Fランク冒険者なのに、最強すぎませんか❓ 世界最強の魔王は、自分をFランク冒険者だと思い込んでいる⁉️
5-4.団結
目を覚ました。
イキナリ太陽の光が目に跳びこんできた。咄嗟に手で目元をおおった。何か大きなもので抑えつけられている感触があった。息苦しい。アリルの上に折り重なるようにしてノウノとピピが倒れているのだった。
「チョット、退きなさいよ」
と、ふたりのカラダを転がした。
何があったのか記憶がよみがえってくる。マホ教の聖軍の襲撃を受けたのだ。魔法をかけられて、昏倒したのだ。そして昏倒した同じ場所で、目を覚ましたらしかった。
カラダの痺れはもう取れている。
マホ教の騎士団に襲われる意味がわからない。
いまだに何かの間違いだったんじゃないかと思う。
「マッタク何だというんじゃ」
と、ピピが目をさました。
「レイを連れて行かれたわ」
襲撃があって奪われているものは特になかった。新調した防具も着ているままだし、剣も奪われてはいない。ただ、レイだけがいなくなっていた。
昏倒してから、どれぐらい時間が経過したのだろうか。
太陽の傾き具合から察するに、おおよそ2時間以上は経過していると思われた。
「まことに連れて行かれたのか? 婿どのだけ、目を覚まして助けを呼びに行ったのではないかえ?」
「たぶん違うと思う。あんまり覚えてないけど、聖軍の連中は、レイのことをとらえに来たみたいだったし」
「どうする?」
助けに行きたいところだが、あの連中がレイをどこに連れて行ったのかわからない。とりあえず冒険者組合に助けを借りるべきだろうと判断した。冒険者組合がチカラを貸してくれれば、このあたり一帯をくまなく調べ上げることが出来る。
「都市イズェイルンに戻りましょう。冒険者組合の助けを借りるわ」
「必要かえ?」
「どういう意味よ? まさかレイを見捨てるんじゃないでしょーね?」
レイとは出会ってからまだ3日目だ。今日を換算に入れなければ、レイと共に過ごした時間は2日間だ。しかし、2日間とは思えぬほどの濃密な付き合いだったと思う。
レイに頼る気持ちが強くなっていたし、もうレイなしではやっていけないような気すらあった。レイを見つけ出して、『黄金のたまご』に引きいれたのはアリルだ。勧誘したことじたいが、誇らしいことでもあった。
あれほど優れた魔術師、そうそう出会えない。
そんな言い方をすれば、まるでレイのチカラだけを頼りにしているようだが、レイ自身の存在もアリルは仲間だと思っている。
「そういう意味ではないわ。自分の婿どのを見捨てるような発言をするわけなかろうがッ」
と、ピピは怒ったように言う。
「じゃあ、何よ?」
と、アリルは憮然としてたずねた。
成り行き上、ピピがレイのことを「婿どの」と呼ぶに違和感はないのだが、その呼称はどことなくレイを独占しているようで気に障る。ピピもわかってそう呼んでいるんじゃないかと思う。
「婿どのは強いであろう。ワッチらよりもはるかに強い。そんな婿どのに助けが必要じゃろうか――という意味じゃ」
「たしかに、そうだけど、レイはたぶん自分のためにはチカラを使えないと思うから」
「どういう意味じゃ?」
と、ピピが首をかしげた。
「だって、今までのことを思い出してよ。レイは自分の意思ではチカラを使えないって言ってたでしょ。チカラを使ったときって言えば、私がミノタウロスに襲われたときが1度目。2度目はノウノをアラクネから助けたときでしょ。3度目は、ニャルニャルって『かがやける暁』の娘を助けたとき。4度目は、エルフの森を救ったとき」
指折り数えてアリルはそう言った。
「ふむ。そうであったかな」
と、ピピは思い出すように目玉をぐるぐると回していた。
「かならず誰か他の人がピンチになったときに限ってるのよ。自分がピンチのときに使えるなら、Fランク冒険者なんてやってないでしょうし」
「言われてみれば、かもしれんのぉ」
自分のほうが、レイについてよく理解しているのだ。そう思うと、不思議とピピにたいして優越感がわいた。
「だから、レイは自分の身に危険があっても、チカラを使えないかもしれない。助けに行くに越したことはないわ」
「うむ。そうじゃな」
街道を引き返して、都市イズェイルンに戻ることにした。
冒険者組合ならば、すぐに手を貸してくれるだろうと考えていた。甘かった。冒険者組合の受付で事情を説明した。助けは断られた。
