Fランク冒険者なのに、最強すぎませんか❓ 世界最強の魔王は、自分をFランク冒険者だと思い込んでいる⁉️
2-6.アラクネの巣
洞窟の奥へと潜り込んでいた。
身をかがめる必要はないが、細い通路がつづいていた。まるで巨大な蛇の腹のなかを歩いている心地だった。暗闇は左手にあるカンテラが追い払ってくれている。洞窟の奥から跳びだしてきた糸によって、ノウノが引きずり込まれた。それを追いかけているところだった。
一本道で助かった。
もし枝分かれしていたら、迷子になっていたところだ。
「ノウノ。無事か?」
と、たずねてみる。
返答はなかった。
深入りすべきか?
危険だと脳裏では警鐘がなりひびいていたが、ノウノを放置するわけにもいかない。勇気をふりしぼって足をすすめた。
ずっと細い通路だったが、大きな空洞が見えてきた。空洞は青白く輝いており、カンテラは必要なかった。
周囲いったいに蜘蛛の巣が張り巡らされていた。さっきから手や顔に何か張り付くなと思っていた。どうやら蜘蛛の糸らしかった。気色が悪い。服のなかに子蜘蛛が入り込んでいるんじゃないかと思うと、戦慄すらおぼえる。
青白く発光しているものは、どうやら蜘蛛の卵らしい。むろん、ただの蜘蛛ではない。
これは――。
「アラクネか……」
下半身が蜘蛛で、上半身が人のような形状のモンスターである。アラクネが3匹、オレを取り囲むように集まってきた。
天井。
よく見てみると、ノウノがいた。
蜘蛛の糸で簀巻きにされている。まるでミノムシのように、天井から吊るされていた。マッタクの無表情ならば、助けを呼ぶ声も発しない。ホントウに何を考えているのかわからない娘だ。
「待ってろ。今助けるからッ」
剣を抜いた。
アラクネ。いちおう冒険者組合では、Eランク相当と位置づけられている。Fランクのゴブリンやスライムよりも1つレベルが上である。
勝てるだろうか?
森のなかでアリルといっしょにゴブリンと戦ったときの記憶が脳裏をよぎる。あのときは、ゴブリン2匹相手ですら手こずった。自分の実力からかんがみて、まず勝てない相手だ。
それでも――。
簀巻きにされて天井からつるされているノウノを、助け出すぐらいの活躍はしたい。アリルはオレを信用して、ノウノを任せたのだ。その気持ちに報いるという意味もある。そもそも別れて行動しようと提案したのはオレだ。それでいてノウノがモンスターに殺されたとなれば、面目が丸つぶれである。
「よしっ。来いッ」
と、声に気合いを乗せた。自分の声が洞窟内に反響した。
剣を正眼に構える。
まずは1匹。
正面からアラクネが糸を吐きだしてきた。右に跳んでかわす。いっきに距離をつめる。剣をケサ切りに振るった。アラクネの8本生えている脚のうちの1本が、剣を受け止めた。カツン。と金属音がひびく。つばぜり合いになる。硬い。アラクネの足は甲殻によって守られている。鎧をつけているようなものだ。
一度間合いをとるために、後ろへ跳びずさる。
その蜘蛛の脚部は硬くても、上半身は人間の肉と変わりない。簡単に剣は通るはずだ。しかし3匹も相手にするとなると、勝機はうすい。
どうする?
アラクネを倒すことが勝利ではない。この場は、ノウノを助け出すことさえ出来れば、充分だ。
そう判断したオレは、アラクネたちに背中を向けた。
壁沿いに張り巡らされている蜘蛛の巣に跳びついた。ふつうの蜘蛛の糸ではない。アラクネの強靭な糸が張り巡らされているのだ。オレの体重など簡単に支えてくれる。その糸を手がかり足がかりにして、壁をよじのぼって行く。
スープを入れる器を伏せた形状の空洞であった。壁面をのぼりきると、今度は天井からぶら下がるようなカッコウになる。ノウノは空洞の中央に吊られているわけではない。幸いにも壁面に近い場所に吊られており、あとすこしで手が届きそうだった。
が――。
トツジョとしてオレのカラダが、下へと引きずり下ろされそうになった。オレの脚にアラクネが絡みついているのだった。
「くそ……ッ」
左手で天井からぶらさがり、右手で剣をふるう。しかしアラクネの口から吐き出された糸が、その剣をからめ取ってしまった。引っ張っても、簡単には取り返せない。奪い取られてしまった。
サワサワサワ……
何かが蠢動するような音が、空洞内にひびきわたった。厭な予感がした。地面。アラクネが湧いていた。数100匹はいる。3匹だけじゃなかったんだ!
