何で死ぬのに生きてるのですか〜ネズミに転生した最強闇魔法使い、銀髪の少女のペットになる〜

にくまも

18.お前が悪い





 空は黒雲に覆われ雨音が全ての音をかき消す中、黒須と結衣は上空の傘ドローンで濡れずにコロシアムの中央に立っていた。何も置かれず草もないだだっ広い地面は濡れ、ところどころに水たまりができていた。その周りの観客席には屋根があり、クラスの生徒たちはそこの席に座り観戦していた。
 これでどっちかが死ねば乗っ取れるかとも思ったがみんなが見ている手前、これでは死んでから動き始めるわけにもいかない。


 神田先生
 「はい、じゃ中院さんも黒須さんも大丈夫? その中では何をしてもいいし、武器は好きに使ってもいい。誰かが死んだら終わりのルール、今回は桐ケ谷くんの申請で中には武器はないルールだけどね……分かった?」


 神田が観客席から陽気そうな声でルールを説明するが黒須と結衣は声を出すことはなかった。黒須はこちらを見て笑っており、結衣は立っているのがやっとのようで時々転びそうになっていた。
 素手や魔法で戦う感じか。神田の隣に座っていた桐ケ谷を見ると脚を組みながら詰まらなそうな表情でこちらを見ていた。


 神田先生
 「返事がないなら分かったってことだよね……じゃあ始めっ!」


 神田が陽気な声でそう言い手を叩いた。


 黒須
 「――」


 黒須が開始の合図とともにこちらに向かってかけ走ってくる。だが結衣は微動だにしない。いやもう動く体力すらないのか……結衣はここで死ぬことになるだろう。


 私は上を向き結衣の表情を見る。


 中院 結衣
 「…………ご、ごめん……ね」


 瞳から涙があふれ私の上に落ちてくる。彼女は腕の中にいる私を見つめて謝罪をべ泣いていた。迫りくる黒須に目も向けないで。……一体何を謝っているんだ? そう思っている間にすでに黒須は目の前まで近づいていた。


 黒須
 「何謝ってるんだよ……お前のせいだからな……お前のせいで俺までこんなことに巻き込まれたんだ」


 中院 結衣
 「……本当にごめんね」


 黒須が顔を歪ませ結衣の既に赤くはれた顔を殴った。結衣は倒れ、私も手から転げ落ちて雨が当たる中、毛が泥水まみれになった。


 ――胸の奥に熱がおびる感覚を覚える……私はこれを知らない。


 まるで胸に小さい異物を入れられているような感覚……だけれど全く不愉快ではない。


 理由はなんだ? 結衣が死んでも黒須が死んでもどちらを想像してもこの感情は増減しないように思える。


 ――分からない。


 黒須
 「……今更か」


 倒れこんだ結衣の頭を泥水で汚れた靴底で踏みつけ、当然結衣の顔は濡れた地面に擦られる。すでに彼女の綺麗な銀髪は泥に汚れ見る影もなかった。


 中院 結衣
 「――」


 踏みつけられている結衣の目線は私を見つけると安堵の表情を浮かべた。


 黒須
 「ん?……お前どこみてんだ……よ」


 黒須は目線の先にいる私を見て歪んだ表情がさらに目を見開き崩れる。


 黒須
 「お前……そうか……お前、今まで俺にじゃなくて鼠に謝ってたのか――ッ馬鹿にしやがって! くそがくそがくそがくそが! くそがぁ!」


 自分の髪の毛を両手でかき乱しながら結衣の頭を何度も何度も何度も泥で汚れた地面に踏みつける。そのたびに泥を含んだ雨水が周囲に飛び散り二人の服が汚れていく。


 黒須
 「そうだよ……お前だけじゃなくて鼠も生きてなかったら俺がこんなことになるわけなかったんだ。も悪いよなぁー」


 黒須が私を見ながらローブの内ポケットに手を入れる。そこから取り出したのは銀色に輝くナイフだった。そのまま黒須は結衣から離れ私の目の前まで来てナイフを振りかざし、私めがけて降り下ろした。


 中院 結衣
 「――ッ」


  私は瞬時に避けようとしたがその前に黒いものが覆いかぶさった。それは全身泥だらけで顔も体もボロボロで歩くことすらままならなかった結衣だった。


 「ッぁ――ッゴ」


 彼女の口からは血が溢れ、私に垂れてくる。


 「ハハハハハハッハハ、そんなに大事か! そうかそうか!」


 結衣の体が何度も揺れ動く、黒須が何回も何回も刺しているのだろう。だが結衣の表情は陰りも見えない笑顔だった。


 ――笑顔だったんだ。

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