「マホ教の上層部から、イズェイルンの領主にたいして書簡がおくられております。邪教徒狩りを行うとのことです。するとそのお仲間は、きっと邪教を信じておられたのでしょう。残念ながら、邪教徒を助けることは、冒険者組合にはできません」
とのことだ。
邪教徒――。
そんなわけない。
レイが何か妙な宗教にこだわっていた気配はなかった。たとえ、そうであったとしても、大切な仲間だ。
「私。心当たり。ある」
ノウノが静かにそう言った。
「え?」
「世界各地には、邪教徒を拷問する場所を、マホ教は隠し持ってる。この近くにもある。お師匠さまは、そこに連れて行かれた。ノウノの予測」
拷問。
レイがそんな目に遭っているのかと思うと、焦燥感をおぼえる。
レイは頼りになる存在だが、その性格はお人よしで虚弱で、お世辞にもたくましいとは言えない。すぐに謝るし、強力な魔法を使えることを威張ることもしない。アリルはそんなレイが人として好きだった。ゴルゴンのように、チカラ強いけれどすぐに威張るような人間はコリゴリだった。ゴルゴンと比較して、まるで正反対であるレイだからこそ、惹かれるのかもしれない。
何にせよ――。
拷問なんかに耐えられる精神力をしているとは思えない。
「じゃあ、そこに行きましょう」
「戦力不足。聖軍がいる。私たちでは勝てない。断言」
「関係ないわ」
冒険者組合を見わたした。
助けになってくれそうな人はいない。マホ教と戦いに行くの――と言って、助けてくれるような人はいないだろう。組合からも協力をことわられている。
「勝てないからと言うて、行かぬわけにもいかんじゃろう」
と、ピピが言った。
「ピピにしては珍しくヤル気ね」
「婿どのには、エルフの森を救ってもらった借りがある。なによりワッチの婿どのじゃ。見捨てるわけにはいかんでな」
「もちろんよ」
『新狩祭』では、この弱小パーティを優勝に導いてくれた。その点でアリルもレイには恩義を感じている。レイのおかげで、ゴルゴンからバカにされずに済むようになったのだ。そういう意味ではアリルも、レイに借りがある。
「私も、お師匠さまが必要」
と、ノウノが言った。
意見は3人とも一致しているようだ。
イキナリ太陽の光が目に跳びこんできた。咄嗟に手で目元をおおった。何か大きなもので抑えつけられている感触があった。息苦しい。アリルの上に折り重なるようにしてノウノとピピが倒れているのだった。
「チョット、退きなさいよ」
と、ふたりのカラダを転がした。
何があったのか記憶がよみがえってくる。マホ教の聖軍の襲撃を受けたのだ。魔法をかけられて、昏倒したのだ。そして昏倒した同じ場所で、目を覚ましたらしかった。
カラダの痺れはもう取れている。
マホ教の騎士団に襲われる意味がわからない。
いまだに何かの間違いだったんじゃないかと思う。
「マッタク何だというんじゃ」
と、ピピが目をさました。
「レイを連れて行かれたわ」
襲撃があって奪われているものは特になかった。新調した防具も着ているままだし、剣も奪われてはいない。ただ、レイだけがいなくなっていた。
昏倒してから、どれぐらい時間が経過したのだろうか。
太陽の傾き具合から察するに、おおよそ2時間以上は経過していると思われた。
「まことに連れて行かれたのか? 婿どのだけ、目を覚まして助けを呼びに行ったのではないかえ?」
「たぶん違うと思う。あんまり覚えてないけど、聖軍の連中は、レイのことをとらえに来たみたいだったし」
「どうする?」
助けに行きたいところだが、あの連中がレイをどこに連れて行ったのかわからない。とりあえず冒険者組合に助けを借りるべきだろうと判断した。冒険者組合がチカラを貸してくれれば、このあたり一帯をくまなく調べ上げることが出来る。
「都市イズェイルンに戻りましょう。冒険者組合の助けを借りるわ」
「必要かえ?」
「どういう意味よ? まさかレイを見捨てるんじゃないでしょーね?」
レイとは出会ってからまだ3日目だ。今日を換算に入れなければ、レイと共に過ごした時間は2日間だ。しかし、2日間とは思えぬほどの濃密な付き合いだったと思う。
レイに頼る気持ちが強くなっていたし、もうレイなしではやっていけないような気すらあった。レイを見つけ出して、『黄金のたまご』に引きいれたのはアリルだ。勧誘したことじたいが、誇らしいことでもあった。
