ぎ込まれ、医師に見られ皮膚の火傷、手のひらの骨折に関して驚かれた。


 「な、なんだこれは……首と手の火傷も酷いもんだ。もう痛みすら感じられてないんじゃないか? 手の骨もまるで粉砕機にかけられたようにバラバラに砕かれているじゃないか!」


 肉体なんて気にしないで動かした、だから多少は砕けているだろう。そのままどこかの部屋に移動し、緑色のの服を着た人たちに私は針を刺され、何やら液体を流し込まれた。


 「これから手術して治しますからね」


 手術か、アニメで見たことがある。あの体を切りさいてつなぎ合わせて治す奴か……と周りの道具を一つずつ眺めていくと一人の男と目が合った。


 「……ん? お、おい、この患者、まだまぶたが開いて目が動いてないか? ちゃんと麻酔入れてるよな?」


 「はい、ちゃんと麻酔を入れたはずですが……」


 目があった男が隣で私に針を刺した人に聞き確認を取った。


 「そうか……すまないが万が一がある、もう少し麻酔の量を増やした後、その患者のまぶたを閉じといてくれ」


 まぶたを閉じられる。あの針から麻酔が流れているのか、ならまた目を開けると騒ぎになってしまう、ここは大人しく目を閉じ終わるのを待つことにしよう。危なくなったら同化して逃げればいい


 お腹を切りさかれ始める――私は今まで実験してきたエルフなどのことを思い出す……ああ、そうだな。


 黒須の体から伝わる痛覚を何倍にもあげる。


 すると同時に首と手のひらにハンマーで常に叩きつけられるような激痛が走り、お腹に鋭い痛みが何度も走りぬける。
 ッ――――すぐに意識が飛び、同化をやめそうになる。


 ア゛――ア゛これが彼らに与えた痛みならば、他人にしといて自分はやらないわけにはいかないだろッ自分に言い聞かせ、力を籠め意識を保つ。


 「な、なんだ急に患者が痙攣し始めてるぞ。バイタルはどうなってるッ!」


 「ッ心拍と呼吸並びに全てが低下しています!」


  ――――ッ痛みで忘れかけていた心臓と肺を動かす。


 「……え、いや上昇してきました」


 「だがまだ痙攣しているぞッ」


  ――ッ痛覚だけを残すように同化を解く。




---------------------------------




 「黒須さんー、黒須さんー終わりましたよ。起きてください」


 長い時間を得て、私は目を開ける。そのまま入院と言われ個室に移動させられる。




 そこは窓際にベットと洗面台が並んであるだけの質素な部屋。ベットから見た外は既に夜になっていた。


 一つ一つの施設の明かりが夜空を照らし実に幻想的な世界。私の世界では夜を照らすのは松明を燃やすか火の魔法を使うしか無かったのに。


 包帯が巻かれ、ろくに動かせない腕を回す。アンデッドで治療できるから手術自体は全く必要ではなかった。


 黒須の体と同化した私は死ななくなったのだろうか? 体を影に溶け合わせ限りなく小さいはずだが……結果が分かるのは40年後ぐらいだ。時間はたっぷりあるし別の道も模索しよう。


 ……ああ、そういえばこめかみに手を当てれば画面が出るか?


 こめかみに包帯が巻かれた手で触るとすぐに画面が出てくる。
 普通に大丈夫みたいだ。
 だが、背景が結衣の奴とは違って黒い。画面に表示されたテレビ、メッセージ、買い物、ゲーム、映像、ネットの項目などの中からテレビをタップする。


 『n家の間ではこれこそがホワイトホールの出現などではないかと議論されています』


 画面から人が映って掛けてくる。


 『続いては街で今でもスマホを使っている年配の方にお話を聞きたいと思います。すみませーん、どうしてまだスマートフォンを使っているのですか?』


 『ああ、俺らはやっぱり何か物を押して操作してる感覚があるのがいいんだ。指で押しても通り抜けるのは空しいだろ。へへ』


 『ではスマホを使っているせいで転んだときにとっさに手で回避できない問題についてどう思いますか?』


 『はぁ、んなの、歩いているときに使わなきゃ問題になんねぇよ。使い方がわりぃんだよ。はぁ、昔は良かったよ。そんなことで問題という人もいないし、メガネ付けてる人もたくさんいたのに今では一人もいないからなぁ……コスプレとか言われるんだろ……』


 続いて私は映像を押す。するとカレンダーが現れ日付の選択をさせられた。とりあえず今日が4月10日みたいなので前日の9日を押す。


 「クソガクソガクソガクソガクソガクソガクソガッァ!! 舐め腐りやがってッ! 桐ケ谷ァ嗚呼! 絶対殺してやる、殺してやる殺してやる殺してやる」


 部屋の真ん中で黒須が立っている姿が映し出され。結衣を刺した銀色のナイフを枕に向けて振りかざして刺している映像が映る。……もしかしてあのナイフは桐ケ谷用だったのか? 黒須は何度もナイフを枕に刺したと思ったら今度は投げ捨て、手に魔法陣を浮かべ黒槍を出して枕を刺していた。


 あれは闇だな……黒須が闇適正があるなら同化する際に一緒に肉体も持っていけるかもしれない。いや、この世界で他の肉体を闇に同化させたことはなかった。もしかすると出来ずにミンチ状になって肉体が出ることになるかもしれない。


 その後、映像の時間を進めたり遅くしたりして黒須を観察し彼という人間を少し理解した。彼は皆の前なら我慢できなくなるまで控えめであり、人数が減れば減るほど少しずつ自分を出していくような人間のように感じられた。幸い仲良くしている人間などいないようだし、これはかなり楽だ。


 テレビに切り替え、左下に巻き戻しのボタンがあったので一番最初の話の前に時間を巻き戻す。


 『映像をご覧ください。近年、何もない空間から突然岩が出現される現象が発生しております。専門家の間ではこれこそが~』


 空に突然岩が出現し、街中に落ちていく映像が映った。魔法? かとも思ったが魔法陣がない。魔法陣なしでも魔法が使える……? いや、きっと違うだろう。この学園でもそんな話は耳にしていない。


 ということはこの世界では雷だけではなく岩まで降ってくるというのか……


 そこまで見て、私は現状では発声もままならないということを思い出す。このままテレビを見ながら発音の練習をするか……。


 「a、aa、あ、あ、あ、あ……うぃii、i、ii、い、うぇ、え、ぉお。あ、い、う、うぇ、ぅお」


 ふむ、あ行はもう問題ないだろう。


 「き、くぁ、くぃっ……」


 か行が難しいな……舌の使い方が全く分からない。


 「く、か、っくぁっ――」


 「やぁ、黒須君。奇行をしている最中に悪いねー」


 辺りは静寂に包まれ何とも言えない時間が部屋を流れる。


 部屋の出入り口に目を向けると、ドアに寄りかかり金色の髪を輝かせながら笑顔でこちらを見る制服の男。


 結衣の兄、中院 明人がそこに立っていた。

「何で死ぬのに生きてるのですか〜ネズミに転生した最強闇魔法使い、銀髪の少女のペットになる〜」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「SF」の人気作品

コメント

コメントを書く