冷静に考えてみれば、ここはアラクネの巣である。大量のアラクネがいても、なんら不思議ではない。地面に群がっているアラクネたちは、天井に張り付いている獲物が落ちてくるのを待っているかのように、脚部を持ち上げていた。
「うわっ」
脚にアラクネが噛みついてきた。
フクラハギのあたりに激痛が走る。
あと1歩というところで、ノウノに手がとどかなかった。たまらず天井からぶらさがっていた手を離してしまった。
無数にいるアラクネのなかに落とされる。この5体がアラクネによって食いちぎられる光景が、恐怖とともに脳裏をよぎった。
何を考えているのかわからないノウノの無表情が、ジッとこちらを見つめていた。
身をかがめる必要はないが、細い通路がつづいていた。まるで巨大な蛇の腹のなかを歩いている心地だった。暗闇は左手にあるカンテラが追い払ってくれている。洞窟の奥から跳びだしてきた糸によって、ノウノが引きずり込まれた。それを追いかけているところだった。
一本道で助かった。
もし枝分かれしていたら、迷子になっていたところだ。
「ノウノ。無事か?」
と、たずねてみる。
返答はなかった。
深入りすべきか?
危険だと脳裏では警鐘がなりひびいていたが、ノウノを放置するわけにもいかない。勇気をふりしぼって足をすすめた。
ずっと細い通路だったが、大きな空洞が見えてきた。空洞は青白く輝いており、カンテラは必要なかった。
周囲いったいに蜘蛛の巣が張り巡らされていた。さっきから手や顔に何か張り付くなと思っていた。どうやら蜘蛛の糸らしかった。気色が悪い。服のなかに子蜘蛛が入り込んでいるんじゃないかと思うと、戦慄すらおぼえる。
青白く発光しているものは、どうやら蜘蛛の卵らしい。むろん、ただの蜘蛛ではない。
これは――。
「アラクネか……」
下半身が蜘蛛で、上半身が人のような形状のモンスターである。アラクネが3匹、オレを取り囲むように集まってきた。
天井。
よく見てみると、ノウノがいた。
蜘蛛の糸で簀巻きにされている。まるでミノムシのように、天井から吊るされていた。マッタクの無表情ならば、助けを呼ぶ声も発しない。ホントウに何を考えているのかわからない娘だ。
「待ってろ。今助けるからッ」
剣を抜いた。
アラクネ。いちおう冒険者組合では、Eランク相当と位置づけられている。Fランクのゴブリンやスライムよりも1つレベルが上である。
勝てるだろうか?
森のなかでアリルといっしょにゴブリンと戦ったときの記憶が脳裏をよぎる。あのときは、ゴブリン2匹相手ですら手こずった。自分の実力からかんがみて、まず勝てない相手だ。
それでも――。
簀巻きにされて天井からつるされているノウノを、助け出すぐらいの活躍はしたい。アリルはオレを信用して、ノウノを任せたのだ。その気持ちに報いるという意味もある。そもそも別れて行動しようと提案したのはオレだ。それでいてノウノがモンスターに殺されたとなれば、面目が丸つぶれである。
「よしっ。来いッ」
と、声に気合いを乗せた。自分の声が洞窟内に反響した。
剣を正眼に構える。
まずは1匹。
正面からアラクネが糸を吐きだしてきた。右に跳んでかわす。いっきに距離をつめる。剣をケサ切りに振るった。アラクネの8本生えている脚のうちの1本が、剣を受け止めた。カツン。と金属音がひびく。つばぜり合いになる。硬い。アラクネの足は甲殻によって守られている。鎧をつけているようなものだ。
一度間合いをとるために、後ろへ跳びずさる。
その蜘蛛の脚部は硬くても、上半身は人間の肉と変わりない。簡単に剣は通るはずだ。しかし3匹も相手にするとなると、勝機はうすい。
どうする?
アラクネを倒すことが勝利ではない。この場は、ノウノを助け出すことさえ出来れば、充分だ。
そう判断したオレは、アラクネたちに背中を向けた。
壁沿いに張り巡らされている蜘蛛の巣に跳びついた。ふつうの蜘蛛の糸ではない。アラクネの強靭な糸が張り巡らされているのだ。オレの体重など簡単に支えてくれる。その糸を手がかり足がかりにして、壁をよじのぼって行く。
スープを入れる器を伏せた形状の空洞であった。壁面をのぼりきると、今度は天井からぶら下がるようなカッコウになる。ノウノは空洞の中央に吊られているわけではない。幸いにも壁面に近い場所に吊られており、あとすこしで手が届きそうだった。
が――。
トツジョとしてオレのカラダが、下へと引きずり下ろされそうになった。オレの脚にアラクネが絡みついているのだった。
「くそ……ッ」
左手で天井からぶらさがり、右手で剣をふるう。しかしアラクネの口から吐き出された糸が、その剣をからめ取ってしまった。引っ張っても、簡単には取り返せない。奪い取られてしまった。
サワサワサワ……
何かが蠢動するような音が、空洞内にひびきわたった。厭な予感がした。地面。アラクネが湧いていた。数100匹はいる。3匹だけじゃなかったんだ!
冷静に考えてみれば、ここはアラクネの巣である。大量のアラクネがいても、なんら不思議ではない。地面に群がっているアラクネたちは、天井に張り付いている獲物が落ちてくるのを待っているかのように、脚部を持ち上げていた。
「うわっ」
脚にアラクネが噛みついてきた。
フクラハギのあたりに激痛が走る。
あと1歩というところで、ノウノに手がとどかなかった。たまらず天井からぶらさがっていた手を離してしまった。
無数にいるアラクネのなかに落とされる。この5体がアラクネによって食いちぎられる光景が、恐怖とともに脳裏をよぎった。
何を考えているのかわからないノウノの無表情が、ジッとこちらを見つめていた。
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