傷痕~想い出に変わるまで~
束縛 6
記憶の中の光が私に優しい声で呟いた。
『瑞希が好きなんだ。俺の彼女になって下さい』
嬉しい……!
やっと私、光の彼女になれるんだ……!
『俺、この先ずっと何年経っても瑞希と一緒にいたいよ』
うん、そうだね。
私も光とずっと一緒にいたいよ。
『瑞希……好きだよ。もう二度と間違えないから……ずっと俺と一緒にいて』
ねぇ光。
私たちにとって、一体何が正しくて、何が間違いだったのかな。
あんなに愛し合っていたのに、どうして別れてしまったんだろう?
別れて5年も経ってまた付き合ったけれど、今の私たちはあの頃みたいに心から笑って、誰よりも愛してるって言えるかな?
私たちはこの先も過去に縛られながら、お互いの傷を舐め合って生きて行くことしかできないのかな?
光は私に何を求めているの?
大きな手が私の頭を何度も撫でた。
ああ、まただ。
あたたかくて心地いい。
私をまるごとすっぽりと包んでしまいそうな、優しい手。
この手は私の過去も未来も、すべてを受け入れて愛してくれるだろうか。
うっすらとまぶたを開けると、眩しさで視界が一瞬真っ白になった。
見上げているのは見慣れない白い天井。
あれ……?
ここはどこだろう?
さっきまで会社で仕事をしていたはずなのに。
「おっ、目ぇ覚めたか?」
聞き慣れた低くて優しい声がした。
「……門倉……?ここどこ?私なんで……」
ひどく掠れた声が口からもれた。
どうやら私の声らしい。
「仕事中に倒れたんだ。覚えてないのか?」
「うん、全然……」
「まぁ無理もないな。医者の話では、過度の睡眠不足による過労だとさ。おまえ、丸二日眠ってたんだぞ」
丸二日?!
……ってことは……。
「ねぇ……今日何曜日?」
「金曜日。おまえが倒れたのは水曜日だ」
どうしよう……。
3日もなんの連絡もしないで、また光を不安にさせているかも。
「……帰る」
「は?何言ってんだ」
起き上がると私の左手は点滴に繋がれていた。
「帰らなきゃ……」
点滴の針を抜こうとすると、門倉が慌ててそれを止めた。
「待て篠宮、ちょっと落ち着け!!」
「帰らなきゃいけないの!私がいないと光は……!!」
泣いて暴れる私をなだめようと門倉が抱きしめた。
「とにかく落ち着け。どうしても帰らきゃいけない理由を聞かせろ」
門倉はナースコールを押して看護師を呼んだ。
医師と看護師が私の意識が戻ったことを確認して、血圧や脈拍、体温など、体に異常がないか調べた。
今すぐ帰りたいと言うと、念のため今夜はもう一晩入院しておきなさいと医師に言われた。
精神安定剤を出しておくから食後に服用するようにと告げると、医師と看護師は病室から出ていった。
光が待ってるのに今夜も帰れない。
力なくベッドに体を投げ出して両手で顔を覆う。
門倉はベッドのそばにパイプ椅子を置いて腰掛けた。
「あいつのことがそんなに気になるか?」
「だって……私が会社で倒れて今日で3日目なんでしょ?その間なんの連絡もしてないんだよ……?」
私の言葉を門倉は怪訝な顔で首をかしげながら聞いていた。
「子供じゃあるまいし、3日くらいどうってことないだろ?」
「光は昨日も一昨日もマンションの前で私の帰りを待ってたと思う。今日だって……」
カーテンの隙間から窓の外に広がる夜の風景が見えた。
門倉がここにいると言うことは、夜も遅い時間に違いない。
『瑞希が好きなんだ。俺の彼女になって下さい』
嬉しい……!
やっと私、光の彼女になれるんだ……!
『俺、この先ずっと何年経っても瑞希と一緒にいたいよ』
うん、そうだね。
私も光とずっと一緒にいたいよ。
『瑞希……好きだよ。もう二度と間違えないから……ずっと俺と一緒にいて』
ねぇ光。
私たちにとって、一体何が正しくて、何が間違いだったのかな。
あんなに愛し合っていたのに、どうして別れてしまったんだろう?
別れて5年も経ってまた付き合ったけれど、今の私たちはあの頃みたいに心から笑って、誰よりも愛してるって言えるかな?
私たちはこの先も過去に縛られながら、お互いの傷を舐め合って生きて行くことしかできないのかな?
光は私に何を求めているの?
大きな手が私の頭を何度も撫でた。
ああ、まただ。
あたたかくて心地いい。
私をまるごとすっぽりと包んでしまいそうな、優しい手。
この手は私の過去も未来も、すべてを受け入れて愛してくれるだろうか。
うっすらとまぶたを開けると、眩しさで視界が一瞬真っ白になった。
見上げているのは見慣れない白い天井。
あれ……?
ここはどこだろう?
さっきまで会社で仕事をしていたはずなのに。
「おっ、目ぇ覚めたか?」
聞き慣れた低くて優しい声がした。
「……門倉……?ここどこ?私なんで……」
ひどく掠れた声が口からもれた。
どうやら私の声らしい。
「仕事中に倒れたんだ。覚えてないのか?」
「うん、全然……」
「まぁ無理もないな。医者の話では、過度の睡眠不足による過労だとさ。おまえ、丸二日眠ってたんだぞ」
丸二日?!
……ってことは……。
「ねぇ……今日何曜日?」
「金曜日。おまえが倒れたのは水曜日だ」
どうしよう……。
3日もなんの連絡もしないで、また光を不安にさせているかも。
「……帰る」
「は?何言ってんだ」
起き上がると私の左手は点滴に繋がれていた。
「帰らなきゃ……」
点滴の針を抜こうとすると、門倉が慌ててそれを止めた。
「待て篠宮、ちょっと落ち着け!!」
「帰らなきゃいけないの!私がいないと光は……!!」
泣いて暴れる私をなだめようと門倉が抱きしめた。
「とにかく落ち着け。どうしても帰らきゃいけない理由を聞かせろ」
門倉はナースコールを押して看護師を呼んだ。
医師と看護師が私の意識が戻ったことを確認して、血圧や脈拍、体温など、体に異常がないか調べた。
今すぐ帰りたいと言うと、念のため今夜はもう一晩入院しておきなさいと医師に言われた。
精神安定剤を出しておくから食後に服用するようにと告げると、医師と看護師は病室から出ていった。
光が待ってるのに今夜も帰れない。
力なくベッドに体を投げ出して両手で顔を覆う。
門倉はベッドのそばにパイプ椅子を置いて腰掛けた。
「あいつのことがそんなに気になるか?」
「だって……私が会社で倒れて今日で3日目なんでしょ?その間なんの連絡もしてないんだよ……?」
私の言葉を門倉は怪訝な顔で首をかしげながら聞いていた。
「子供じゃあるまいし、3日くらいどうってことないだろ?」
「光は昨日も一昨日もマンションの前で私の帰りを待ってたと思う。今日だって……」
カーテンの隙間から窓の外に広がる夜の風景が見えた。
門倉がここにいると言うことは、夜も遅い時間に違いない。
コメント