Over the time ~時を見る~
Changing the time
教室を後にした俺は自宅へと直行しベッドに横たわった。
そして普段通り意識を集中させないように深い眠りへと落ちていった。
「疲れた……もう明日か」
目覚めた世界は聞き覚えのある声が聞こえる場所だった。
「文化祭で女子と二人でいるところなんか見られたらどうなるのやら。特に斎藤は」
現在時刻及び日付はすぐに理解できた。これは文化祭の前日、喫茶店から帰った後の世界だ。
いや、待てよ。確か斎藤が事故に巻き込まれたのは16:00のはずだ。辺りを見回し時計を探す。
頻繁に使用する目覚まし時計の針を確認した。
――17:00――
背中に悪寒が走り思考が一旦停止する。
「間に合わなかった……」
時を変えることが出来てもそれは完全なものではないんだ。
時間をコントロールする、その実践的な方法を理解していなかったとようやく気づいたのである。
徐々に意識が覚醒していくのが分かる。現実世界に戻ってきたのだろう。
「あいつは変わらずじまいなんだろうな……」
時を変えようとしたのはこれで二度目だったが、トリガーを見つけられてもそれをコントロール出来ない。まさに八方塞がりだった。
翌日、普段と同じように登校したが予想通り、斎藤の席には誰もいなかった。
「斎藤君、助けられなかったの……?」
俺と佐藤だけしか聞こえないようにするため、教室棟がある反対側の棟で話し合った。ここは滅多に通行人が現れないのだ。
「悪い。出来なかった」
「そう……」
「だが、これからも時間を変えられるように努力する」
彼女は目線を下部にそらしたままだったがそのまま頷いた。
そして俺の方はというと、この事件が起こった当初から抱いていた疑問を口にする。
「今更でなんだけどさ。なんで君は俺が時間を変えられるような非現実的な事を信じられるんだ」
彼女ははっとした表情を浮かべた後、顔を斜めに傾けて言った。
「なんで信じられるかって言われると、そんな理由なんてないよ。ただ君が斎藤君を助けようと必死だから君はきっと助けられるんだろうなって思うだけなの」
「私はなにもできないから。出来るのは君しかいないからね」
出来るのは俺しかいない、だから彼女は成功することを願う。なんて出来た話だろう。まるでお伽噺の世界だ。
「そう考えてくれただけでも嬉しいよ。任せてくれ」
世界を救う英雄が口にする言葉を吐く。なんて俺らしくないのだろう。
だが、そんな事を言っている暇なんてない。実行できるのは俺だけなのだから。
今日も最後の授業が終わることを示す鐘の音が鳴り響き、礼を終えそのまま机に突っ伏す。
いくら考えても一定の時刻に戻るという方法が分からない。
――よーし今日も終わりだ。明日もくれぐれも遅刻するんじゃないぞ――
どこからか担任の声が聞こえたがその声は意識とともに遠ざかっていく。
ある方向からは台詞を暗唱しているのか何度も繰り返し同じ言葉を、向こうの方からは高揚しているのだろうか何やら騒がしい。
ここは教室だった。しかも普段なら生徒だけで騒がしくなる学校特有の騒がしさではない。まるで宴の前夜祭のような雰囲気だった。
どこからか聞き覚えのある口調が聞こえる。
「な、なに!俺との約束を守れないだと!まさか……女か」
そう。まさにあの時誤解されると心配した瞬間であった。
この世界は文化祭前日。
過去に戻って真っ先に教室の時計の針を確認する。
――15:00――
ようやく間に合った。
ふと何か思いついたかのように今までの自分の行動を時間軸とともに統計していく。
確か現実世界の俺は……
やっと気づけた。なぜこんな簡単なことを理解できなかったのか不思議に思う。
要は、寝ている時刻=別世界にいる時刻 ということだ。
つまり、今寝ている現実世界はちょうど15:00だ。授業が終わるのも14:50なので合点がいく。
とここで思考するのを止め、現状を確認する。
「残り一時間か」
対する斎藤はまさに今、旧友である俺に断られたようで孤独に浸りながら呟いていた。
「分かったよ……」
内心悪いと謝りながらも教室を後にし、急いで彼――斎藤が行くであろう本屋まで先回りすることにした。
