何で死ぬのに生きてるのですか〜ネズミに転生した最強闇魔法使い、銀髪の少女のペットになる〜

にくまも

20.擬似餌



 私は結衣の背中を滅多刺しにした後、観客席の方まで歩いて行った。


 、放棄も中断もしてしまったら誰も結衣を助けてはくれない。
だが、かといってこのまま放置をしても死んでしまうだろう。
 神田がわざわざ誰かと言ったのは言葉の綾ではなければもう一人を引きずり降ろして殺せばいい。だがどうやって引きずり降ろすのだ? 


 この試合は1対1のルール、引きずりおろしたとしても別の試合の扱いになってしまったら果たして結衣は治療は受けられるのだろうか? それとも放置? 


 だとするとこのままの状態で2対1に持ち込めなければならない。そうなると……一番引きずり出す確率が高いのは発端の桐ケ谷になるか? 


 進んで目立ってしまう人は自己顕示欲が高い。だからこそ少しのことでも怒鳴り散らし始めてしまう……否定を嫌う。恥を嫌う。


 桐ケ谷がプライドが最も傷つく言葉……


 そういえばなぜ彼は黒須と結衣を殺し合いさせ始めたんだ?


 自分の手でわざわざ殺すのが面倒だったから? 


 嫌いな人二人が勝手に殴り合ってくれるんだ。自分で一人ずつ殴って行くよりは効率が良かったからだろうか……


 だが、そこを否定するしかない。考えろ、彼が何故戦わせあって自分が直接手を下さないのかを……魔力も力もある彼だ。それは学校の態度と彼の体格から確定されたもの。ならば精神面から責めるしかない。
 たとえ面倒だったとしか私は思ってなくても作らなければいけないんだ。


 怖かった? いや、直接人を殴っといて殺し合いをさせる人が怖くて怖気付いたなんてことがあるはずがない。だが、それが一番こちらが無知と相手に判らせ否定して来させるのに一番適している言葉ではないか?


 「mew……」


 自分の口を瞬時に押さえそしてそのまま顔を手で覆った。


 ――声の出し方が…………分からない。


 こんな単純なことを見落としていたなんて……そう、聞き取れるが口をどの動きにさせればその音が出るのかは分からないのだ。


 桐ケ谷 海斗
 「……あ?」


 桐ケ谷が私を睨みつけてくるが今は口でのコミュニケーションというものが取れるとは思えない、別の方法を考えなければ……。


 桐ケ谷 海斗
 「お前今なんて言った? もっかい言ってみろ」


 桐ケ谷の名前が表示されているのがふと目に付いたが、そんなどうでもいいことを考える余裕はない。魔法はダメだ、まだ生徒は玉を飛ばすぐらいしか習っていない。距離も明らかに8メートルより離れている。そこでふと私は自分の持っているどす黒いナイフに目が行った。


 投げるか……でも果たして届くのだろうか? あまりこうゆうものは生前でもしたことがなかったのだが……


 私は右手に力を入れ、手首をひねりナイフを桐ケ谷に向け力いっぱい投げた。


 ナイフは空気を切りさきながら真っ直ぐ桐ヶ谷の左肩に向かって飛ぶ……訳なく、もっと上のあらぬ方向に向かって飛んで行った。だが、コロシアムと観客席の間をナイフが通り過ぎるときに四方の地面や壁から光が集約し……ナイフは瞬時に赤く輝き、溶けた。


 その結果、増えた空気抵抗によって勢いは失われ、溶けた鉄が桐ケ谷の左肩上部に飛び散る。


 桐ケ谷 海斗
 「っ! がぁあ゛づ」


 桐ケ谷は叫び声を上げとっさに飛び散ったところを右手で触りすぐさま服を乱雑に脱ぎ捨てる。だが溶けた鉄がまだ肌に付いているのか、なおも飛び跳ねりながら次は観客席からコロシアムの中に落ちてきて雨水が混ざった地面を転びまわり消火する。辺りには肉が焦げる匂いが立ち込め水が蒸発する音が聴こえる。


 ――なるほど、光の壁の応用みたいなものか。


 桐ケ谷 海斗
 「はぁ、はぁ、はぁ、ぜってぇ許さねぇ」


 桐ケ谷は左手で濡れた地面をジリジリと握りしめながら、焼けただれる左肩を右手で押さえて私を睨みつけてくる。


 ……え、一体これはどういう扱いになるんだ?


 神田
 「ちょっと桐ケ谷さん乱入はダメだよー。戻っておいで―」


 神田は観客席の手すりから身を少し乗り出しながら転げ落ちた桐ケ谷に向かって手を招く。


 桐ケ谷 海斗
 「――うるせぇぇぇぇえ‼ 俺はもう今ここで黒須をぶっ殺してやらなきゃ気分が落ち着かねぇんだ」


 が桐ケ谷は気にも留めずにいた。


 神田
 「えーうるさいって、そんなこと言われても一人だけって申請してるんだけど……そんなに直ぐじゃ連続で通らないよ…………ん?」


 指を動かしながら何かを確認していた神田であったが、突然固まって結衣の方を見る。


 神田
 「え、うっそぉー……あの状態でまぁだ生きてるのー中院さん……どれだけしぶといの…………」


 その言葉に生徒たち全員の目線が結衣の方に行き、憐れむような表情をしていた。


 桐ケ谷 海斗
 「フゥゥ……フゥウ……じゃ交代すりゃいいだろ!!」


 桐ケ谷は目線を後ろの結衣に向けながら叫び、彼の全身から出てると勘違いするほどの湯気が。いや……勘違いではなく出ていた。


 神田
 「でもあれじゃ助けても直ぐに死んじゃうでしょー」


 ムーア
 「いや、先生助けましょう。直ぐに申請は無理なら交代するしかないですよね?」


 ムーアが後ろから神田を後押しするように提案する。


 神田
 「えー、正直なところ桐ケ谷君が許可無しで殺したところで私にとってマイナスにもプラスにもならないから交代しなくてもいいかなーって……」


 そこまで言うと神田は顎に手をあて、考えた後に空中に向かってタップをしてから後ろを振り向きムーアに何かを問いかけた。


 神田
 「――――――――――」


 神田が何を喋ったかは分からない。だがそれを聞いたムーアは驚いた顔をする。


 ムーア
 「――――」


 そして少し間を空けムーアは口を動かす。だがその音も消音されていたのか聴こえない。恐らく周りの生徒も聴こえてはいないだろう。


 神田
 「っふ、そっか……じゃしょうがないね、交代してあげるよ……」


 ムーアの返事を聞いたからなのか頬を緩ませる神田。そしてそのまま神田がタップをすると、どこからともなく+マークが入った数台の赤いドローンが結衣の上空に止まり、下方の方からアームが飛び出して結衣の手足や胴体を挟み、そのままどこかに連れ去っていった。


 ……ムーアは一体何を答えたんだ? だがまぁ、結衣はこれで既に出血や破損した臓器は一通り塞ぎ終わっているから死ぬ心配はないだろう。


 あとの問題は目の前に全身から白煙を発しながら炎が燃え上がっている桐ケ谷だけだ……

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