まだ恋を知らない

ノベルバユーザー487306

ポンコツな秋本律

俺の名前は秋本律。だらだらしていた春休みも終わり、学校へ自転車を漕いで向かっている最中だ。
路地裏を通るときに、周りに人がいないことを確認すると、人と話す音量で独り言をかます、これだ!ワンツースリー
律「あー学校なーんていきたーくなーいよード◯えもーーーーん」
*この小説にはド◯えもんは一切登場しません。
校門に着くと、いつものめんどくさい先生たちが立っている。作り笑顔で大きな声で、「おはようございます!」と発声し、元気な子を演出する。いや、せざるを得ないのだ。少しでも、元気がない挨拶をすると、「しっかりと挨拶をしろ」と注意を受ける。それを避けるために毎朝、俺は3秒寸劇をする。自転車置き場に向かいながら、着いてしまった、と独り、ため息をする、靴箱にいき、とりあえず名前を探す。教室に行くと、数人かこちらを見てくる。
「うちのクラスヤリチンいるじゃん」、「やっべぇーヤリチンと俺の彼女同じクラスだわー」数人の声が聞こえる、、、
秘技ノイズキャンセルっ!!
ただ耳を塞ぐだけである。
ほとんどの者は俺のことなんか気にも留めてはいない。
海「おはよ律、2年も同じクラスだな!よ、ろ、し、く、な!!てかなんで耳抑えてんだ?」
律「なんか言った?」
海「トイレどこだっけって言ったんだよ」
律「あっち」
海「おーありがとって、知ってるわ!嘘に決まってんじゃーん、とりあえず、おはよ律!」
彼は俺と仲良くしてくれている天野 海斗。
律「おはよ海斗、新学期から元気だなーてか早くトイレにいっといれーよ」
海「だから嘘だよ!!しょーもねぇーギャグを挟むなよ」
海「それより律、お前、春休みの課題は終わらせたのか?」
律「終わるわけねぇーだろバーカ、あんなの終わらす気ねーよ、左手でプリントに名前書く挑戦だけして終わった。」
海「よっしゃー仲間がいてよかったー俺も終わらなかったんだよー、てか部活が忙しくて課題なんて、できねぇーつーの、左手で書いた名前綺麗だな」
律「あ、さっきのはカリビアンジョークだよ」
海「いや、どこのジョークだ」
律「あ、でも俺は春休みの自由研究やってきたけどな?」
海「そんなの初めて聞いたわ、春休みまであんのかよ、てか高校生で自由研究あんのかよ」
律「ふっふーバカめ自主的にやるからこそ意味があるんじゃろーがーー」
海「ちなみに何を研究したんだ」
律「あーただカルメ焼きを作った、あと茹で卵の茹で時間による、トロトロの具合をレポートにしてきた。しかも、いろんな業者の卵でやった」
海「俺も誘えよーーカルメ焼き!!うちの家はピヨピヨチュッチュ卵なんだけど、レポート見してくれ、ちなみに俺は茹で卵はカチカチ派だ」
律「一生茹でてろーバッキャロー」
冬「おいバカ2人!また課題終わらせてないの?ほんと阿呆ね」
彼女は鈴木冬華、海斗と同じく俺と1年の頃からクラスが同じで仲良くしてくれている。
海「鈴木たのむ!課題写させてくれねぇーか?」
冬「嫌よ、そんなの、やってきてないのが悪いんでしょ、課題やらずに学校に来れる度胸があるなら、もう正々堂々と怒られなさいよ」
海「いや違うんだよー前日までは余裕だったはずが、学校に着いてから、自分のしてしまった数々の罪の重さに気づいたんだよ」
冬「いや、天野は何もやってないのが罪なんだけど」
海「まじでたのむよー鈴木さーん、鈴木殿!鈴木様!顧問にバレたら、また長い説教、いやそれどころか、試合に出してもらえなくなるわーあー人生終わったー。秋本お前も課題終わってないんだろー鈴木様に一緒にお願いしよーぜ」
律「おねげぇーひやぁすーん」
冬「却下」
海「そんな頼み方があるか、馬鹿者めが!」
冬「天野はどの立場なんだ?」
律「俺はそもそも帰宅部で、お前みたいな問題もないから、課題なんてやらねぇーの」
冬「秋本は少しはやる気を出しなさいよ」
律「冗談はこれくらいにして、2人とも、俺と仲良くしてっとクラスで変な噂たてられるぞー」
海「そんなの知ったことか、律といると楽しいんだよ」
海「誰だって、いろんな問題抱えてるって、でも、一緒にいて楽しいなら、それでいいんじゃないのか?」
冬「私もそこは、バカに同意よ」
海「バカでも何でもいいから課題写させてくれよー鈴木さまー!」
2人ともありがとな、でも、俺は本当にクズなんだよなー。と心中でつぶやいた。

そして始業式が始まった。
席に座り、俺はずっと考えていた。
さっきの海斗の言葉は嬉しいが、俺は広まった噂を全否定することはできない。
そう俺は噂ほどではないがクズなんだと、ひとり肩をすくめた。

高1に遡る。
俺は子供の頃からサッカーをしていた。県内で毎年インターハイに出場する高校に入学した。そう、サッカーで高校を決めた。進学校だったので、入学するのは大変だった。そして、部活のメンバーはサッカーのクラブチームに入っていた者ばかりだったが、俺は田舎の中学校でサッカーをしていた。それでも俺は彼らよりもサッカーが上手かった。女子からも凄くモテた。とても可愛い彼女もできようとしていた。しかし、上のチームに上がるに連れて出る杭は打たれるかのように、先輩からも同級生からも虐めを受け始めたのだった。
それに耐えることができず、高校1年の夏にはサッカー部を辞め、帰宅部になっていた。退部後も虐めは続いた。ありもない噂を広められ、ヤリチンなどと噂が広まり、うまくっいっていた女の子も退部した途端、突然、話しかけても無視された。俺の学校の女子は、ただ有名なサッカー部に彼氏がいるというだけのブランドを求めていた。俺は知っていたが彼女のことを本当に好きだった。俺の好きな彼女は違うと思っていた。俺という存在を愛してくれていると思っていた。だからこそ俺は裏切られたような気持ちになり、女性が大嫌いになった。本当に嫌いになった。それが空回りをし、多少モテることを利用し、他校の女の子に声を掛けては勘違いをさせて、女の子をもてあそぶようなことをしていた。女の子に告白をされたら、次の子を探して、また告られたら、次の子というようなことを重ねていた。そう、端的にいうなれば、クズというものになっていたのだ。
高校1年の冬休みの頃には、全ての女性がそのような考えではないという初歩的な事にも気づき女遊びは辞めた。今となっては反省している。傷つけてしまった女の子はたくさんいる。俺はされて嫌だったことをしてしまった。この内容だけを聞くと犯罪者の供述のように聞こえる。
それほどのことを俺はしてしまっていた。
そして俺自信、恋も愛も何も分からなくなっていた。
その間も、人の女を奪っただの、無理矢理に肉体関係をもっただの、性病を持っているだの、ありもない噂は続いた。それにも関わらず、入学当初から、海斗と鈴木は俺と仲良くしてくれている。
2人に対する、ありがとうという気持ちが込み上がった。
そして恋とは何なのか、そもそも愛とは何なのか彼は迷走していた。いや、考えるとこすらも辞めていた。

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