Over the time ~時を見る~
The girl and the he
一定のリズムで動く上半身と微動だにしない下半身。その隣で甲高い音を立てながら生存していることを知らせる器具。
俺は今、学校からもっとも近い場所に位置する大学病院の病室にいる。
ベッドに横たわっているのは旧友である彼――斎藤優人である。
「お前……何してんだよ……」
事故は昨日、文化祭前日に彼女と約束をした日に起こった。
俺と学校で別れた後、斎藤は最寄りの本屋へと訪れた。そこまでは良かった。
だが本屋から自宅へと向かう途中、大型トラックが彼に向かって突っ込んできたらしい。怪我の状況はというと一命はとりとめたというものの、全身骨折に加え意識不明だった。
「もしかしたら……」
部外者である俺にも医師からそう告げられたのが事の重大さを物語っていた。
医者でもない俺は何も出来ることはなくそのまま病院を出て登下校用の鞄を取りに学校へと戻る。
もう太陽が水平線に引き連り込まれようとしている。
学校側はというと彼の事態を把握したらしいが大事にしたくはないようで機密事項にしていた。勿論、彼の欠席理由はただの風邪と処理されていた。
そんな中、なぜ俺がこの事態を知っていたかというと彼女――佐藤瀬名が情報提供してくれたお陰だった。
「斎藤君が交通事故にあったらしいよ。先生には都合が良いように言っておくから早く病室にいってきなよ」
彼女との約束を見事に破ってしまったのは辛いが、友人を失う方がよっぽど辛い。それが本音と言えば本音だった。
学校に戻った頃には文化祭も片付けが終わった頃らしく、ぞろぞろと自分達の帰途に向かう生徒ばかりだった。
制服のまま学校外へ出たからか、難なく校門から入り込み、なるべく人気がないルートで教室に向かう。
教室のドアを開こうとした途端、手を引っ込めた。
閑静とした静けさの中、人の気配がする。
廊下と教室の狭間に位置する小窓から中を覗こうとしたときだった。
「沢田君、気づいてるよ」
声の主は彼女――佐藤瀬名だった。警戒体制をほどき硬直していた体にリラックスするよう命令する。
「なんだ。残ってたのか」
「当たり前じゃない、私から提案しておいて君が戻ってくる前に帰るなんて失礼ってもんでしょ」
教室には俺の机上に鞄、その右隣の席に彼女がいるのみだった。
「ああ、気遣わせて悪いな」
「そんなの構わないけど、君は彼を助けようとはしないの?」
「……?どういうことだ、俺は医者でもなんでもないぞ」
戸惑いながらも自分が置かれている状況を確認する。時を変えることは可能だ。だがそれはあいつにしか教えてないはずだ。
「私、斎藤君と話してたときに聞いたんだ。君は時間を操れるって」
俺の知らぬ間に佐藤と斎藤に繋がりがあったことに驚きがあったが、それよりもこの秘密が拡散されていることに危機感を覚えた。
今、俺のこの特殊な状況に置かれていることを他人に知られたら、他でもない俺やその関係者まで危険な状況へと脅かされる危険性があるからだ。
「まて。それを俺と斎藤以外に話したか」
「大丈夫、安心して。それは断じて無いと誓うよ」
「よし、ならいい。……そうだ、俺は時が見える」
彼女は俺の説明なんて興味がないと言いたげな表情だった。
「なら早く助けてあげなよ。君しか出来ないんだよ」
無言で返事した俺はそのまま教室を後にした。
俺は今、学校からもっとも近い場所に位置する大学病院の病室にいる。
ベッドに横たわっているのは旧友である彼――斎藤優人である。
「お前……何してんだよ……」
事故は昨日、文化祭前日に彼女と約束をした日に起こった。
俺と学校で別れた後、斎藤は最寄りの本屋へと訪れた。そこまでは良かった。
だが本屋から自宅へと向かう途中、大型トラックが彼に向かって突っ込んできたらしい。怪我の状況はというと一命はとりとめたというものの、全身骨折に加え意識不明だった。
「もしかしたら……」
部外者である俺にも医師からそう告げられたのが事の重大さを物語っていた。
医者でもない俺は何も出来ることはなくそのまま病院を出て登下校用の鞄を取りに学校へと戻る。
もう太陽が水平線に引き連り込まれようとしている。
学校側はというと彼の事態を把握したらしいが大事にしたくはないようで機密事項にしていた。勿論、彼の欠席理由はただの風邪と処理されていた。
そんな中、なぜ俺がこの事態を知っていたかというと彼女――佐藤瀬名が情報提供してくれたお陰だった。
「斎藤君が交通事故にあったらしいよ。先生には都合が良いように言っておくから早く病室にいってきなよ」
彼女との約束を見事に破ってしまったのは辛いが、友人を失う方がよっぽど辛い。それが本音と言えば本音だった。
学校に戻った頃には文化祭も片付けが終わった頃らしく、ぞろぞろと自分達の帰途に向かう生徒ばかりだった。
制服のまま学校外へ出たからか、難なく校門から入り込み、なるべく人気がないルートで教室に向かう。
教室のドアを開こうとした途端、手を引っ込めた。
閑静とした静けさの中、人の気配がする。
廊下と教室の狭間に位置する小窓から中を覗こうとしたときだった。
「沢田君、気づいてるよ」
声の主は彼女――佐藤瀬名だった。警戒体制をほどき硬直していた体にリラックスするよう命令する。
「なんだ。残ってたのか」
「当たり前じゃない、私から提案しておいて君が戻ってくる前に帰るなんて失礼ってもんでしょ」
教室には俺の机上に鞄、その右隣の席に彼女がいるのみだった。
「ああ、気遣わせて悪いな」
「そんなの構わないけど、君は彼を助けようとはしないの?」
「……?どういうことだ、俺は医者でもなんでもないぞ」
戸惑いながらも自分が置かれている状況を確認する。時を変えることは可能だ。だがそれはあいつにしか教えてないはずだ。
「私、斎藤君と話してたときに聞いたんだ。君は時間を操れるって」
俺の知らぬ間に佐藤と斎藤に繋がりがあったことに驚きがあったが、それよりもこの秘密が拡散されていることに危機感を覚えた。
今、俺のこの特殊な状況に置かれていることを他人に知られたら、他でもない俺やその関係者まで危険な状況へと脅かされる危険性があるからだ。
「まて。それを俺と斎藤以外に話したか」
「大丈夫、安心して。それは断じて無いと誓うよ」
「よし、ならいい。……そうだ、俺は時が見える」
彼女は俺の説明なんて興味がないと言いたげな表情だった。
「なら早く助けてあげなよ。君しか出来ないんだよ」
無言で返事した俺はそのまま教室を後にした。
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