Over the time ~時を見る~
The girl and The time ~meet~
文化を嗜む季節とも呼ばれる秋の真っ只中……
彼女――佐藤瀬名が転入してきた。
佐藤は隣町から引越して来たらしい。だが肝心な引越理由が曖昧だったので詳しく聞きたかったが、転入してきて早々、他人を詮索するのは無礼なようなので聞かないことにした。
まず、第一この学校に来たことよりもあの日の詳細を聞きたい。
それが本音だった。
そう思考しているうちに今日もSHRが始まる前に斎藤が話しかけてくる。もう日課のようなものだ。
「佐藤さんって気の毒だよな、何でこんな時期に来ちゃったんだろ」
クラスの大半が転入生の話題で盛り上がり、当の本人の周りにも女子が囲んでいる。
「知らねーよ、俺が詳しいわけないだろ」
本当に彼女のことは何も知らないのでそう言うしかない。
だからとりあえず知っている事だけを話す。
「でもこの時期に転入とは運が悪いというか良いって言えばいいのか」
この時期――秋が終わりそうな季節。一週間後には学生が待ちに待ったとひしめき合う大イベント。文化祭の時期である。
「そういやそうだったな!俺は忘れてたよ」
かくいう右隣に立つこの斎藤という奴は液晶の向こう側の世界が中心で関係ないようだ。
だがそんな会話も日常的準備運動のようでもあるので触れずに放っておく。
文化祭――俺にも全く関係ないイベントだ。現実において充実に生きている輩にはさぞ楽しい楽しいパーティーだろうなとふと思う。一応言っておくが妬んでいるわけではない…………
しかし二次元に執着しているというキャラがクラス内に撒き散らされてしまった以上なんとかなるとも思えないので文化祭について考えるのはやめた。
「佐藤さんって静かな人かなって思ったけど案外明るそうな人だよな」
斎藤の言葉に一瞬、彼女――佐藤瀬名の顔が脳裏に過る。
転入初日の彼女の姿はなんだかおどおどしているというか、控えめな人だったのが印象的だった。
「そうだな」
しかし今の彼女はというとクラスに馴染んだせいなのか。おどおどしているのは変わらないが小動物のような無邪気らしさが見えるような人になっていた。
「この際話しかけてみろよ。ほら今一人になったところだしさ」
そうは言っても彼女と話したことは一度もなかった。見たことはあってもそれは遭遇しただけで接点はないのだ。しかも勿体ないことにこの世界の彼女でもない。そう、俺が見た彼女は人身事故の被害者となり死んでしまっている。
「そうはいってもよ、わざわざ話しかけにいったら気があるって思われるんじゃないか?」
恋愛経験ゼロの俺は正直に答えたが斎藤はそんな考え方を却下した。
「あーーあーーでたでた、恋が出来ない人の言葉ランキング上位を争う言葉だよ、それ」
「でもお前、恋愛経験ゼロじゃん」
「そんなことはない!俺だって彼女がいた時期はあったぞ」
「どうせ液晶中の二次元彼女だろ」
「そうだ‼」
そこまで二次元彼女しかいないと発言させるとこっちが辛くなる。
同時にSHRを開始するチャイムが鳴り響き朝の談話はこれにて閉幕となった。
「やっと終わった……」
午前授業4時間目を終え50分という最後の試練を乗り越えた俺は机に突っ伏した姿勢で独りごちた。
昼休みには斎藤と今朝の談話の延長戦を行うのが通例。今頃俺の右隣の席に陣取って「沢田」と呼び掛けてくるのだろう。
足音が聞こえる。
やっぱり来たなと内心呟き、あからさまに今起床しましたと思わせ振りに体を起こす。
「沢田時斗くん?」
俺に話しかけてきたのは彼女――佐藤瀬名だった。
彼女――佐藤瀬名が転入してきた。
佐藤は隣町から引越して来たらしい。だが肝心な引越理由が曖昧だったので詳しく聞きたかったが、転入してきて早々、他人を詮索するのは無礼なようなので聞かないことにした。
まず、第一この学校に来たことよりもあの日の詳細を聞きたい。
それが本音だった。
そう思考しているうちに今日もSHRが始まる前に斎藤が話しかけてくる。もう日課のようなものだ。
「佐藤さんって気の毒だよな、何でこんな時期に来ちゃったんだろ」
クラスの大半が転入生の話題で盛り上がり、当の本人の周りにも女子が囲んでいる。
「知らねーよ、俺が詳しいわけないだろ」
本当に彼女のことは何も知らないのでそう言うしかない。
だからとりあえず知っている事だけを話す。
「でもこの時期に転入とは運が悪いというか良いって言えばいいのか」
この時期――秋が終わりそうな季節。一週間後には学生が待ちに待ったとひしめき合う大イベント。文化祭の時期である。
「そういやそうだったな!俺は忘れてたよ」
かくいう右隣に立つこの斎藤という奴は液晶の向こう側の世界が中心で関係ないようだ。
だがそんな会話も日常的準備運動のようでもあるので触れずに放っておく。
文化祭――俺にも全く関係ないイベントだ。現実において充実に生きている輩にはさぞ楽しい楽しいパーティーだろうなとふと思う。一応言っておくが妬んでいるわけではない…………
しかし二次元に執着しているというキャラがクラス内に撒き散らされてしまった以上なんとかなるとも思えないので文化祭について考えるのはやめた。
「佐藤さんって静かな人かなって思ったけど案外明るそうな人だよな」
斎藤の言葉に一瞬、彼女――佐藤瀬名の顔が脳裏に過る。
転入初日の彼女の姿はなんだかおどおどしているというか、控えめな人だったのが印象的だった。
「そうだな」
しかし今の彼女はというとクラスに馴染んだせいなのか。おどおどしているのは変わらないが小動物のような無邪気らしさが見えるような人になっていた。
「この際話しかけてみろよ。ほら今一人になったところだしさ」
そうは言っても彼女と話したことは一度もなかった。見たことはあってもそれは遭遇しただけで接点はないのだ。しかも勿体ないことにこの世界の彼女でもない。そう、俺が見た彼女は人身事故の被害者となり死んでしまっている。
「そうはいってもよ、わざわざ話しかけにいったら気があるって思われるんじゃないか?」
恋愛経験ゼロの俺は正直に答えたが斎藤はそんな考え方を却下した。
「あーーあーーでたでた、恋が出来ない人の言葉ランキング上位を争う言葉だよ、それ」
「でもお前、恋愛経験ゼロじゃん」
「そんなことはない!俺だって彼女がいた時期はあったぞ」
「どうせ液晶中の二次元彼女だろ」
「そうだ‼」
そこまで二次元彼女しかいないと発言させるとこっちが辛くなる。
同時にSHRを開始するチャイムが鳴り響き朝の談話はこれにて閉幕となった。
「やっと終わった……」
午前授業4時間目を終え50分という最後の試練を乗り越えた俺は机に突っ伏した姿勢で独りごちた。
昼休みには斎藤と今朝の談話の延長戦を行うのが通例。今頃俺の右隣の席に陣取って「沢田」と呼び掛けてくるのだろう。
足音が聞こえる。
やっぱり来たなと内心呟き、あからさまに今起床しましたと思わせ振りに体を起こす。
「沢田時斗くん?」
俺に話しかけてきたのは彼女――佐藤瀬名だった。
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