Over the memory~時を巡る~
The class and me
無事に登校し終えた俺はクラスの風景に溶け込み、教室の隅にひっそりと座っている。
三年生になった今では、去年時のクラスメイト大半と同じクラスになった。
その中には案の定、斎藤、佐藤と去年重大な案件を抱えた人たちもいたわけであって。
さらに、佐藤瀬名という人物はクラスの中心的なメンバーの一人である。
とどのつまり、もうお分かりだろうが……
俺に対する男子クラスメイトの目が痛い。
それも仕方が無いと言うしかない。
何せ影が薄い、要するに印象的なものが皆無な俺が彼女と付き合っていることにクラスの大半が納得していないのである。
しかも……
「おつ、さわだーー、登校して早々帰りたいって顔してやがるなーー」
「昨日もどこか出掛けたりしたのか?」
満面の笑みで語りかけるのはさっきまで一緒に登校していた彼――斎藤優人である。
教室中に響き渡るくらいの大きさの声なので、
「っばか……!声がでけーよ」
さすがに声のボリュームを下げるようにした。
結局のところ、俺と彼女との関係をクラスの大部分が知ってしまったのはこれが元凶なのだろう。
秘密厳守という言葉を知らない彼は、俺との幾度とない会話で徐々に噂話として流れさせたのだ。
「っで、今日はどうするんだ?」
自分のことをまさか考察されているとは知らず、今では通例の質問をしてきた。
そう、今となっては放課後に彼と帰宅するのか、それとも彼女との談話を愉しむのか朝に決めることにしていた。
とはいっても、事前に彼女とは話をつけているので俺が勝手に日程を決めているのではない。
「ああ、今日は……っと悪い、帰れそうにない」
携帯のスケジュールを片手に確認しながら答えると、
「オッケー、オッケー、じゃあ俺は先に帰るとするよ」
彼は自分の席に戻ろうとしながらそう言った。
だが、姿勢を前に向けながら、後ろ歩きで俺の席に戻り、
「上手くやれよ……」
不気味な笑みのまま俺の耳元で囁き、小走りで自分の席に戻っていった。
変わらぬ佇まい、風貌。大通りを面する場所に立地している飲食店。
ここは彼女との隠れ会談が開催される重要な場所でもある。
今日一日の授業を終え、放課後に部活動をせずに立ち寄ったここは窓から歩道橋が覗ける喫茶店。
俺と彼女は別々にそれぞれ異なるタイミングで入店し、落ち合ったのである。
「っで今日は何か特別なことあったの?」
毎日のように話し合う仲にまで発展した俺と彼女の関係は、無論互いの会話のネタが尽きてしまい結局のところ、今の現状について話すことが多い。
「今日?なんかあったかな……」
が、ただこれといって特別な話題があるわけでもないのですぐに会話が途切れてしまう。
俺はそれを防ぐために、たわいもないと感じているが仕方なく話すことにした。
「そうだな、今日は斎藤と登校したんだっけな」
頬杖をつきながら、いかにも興味がないような雰囲気を醸し出す。
「ふーん、そうだね。今日は珍しく余裕を持って学校に来てたもんね」
あまりにもつまらない、いやむしろ不機嫌のような気がしたので少し強めに反論してしまった。
「なんだよ、それじゃ俺がいつも遅刻しているような言い方じゃないか」
ところが……
「まあ、そうだね」
俺の言葉をひらりとかわし、今度は窓の向こう側に目線をずらした。
対する俺は気を取り直すために、注文したコーヒーを口にする。
すると、彼女の顔はさっきまでのつまらなそうな表情を崩し、
「ねえ、こっち見て」
目線をずらしていた方向に俺も視線を合わせる。すると、窓の向こう側に佇む一人の男と目が合った。
「なんであいつがいるんだよ……」
俺と彼女が話している喫茶店を外から眺めている人物。
それは、彼の斎藤優人だった。
三年生になった今では、去年時のクラスメイト大半と同じクラスになった。
その中には案の定、斎藤、佐藤と去年重大な案件を抱えた人たちもいたわけであって。
さらに、佐藤瀬名という人物はクラスの中心的なメンバーの一人である。
とどのつまり、もうお分かりだろうが……
俺に対する男子クラスメイトの目が痛い。
それも仕方が無いと言うしかない。
何せ影が薄い、要するに印象的なものが皆無な俺が彼女と付き合っていることにクラスの大半が納得していないのである。
しかも……
「おつ、さわだーー、登校して早々帰りたいって顔してやがるなーー」
「昨日もどこか出掛けたりしたのか?」
満面の笑みで語りかけるのはさっきまで一緒に登校していた彼――斎藤優人である。
教室中に響き渡るくらいの大きさの声なので、
「っばか……!声がでけーよ」
さすがに声のボリュームを下げるようにした。
結局のところ、俺と彼女との関係をクラスの大部分が知ってしまったのはこれが元凶なのだろう。
秘密厳守という言葉を知らない彼は、俺との幾度とない会話で徐々に噂話として流れさせたのだ。
「っで、今日はどうするんだ?」
自分のことをまさか考察されているとは知らず、今では通例の質問をしてきた。
そう、今となっては放課後に彼と帰宅するのか、それとも彼女との談話を愉しむのか朝に決めることにしていた。
とはいっても、事前に彼女とは話をつけているので俺が勝手に日程を決めているのではない。
「ああ、今日は……っと悪い、帰れそうにない」
携帯のスケジュールを片手に確認しながら答えると、
「オッケー、オッケー、じゃあ俺は先に帰るとするよ」
彼は自分の席に戻ろうとしながらそう言った。
だが、姿勢を前に向けながら、後ろ歩きで俺の席に戻り、
「上手くやれよ……」
不気味な笑みのまま俺の耳元で囁き、小走りで自分の席に戻っていった。
変わらぬ佇まい、風貌。大通りを面する場所に立地している飲食店。
ここは彼女との隠れ会談が開催される重要な場所でもある。
今日一日の授業を終え、放課後に部活動をせずに立ち寄ったここは窓から歩道橋が覗ける喫茶店。
俺と彼女は別々にそれぞれ異なるタイミングで入店し、落ち合ったのである。
「っで今日は何か特別なことあったの?」
毎日のように話し合う仲にまで発展した俺と彼女の関係は、無論互いの会話のネタが尽きてしまい結局のところ、今の現状について話すことが多い。
「今日?なんかあったかな……」
が、ただこれといって特別な話題があるわけでもないのですぐに会話が途切れてしまう。
俺はそれを防ぐために、たわいもないと感じているが仕方なく話すことにした。
「そうだな、今日は斎藤と登校したんだっけな」
頬杖をつきながら、いかにも興味がないような雰囲気を醸し出す。
「ふーん、そうだね。今日は珍しく余裕を持って学校に来てたもんね」
あまりにもつまらない、いやむしろ不機嫌のような気がしたので少し強めに反論してしまった。
「なんだよ、それじゃ俺がいつも遅刻しているような言い方じゃないか」
ところが……
「まあ、そうだね」
俺の言葉をひらりとかわし、今度は窓の向こう側に目線をずらした。
対する俺は気を取り直すために、注文したコーヒーを口にする。
すると、彼女の顔はさっきまでのつまらなそうな表情を崩し、
「ねえ、こっち見て」
目線をずらしていた方向に俺も視線を合わせる。すると、窓の向こう側に佇む一人の男と目が合った。
「なんであいつがいるんだよ……」
俺と彼女が話している喫茶店を外から眺めている人物。
それは、彼の斎藤優人だった。
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