そして普段通り意識を集中させないように深い眠りへと落ちていった。
「疲れた……もう明日か」
目覚めた世界は聞き覚えのある声が聞こえる場所だった。
「文化祭で女子と二人でいるところなんか見られたらどうなるのやら。特に斎藤は」
現在時刻及び日付はすぐに理解できた。これは文化祭の前日、喫茶店から帰った後の世界だ。
いや、待てよ。確か斎藤が事故に巻き込まれたのは16:00のはずだ。辺りを見回し時計を探す。
頻繁に使用する目覚まし時計の針を確認した。
――17:00――
背中に悪寒が走り思考が一旦停止する。
「間に合わなかった……」
時を変えることが出来てもそれは完全なものではないんだ。
時間をコントロールする、その実践的な方法を理解していなかったとようやく気づいたのである。
徐々に意識が覚醒していくのが分かる。現実世界に戻ってきたのだろう。
「あいつは変わらずじまいなんだろうな……」
時を変えようとしたのはこれで二度目だったが、トリガーを見つけられてもそれをコントロール出来ない。まさに八方塞がりだった。
翌日、普段と同じように登校したが予想通り、斎藤の席には誰もいなかった。
「斎藤君、助けられなかったの……?」
俺と佐藤だけしか聞こえないようにするため、教室棟がある反対側の棟で話し合った。ここは滅多に通行人が現れないのだ。
「悪い。出来なかった」
「そう……」
「だが、これからも時間を変えられるように努力する」
彼女は目線を下部にそらしたままだったがそのまま頷いた。
そして俺の方はというと、この事件が起こった当初から抱いていた疑問を口にする。
「今更でなんだけどさ。なんで君は俺が時間を変えられるような非現実的な事を信じられるんだ」
彼女ははっとした表情を浮かべた後、顔を斜めに傾けて言った。
「なんで信じられるかって言われると、そんな理由なんてないよ。ただ君が斎藤君を助けようと必死だから君はきっと助けられるんだろうなって思うだけなの」
「私はなにもできないから。出来るのは君しかいないからね」
出来るのは俺しかいない、だから彼女は成功することを願う。なんて出来た話だろう。まるでお伽噺の世界だ。
「そう考えてくれただけでも嬉しいよ。任せてくれ」
世界を救う英雄が口にする言葉を吐く。なんて俺らしくないのだろう。
だが、そんな事を言っている暇なんてない。実行できるのは俺だけなのだから。
今日も最後の授業が終わることを示す鐘の音が鳴り響き、礼を終えそのまま机に突っ伏す。
いくら考えても一定の時刻に戻るという方法が分からない。
――よーし今日も終わりだ。明日もくれぐれも遅刻するんじゃないぞ――
どこからか担任の声が聞こえたがその声は意識とともに遠ざかっていく。
ある方向からは台詞を暗唱しているのか何度も繰り返し同じ言葉を、向こうの方からは高揚しているのだろうか何やら騒がしい。
ここは教室だった。しかも普段なら生徒だけで騒がしくなる学校特有の騒がしさではない。まるで宴の前夜祭のような雰囲気だった。
どこからか聞き覚えのある口調が聞こえる。
「な、なに!俺との約束を守れないだと!まさか……女か」
そう。まさにあの時誤解されると心配した瞬間であった。
この世界は文化祭前日。
過去に戻って真っ先に教室の時計の針を確認する。
――15:00――
ようやく間に合った。
ふと何か思いついたかのように今までの自分の行動を時間軸とともに統計していく。
確か現実世界の俺は……
やっと気づけた。なぜこんな簡単なことを理解できなかったのか不思議に思う。
要は、寝ている時刻=別世界にいる時刻 ということだ。
つまり、今寝ている現実世界はちょうど15:00だ。授業が終わるのも14:50なので合点がいく。
とここで思考するのを止め、現状を確認する。
「残り一時間か」
対する斎藤はまさに今、旧友である俺に断られたようで孤独に浸りながら呟いていた。
「分かったよ……」
内心悪いと謝りながらも教室を後にし、急いで彼――斎藤が行くであろう本屋まで先回りすることにした。
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