あれほど優れた魔術師、そうそう出会えない。
そんな言い方をすれば、まるでレイのチカラだけを頼りにしているようだが、レイ自身の存在もアリルは仲間だと思っている。
「そういう意味ではないわ。自分の婿どのを見捨てるような発言をするわけなかろうがッ」
と、ピピは怒ったように言う。
「じゃあ、何よ?」
と、アリルは憮然としてたずねた。
成り行き上、ピピがレイのことを「婿どの」と呼ぶに違和感はないのだが、その呼称はどことなくレイを独占しているようで気に障る。ピピもわかってそう呼んでいるんじゃないかと思う。
「婿どのは強いであろう。ワッチらよりもはるかに強い。そんな婿どのに助けが必要じゃろうか――という意味じゃ」
「たしかに、そうだけど、レイはたぶん自分のためにはチカラを使えないと思うから」
「どういう意味じゃ?」
と、ピピが首をかしげた。
「だって、今までのことを思い出してよ。レイは自分の意思ではチカラを使えないって言ってたでしょ。チカラを使ったときって言えば、私がミノタウロスに襲われたときが1度目。2度目はノウノをアラクネから助けたときでしょ。3度目は、ニャルニャルって『かがやける暁』の娘を助けたとき。4度目は、エルフの森を救ったとき」
指折り数えてアリルはそう言った。
「ふむ。そうであったかな」
と、ピピは思い出すように目玉をぐるぐると回していた。
「かならず誰か他の人がピンチになったときに限ってるのよ。自分がピンチのときに使えるなら、Fランク冒険者なんてやってないでしょうし」
「言われてみれば、かもしれんのぉ」
自分のほうが、レイについてよく理解しているのだ。そう思うと、不思議とピピにたいして優越感がわいた。
「だから、レイは自分の身に危険があっても、チカラを使えないかもしれない。助けに行くに越したことはないわ」
「うむ。そうじゃな」
街道を引き返して、都市イズェイルンに戻ることにした。
冒険者組合ならば、すぐに手を貸してくれるだろうと考えていた。甘かった。冒険者組合の受付で事情を説明した。助けは断られた。
「マホ教の上層部から、イズェイルンの領主にたいして書簡がおくられております。邪教徒狩りを行うとのことです。するとそのお仲間は、きっと邪教を信じておられたのでしょう。残念ながら、邪教徒を助けることは、冒険者組合にはできません」
とのことだ。
邪教徒――。
そんなわけない。
レイが何か妙な宗教にこだわっていた気配はなかった。たとえ、そうであったとしても、大切な仲間だ。
「私。心当たり。ある」
ノウノが静かにそう言った。
「え?」
「世界各地には、邪教徒を拷問する場所を、マホ教は隠し持ってる。この近くにもある。お師匠さまは、そこに連れて行かれた。ノウノの予測」
拷問。
レイがそんな目に遭っているのかと思うと、焦燥感をおぼえる。
レイは頼りになる存在だが、その性格はお人よしで虚弱で、お世辞にもたくましいとは言えない。すぐに謝るし、強力な魔法を使えることを威張ることもしない。アリルはそんなレイが人として好きだった。ゴルゴンのように、チカラ強いけれどすぐに威張るような人間はコリゴリだった。ゴルゴンと比較して、まるで正反対であるレイだからこそ、惹かれるのかもしれない。
何にせよ――。
拷問なんかに耐えられる精神力をしているとは思えない。
「じゃあ、そこに行きましょう」
「戦力不足。聖軍がいる。私たちでは勝てない。断言」
「関係ないわ」
冒険者組合を見わたした。
助けになってくれそうな人はいない。マホ教と戦いに行くの――と言って、助けてくれるような人はいないだろう。組合からも協力をことわられている。
「勝てないからと言うて、行かぬわけにもいかんじゃろう」
と、ピピが言った。
「ピピにしては珍しくヤル気ね」
「婿どのには、エルフの森を救ってもらった借りがある。なによりワッチの婿どのじゃ。見捨てるわけにはいかんでな」
「もちろんよ」
『新狩祭』では、この弱小パーティを優勝に導いてくれた。その点でアリルもレイには恩義を感じている。レイのおかげで、ゴルゴンからバカにされずに済むようになったのだ。そういう意味ではアリルも、レイに借りがある。
「私も、お師匠さまが必要」
と、ノウノが言った。
意見は3人とも一致しているようだ。
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