Fランク冒険者なのに、最強すぎませんか❓ 世界最強の魔王は、自分をFランク冒険者だと思い込んでいる⁉️

執筆用bot E-021番 

5-1.目的地

 翌朝。


 エルフの森を出たオレたちは、都市イズェイルンに戻った。都市の城門棟は、冒険者組合の身分証明であるカギを見せれば通してもらえる。このイズラ王国と冒険者組合は、いろんな協定をむすんでいる。たいていの場所を通るのに通行手形や通行税は必要ない。


 ランクがあがれば、もっと色んな場所へ行ける。カギの色が、信用になる。銅では、まだまだ。


「そろそろ別の都市へ移動しようと思うのだけれど、どう思う?」
 アリルが不意にそうたずねてきた。


 ピピにもノウノにも異論はないということだった。たしかに、まだ新たな地を目にしたいという気持ちはある。


「どこか行く当てはあるのか?」
 と、オレが問う。


「特定の場所に行きたいという目的はないわ。冒険者といろんな協定を結んでる、このイズラ王国でチカラをつけたら、世界各国を回って仲間を集める。そしてお父さんに、私のことを認めさせるクランをつくるのが、私の目的だから」


 なんの屈託もない表情で、アリルはそう言った。
 自分の夢を、率直に口にすることが出来るアリルがまぶしく見えた。


 都市のストリートは、今日も人であふれかえっている。左右には露店が開かれており、濁流のような熱気が押し寄せてくる。水売りやパン売りが、雑踏をかきわけて商売をしている。ノウノがフランスパンを買って頬張っていた。


 通行人に押し流されないように、裏路地のほうへと移動することにした。


「レイは、どこか行きたい場所があるの?」
 と、アリルが逆にたずねてきた。


「オレは、北に行きたい」
「北?」


「最北のほうに、カイノォラルって村があるんだ。そこがオレの故郷なんだけど、一度、故郷に戻ろうかと思って」


「両親が恋しくなった?」


「そんなんじゃないよ。ただ、オレがどうして魔法を使えるのか、親に聞けば何かわかるんじゃないかと思って」


 オレの素性。
 それについて自分にわからないのであれば、両親に聞くしかない。


「たしかに、ご両親なら何か知っているかもね。なら決まりね。北へ向けて出発しましょう」
 と、アリルがコブシを突きあげた。


「そんなに簡単に決めて良いのか?」


 自分の用事に、他3人も突きあわせるのは悪いような気がする。


「べつに行く当てもないんだし、良いんじゃない?」


 ピピとノウノはどう思う?
 と、アリルが話を振った。


「ワッチは婿どのを手放すわけにはいかんからのぉ。歩くのはメンドウじゃが、異論はありゃせん」


「お師匠さまが行くなら、どこへでもお供する」
 とふたりは言った。


 いつの間にか、ピピからは「婿どの」と呼ばれて、ノウノからは「お師匠さま」と呼ばれている。
 どちらの呼称も、心臓がくすぐったくなる。


 アリルはブロンドの短い髪をかきあげると、眉間にシワをよせた。


「『黄金のたまご』は、私がリーダーなんだけど、まるでレイがリーダーみたいね。まぁ良いけどさ。じゃあ北方にある、そのカイノォラルとやらに行きましょうか。……っと、その前に」


「腹ごしらえとか言うんじゃないだろうな?」
 と、おそるおそるオレはそうたずねた。


 エルフの森では、さんざん御馳走になったのだ。3人の食べっぷりは凄まじく、エルフたちをドンビキさせていた。エルフの食糧庫に打撃を与えたんじゃないかと思うと、心配でならない。


 この食欲3傑のなかでも、特に凄まじいのがノウノだ。アリルは野菜が嫌いらしく、肉しか食わない。ピピは甘いものが好きらしく、そういったものばかり口にしている。今もキャンディをナめている。


 しかしノウノには嫌いな食べ物というものがないらしく、なんでもかんでも口に入れてしまう。


 アリルも多少の恥じらいはもっているようで、顔を赤くしていた。


「違うわよ! そんなに食べないって」
「それは良かった」


「っていうか、食事のことを言うなら、レイが食べなさすぎるのよ。冒険者なんだから、もっと食べないと」


「オレは、たぶん普通だと思うけど」


 朝起きて、トンカツを5枚もペロリとたいらげてしまうほうが、どうかしている。


 コホン、とアリルは照れ隠しのように咳払いをかました。


「食事の話はさておき、レイの防具を新調しなくちゃいけないわね」


「あぁ、これか」
 と、レイは自分の腹を見た。


 布の鎧クロス・アーマーを着ているのだが、腹と背に穴が開いてしまっている。ミノタウロスにやられたときのものだ。それを隠すために、いちおう布を巻きつけてはいるが、防御力が薄くなってしまっている。


「『新狩祭』でけっこうなお金を手に入れたから、レイの防具を新調してあげるわ。セッカクだし私たちも服をかえましょうか」


「そんな惜しみなく使っても大丈夫なのか? 将来的にはクランハウスを買いたいんだろ?」


「立派な冒険者になれば、これぐらいすぐに戻ってくるわよ。そのための先行投資よ」


 まずはオレの防具を新調してもらうことにした。
「魔術師のローブがいいんじゃない?」とアリルに言われたのだが、オレは意識して魔法をあつかうことは出来ない。いちおう剣士のつもりなのだ。


 防御力は薄いが、動きやすいので、布がけっこう気にいっている。軽量という意味ならば、革の鎧レザー・アーマーでも良かったのだが、値が張るので遠慮した。


 アリルも同じく防具をを新調していた。一口に布の鎧クロス・アーマーと言っても、いろいろとデザインがあって、アリルは袖のないものを装備していた。


「冒険者は大変じゃのぉ。常にそんな暑苦しいもんを着なくちゃならんとは」


 そう言うピピは、相変わらず葉っぱで編みこんだ服を着ている。かなり頑丈な葉っぱのようで、ワックスで固めた革の鎧レザー・アーマーぐらいの防御力はある。しかも涼しそうなのが良いところだ。


「冒険者は、いつどこで戦闘になるかわからないんだから、簡単な防具ぐらいはつけておくものよ」
 と、アリルが言い返していた。


 たしかに平原や丘陵で、急にモンスターが跳びだして来てから、防具を装備するというわけにはいかない。


 ノウノもマホ教の法衣があるので、特に新調する必要はないということだった。


「エルフの者たちに言うて、婿どのとアリルの分の防具も用意させれば良かったのぉ」


「オレはべつに大丈夫だよ」


 そんな葉っぱみたいな服を着こなせるのは、エルフだけだろう。


「けっこう着心地は良いんじゃがな」


「良し。回復薬もストックできたし、北に向けて出発するとしましょーかッ」
 とアリルが溌剌と言った。


 と、『黄金のたまご』一行は、都市イズェイルンを後にすることにした。まさかこの後すぐに悲劇が待ち受けているなど、オレたちは考えもしていなかった。

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