Over the time ~時を見る~

薪槻暁

Introduction ~over season~

 それからの俺と佐藤との関係は未だに一週間に一度は密会を開くだけとなった。


 学校での会話は殆んど皆無に等しく、廊下で鉢合わせしても他人の振りを成り済ました。


 そんな態度を取り続けたものだからいつしか俺と佐藤が付き合っているのではないかというあらぬ噂も知らないうちに消えていった。








「おーい、聞いてるのー」




 目の前に座る彼女――佐藤瀬名のとりとめもない世間話に、正直飽きかけていたので半年前の過去を回想していた。


「聞いてるよ」


 季節は文化祭の秋から一つ飛ばして新学期を迎えた春。




 俺たちは進級し高校二年となった。




 斎藤の事故の件があった後は、何事もなくただ平穏な高校生活を送った。




「絶対聞いてないでしょ!態度で分かるもん」


 あれからの彼女はというと、性格の明るさは日を経るにつれて加速度的に高まった。


「態度ってなんだよ。いつもこんな感じだろ」


 対する俺も週に一度女性と会話する機会を得たことが功を成したのか大分話しやすくなったように思う。




「違うね。私には分かるもん」




 端から見たら、完璧に付き合っているように見られて当たり前のような場景である。




「そうかい、そうかい」


 まあ、付き合うという概念そのものが未だに理解できていない俺はただの友人関係として見ているわけで。




「なあ、明日二人で遠出しないか」




 二人で行くことが問題であるのに気づかないことが、その証明である。


「ふ、二人で?斎藤君とかは連れていかないの?」


 俺は少々、うんざりしたような顔を浮かべ、


「あいつは土曜もゲーム三昧だってよ」


 彼女には珍しい、赤面した顔を浮かべていたが、


「そういうことね……」


 俺と同じ呆れた表情に移り、納得したようだった。






 

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