傷痕~想い出に変わるまで~
結実 4
「……ホントにバカだな、おまえは……」
門倉が私を抱き寄せて頬に軽く口付けた。
突然のことに驚いて顔を見上げると、門倉は優しい目をして笑っていた。
「俺の嫁になれって意味だ。気付け、バカ」
「よ、嫁にって……急にそんなこと言われても……」
いきなりそんなこと言われるとは思っていなかったから、どう答えていいのかわからない。
「おまえ俺のこと嫌いか?」
「嫌いじゃないけど……」
「じゃあ、好きか?」
「……うん……好き……」
「そうか、じゃあ決まりだな」
ええっ、決まりなの?
そんなにあっさりと?!
「ちょっと待ってよ」
「もうじゅうぶん待った。何年待ったと思ってんだ。よし、これから不動産屋行って部屋探すか」
「部屋って……」
「俺とおまえの新居」
なんだこの急展開は?!
全然ついていけない!!
「そういうことはもっと慎重に考えないと!」
「もうこれ以上待てねぇから。とりあえず返事しろ。おまえはどうしたい?」
どうしたい?って……。
付き合ってもないのに、いきなり結婚はないだろう。
「おまえは俺と一緒にいたいの?いたくないの?」
「……いたいけど……」
「俺もだ。好きだぞ、篠宮。大事にするから、ずっと俺のそばにいろ」
「……うん」
スタスタ歩いていた門倉が急に立ち止まって踵を返し、元来た道を戻り始めた。
「……今度はどちらへ?」
「気が変わった。やっぱ今日はおまえんちに行く」
「えっ、なんで?!」
「決まってるだろ?」
決まってるって……何が?!
一体何をするつもり?!
「いい加減観念して俺のもんになれ。余計なことなんかなんにも考えられなくなるくらい、目一杯愛してやる。もう誰にも遠慮はしないからな」
「何それ、強引すぎ……!」
「安心しろ、ちゃんと優しくしてやる。好きだからな」
門倉とこんな風に歩く未来も悪くないと思う。
口は悪いけど優しいのは知ってる。
何年経っても一緒に笑っていられるといいな。
結局門倉に強引に手を引かれながら私のマンションまで戻ってきた。
二人きりになるのは久しぶりだから少し緊張する。
「とりあえず……コーヒーでも淹れるから」
キッチンに向かおうとすると、門倉は私の手を引いて強く抱き寄せた。
「篠宮」
「今度は何……?」
無茶な要求でもされるのかとおそるおそる見上げると、門倉は私の頬を両手で包み込み、まっすぐに目を見つめる。
 
「改めて言うよ。愛してる。必ず幸せにするから、俺と結婚してくれ」
「……はい。末長くよろしくお願いします」
「おー。一生離さんからな」
門倉の唇が私の唇に優しく触れた。
唇をついばむような優しいキスをくりかえす。
会社で倒れて入院した病室で門倉と交わしたキスを思い出した。
あの時は悲しくて切なくて胸が痛かった。
今は……とてもあたたかくて幸せな気持ちだ。
「門倉、待っててくれてありがとね」
「ん?あー……俺は気が長いからな」
照れ隠しなのかな?
気が長いんだねって言ったら、そうでもないって前は言ってたのに。
「ってかさ……呼び方な。おまえもいずれ門倉になるんだろ?」
「じゃあ……凌平?」
「なんだ、瑞希」
くすぐったい気分で顔を見合せ、二人して思わず吹き出した。
「これから時間かけて慣れてけばいいよ。先は長いんだからな」
一度結婚に失敗して苦い思いをした私たちは、今度こそ大切なものを見失わないように、お互いを大切に思いやることを忘れないでいようと思う。
もう二度と帰ることのない大切な人を忘れることはないけれど、つらかった過去の記憶はもう振り返らない。
最後に優しさと愛情で満たしてくれたことに感謝して。
私は今、心の傷を癒やしてくれた優しい人と、幸せな未来へ続く新しい一歩を踏み出した。
─END─
門倉が私を抱き寄せて頬に軽く口付けた。
突然のことに驚いて顔を見上げると、門倉は優しい目をして笑っていた。
「俺の嫁になれって意味だ。気付け、バカ」
「よ、嫁にって……急にそんなこと言われても……」
いきなりそんなこと言われるとは思っていなかったから、どう答えていいのかわからない。
「おまえ俺のこと嫌いか?」
「嫌いじゃないけど……」
「じゃあ、好きか?」
「……うん……好き……」
「そうか、じゃあ決まりだな」
ええっ、決まりなの?
