有名野球エリートが甲子園常連校に入学し、血の滲む努力で仲間を引っ張る話

かじ

3

いちにっ!いちにっさんしい!!!
いちにっ!いちにっさんしい!!!
いちにっ!いちにっさんしい!!!




新入部員たちは、とてつもない上級生たちの走る速さに全くついていけていなかった。1人の男を除いて。





おいっちに!さんしい!!!!!
おいっちに!さんしい!!!!!
おいっちに!さんしい!!!!!






金串は、上級生をも凌ぐペースで、ぐいぐいと声を張り上げる。その様子は上級生と比べても遜色ないどころか、彼らを凌駕する勢いであった。










「おい!どうした1年ども!そんなんじゃこの先やっていけないぞ!!!もっとしゃんとしろ!」






安室高校の広い野球部グラウンド一帯に、御木本の怒号が響き渡る。まさか入部初日、いや、入部届けすら出さないうちからこれほどまでに本格的にトレーニングに参加させられるとは、
金串の様な意識の高い人間には思いもつかなかったことだろう。







いちに!いちに、いちにいち.......




新入部員たちの掛け声も、蚊の鳴くようなものになる。やがてそのうちの1人が、息をゼエハアと吐きながら喋り出した。









「はぁ、はぁ、はぁ、お、おい、見ろよ、金串のやつ、ひ、1人だけ先輩たちに負けてないぜ」








「はぁ、はぁ、す、すげえな、バ、バケモンかよ、、あ、いつ、1年目からレギュラー、とれるんじゃねえ?」







喋り出すと呼吸のリズムが狂い、一度狂った歯車は連鎖的に破綻し、新入部員はバタバタとその場に倒れた。









「おい!もうギブアップか?野球エリートが、聞いて呆れるぜ!」






上級生たちは、一切呼吸を乱していないどころか、むしろ涼しい顔をしていた。その中に金串の姿があることも、他の新入部員にとっては衝撃的な事実と言わざるを得なかった。


これまで、野球に関しては何の挫折も味わったことのなかった自分たちが、たかだかランニングの段階でこんなにもつまづいているという現実が受け入れられず、ただただ呆然とするばかりであった。


そんな新入部員たちの様子など気にもかけず、再び御木本は声を張り上げる。







「おい!!!1年ども!!!立て!!挨拶だ!」







新入部員たちは訳もわからずふらふらとたちあがった。










「気をつけ!!!!!」






「レイ!!!!!」








上級生たちは一斉にお辞儀をする。その様子はまるで、何処かの国の国防軍のようだ。そんな先輩たちの見よう見まねで、新入部員もお辞儀をする。顔を上げると、その先には1人の中年男性が立っていた。

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