傷痕~想い出に変わるまで~
嫉妬 5
光の『一緒にいたい』は、『何年経ってもずっと』って意味だけじゃないんだ。
『できるだけ長い時間を共にしたい』って、もっと言ってしまえば『ずっとくっついてたい』ってことなんだろう。
どんなに時間をかけて歩み寄ったところで、私が仕事をしている以上、『一緒にいたい』という光の気持ちに応えることはできない。
これ以上光をガッカリさせるのは忍びない。
光には申し訳ないけど、ハッキリ返事をした方がお互いのためだと思う。
「ごめん、光……私やっぱり……」
やっぱり付き合えないと言おうとした時、それを妨げるかのように光が私の言葉を遮った。
「でも俺は……!瑞希が好きなんだよ……。勝手なのはわかってる。でも好きで好きでどうしようもないんだよ……」
光の声が震えている。
昔みたいに泣いているのかも知れない。
「時々しか会えなくても、仕事以下でもいい。俺は瑞希と会いたいし、瑞希に昔みたいに笑って欲しい……。光が好きだって……一緒にいようねって、言って欲しい……」
「光……」
電話越しに聞こえる光の声が、完全に涙声になっていた。
光の気持ちに応えらないならハッキリしなくちゃいけないと思うのに、光を強く突き放すこともできない私はずるい。
だいたいこんな話は電話でできるものじゃない。
「光……ちょっと落ち着いて。このことは今度ちゃんと会って冷静に話そう?」
「……瑞希にとっては俺のことなんてその程度のことなんだよな。だから離婚する時だって……」
「……離婚する時だって、何?」
「……なんでもない。おやすみ」
光は感情を押し殺した声で一方的におやすみを告げ、電話を切ってしまった。
通話の終わったスマホを枕元に置いてため息をつく。
間違えて電話したのも相手を確認せずにしゃべりだしたのも全面的に私が悪い。
よりによって門倉への電話を光にかけてしまうなんて。
門倉の冗談を交わそうと余計なことまで言ったから、更に話がややこしくなってしまったんだろう。
ベッドに倒れ込んで目を閉じた。
光の顔と門倉の顔が交互に浮かぶ。
私はどうしたいんだろう?
二人の男の人から同時に好きだと言われたことなんてなかったから戸惑う。
光のことは大好きだったから結婚したし、お互いの気持ちが離れてしまったから離婚した。
お互いに傷付いて傷付けて、心に深い傷痕が残った苦い経験だ。
今の光のことはどうだろう?
優しくされると不安になるなんて、昔はなかったのに。
じゃあ、門倉のことは……?
もちろん嫌いじゃないし、気取ったり飾ったりせず言いたいことを笑って言い合える。
最近は一緒にいると安心したりドキドキさせられたり。
好き……なのかな?
ただ居心地がいいだけなのかな?
自分の気持ちもわからないのに、どうやってその境界線を越えればいい?
どちらか一人しか選べないのはわかってる。
だったら選ばれなかったもう一人はどうなるの?
……わからない。
何もかも忘れて、とりあえず眠りたい。
浅い眠りの淵で夢を見た。
まだ結婚したばかりの頃の光と私が二人で笑っていた。
大好きだよ。
ずっと一緒にいようって約束したもんね。
隣には誰もいないから、安心して。
『できるだけ長い時間を共にしたい』って、もっと言ってしまえば『ずっとくっついてたい』ってことなんだろう。
どんなに時間をかけて歩み寄ったところで、私が仕事をしている以上、『一緒にいたい』という光の気持ちに応えることはできない。
これ以上光をガッカリさせるのは忍びない。
光には申し訳ないけど、ハッキリ返事をした方がお互いのためだと思う。
「ごめん、光……私やっぱり……」
やっぱり付き合えないと言おうとした時、それを妨げるかのように光が私の言葉を遮った。
「でも俺は……!瑞希が好きなんだよ……。勝手なのはわかってる。でも好きで好きでどうしようもないんだよ……」
光の声が震えている。
昔みたいに泣いているのかも知れない。
「時々しか会えなくても、仕事以下でもいい。俺は瑞希と会いたいし、瑞希に昔みたいに笑って欲しい……。光が好きだって……一緒にいようねって、言って欲しい……」
「光……」
電話越しに聞こえる光の声が、完全に涙声になっていた。
光の気持ちに応えらないならハッキリしなくちゃいけないと思うのに、光を強く突き放すこともできない私はずるい。
だいたいこんな話は電話でできるものじゃない。
「光……ちょっと落ち着いて。このことは今度ちゃんと会って冷静に話そう?」
「……瑞希にとっては俺のことなんてその程度のことなんだよな。だから離婚する時だって……」
「……離婚する時だって、何?」
「……なんでもない。おやすみ」
光は感情を押し殺した声で一方的におやすみを告げ、電話を切ってしまった。
通話の終わったスマホを枕元に置いてため息をつく。
間違えて電話したのも相手を確認せずにしゃべりだしたのも全面的に私が悪い。
よりによって門倉への電話を光にかけてしまうなんて。
門倉の冗談を交わそうと余計なことまで言ったから、更に話がややこしくなってしまったんだろう。
ベッドに倒れ込んで目を閉じた。
光の顔と門倉の顔が交互に浮かぶ。
私はどうしたいんだろう?
二人の男の人から同時に好きだと言われたことなんてなかったから戸惑う。
光のことは大好きだったから結婚したし、お互いの気持ちが離れてしまったから離婚した。
お互いに傷付いて傷付けて、心に深い傷痕が残った苦い経験だ。
今の光のことはどうだろう?
優しくされると不安になるなんて、昔はなかったのに。
じゃあ、門倉のことは……?
もちろん嫌いじゃないし、気取ったり飾ったりせず言いたいことを笑って言い合える。
最近は一緒にいると安心したりドキドキさせられたり。
好き……なのかな?
ただ居心地がいいだけなのかな?
自分の気持ちもわからないのに、どうやってその境界線を越えればいい?
どちらか一人しか選べないのはわかってる。
だったら選ばれなかったもう一人はどうなるの?
……わからない。
何もかも忘れて、とりあえず眠りたい。
浅い眠りの淵で夢を見た。
まだ結婚したばかりの頃の光と私が二人で笑っていた。
大好きだよ。
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隣には誰もいないから、安心して。
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