そんなにあっさりと?!
「ちょっと待ってよ」
「もうじゅうぶん待った。何年待ったと思ってんだ。よし、これから不動産屋行って部屋探すか」
「部屋って……」
「俺とおまえの新居」
なんだこの急展開は?!
全然ついていけない!!
「そういうことはもっと慎重に考えないと!」
「もうこれ以上待てねぇから。とりあえず返事しろ。おまえはどうしたい?」
どうしたい?って……。
付き合ってもないのに、いきなり結婚はないだろう。
「おまえは俺と一緒にいたいの?いたくないの?」
「……いたいけど……」
「俺もだ。好きだぞ、篠宮。大事にするから、ずっと俺のそばにいろ」
「……うん」
スタスタ歩いていた門倉が急に立ち止まって踵を返し、元来た道を戻り始めた。
「……今度はどちらへ?」
「気が変わった。やっぱ今日はおまえんちに行く」
「えっ、なんで?!」
「決まってるだろ?」
決まってるって……何が?!
一体何をするつもり?!
「いい加減観念して俺のもんになれ。余計なことなんかなんにも考えられなくなるくらい、目一杯愛してやる。もう誰にも遠慮はしないからな」
「何それ、強引すぎ……!」
「安心しろ、ちゃんと優しくしてやる。好きだからな」
門倉とこんな風に歩く未来も悪くないと思う。
口は悪いけど優しいのは知ってる。
何年経っても一緒に笑っていられるといいな。
結局門倉に強引に手を引かれながら私のマンションまで戻ってきた。
二人きりになるのは久しぶりだから少し緊張する。
「とりあえず……コーヒーでも淹れるから」
キッチンに向かおうとすると、門倉は私の手を引いて強く抱き寄せた。
「篠宮」
「今度は何……?」
無茶な要求でもされるのかとおそるおそる見上げると、門倉は私の頬を両手で包み込み、まっすぐに目を見つめる。
 
「改めて言うよ。愛してる。必ず幸せにするから、俺と結婚してくれ」
「……はい。末長くよろしくお願いします」
「おー。一生離さんからな」
門倉の唇が私の唇に優しく触れた。
唇をついばむような優しいキスをくりかえす。
会社で倒れて入院した病室で門倉と交わしたキスを思い出した。
あの時は悲しくて切なくて胸が痛かった。
今は……とてもあたたかくて幸せな気持ちだ。
「門倉、待っててくれてありがとね」
「ん?あー……俺は気が長いからな」
照れ隠しなのかな?
気が長いんだねって言ったら、そうでもないって前は言ってたのに。
「ってかさ……呼び方な。おまえもいずれ門倉になるんだろ?」
「じゃあ……凌平?」
「なんだ、瑞希」
くすぐったい気分で顔を見合せ、二人して思わず吹き出した。
「これから時間かけて慣れてけばいいよ。先は長いんだからな」
一度結婚に失敗して苦い思いをした私たちは、今度こそ大切なものを見失わないように、お互いを大切に思いやることを忘れないでいようと思う。
もう二度と帰ることのない大切な人を忘れることはないけれど、つらかった過去の記憶はもう振り返らない。
最後に優しさと愛情で満たしてくれたことに感謝して。
私は今、心の傷を癒やしてくれた優しい人と、幸せな未来へ続く新しい一歩を踏み出した。
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コメント
ひらり
今日一気読みをしてしまいました
もう涙が止まりません(;_;)
とても素敵なお話でした
ありがとうございます
みょうが
お疲れ様でした。最後まで、どうなるかドキドキしてました。スッキリ収まって良かったです。ありがとうございました