傷痕~想い出に変わるまで~
嫉妬 1
食事を済ませて定食屋を出ると門倉が私の手を握り、その手を自分のコートのポケットに突っ込んだ。
あまりに唐突すぎて鼓動が急激に速くなる。
「ちょっ……!門倉……!!」
「いいじゃん、たまには」
「良くないよ!会社のすぐそばでこんなとこ社内の誰かに見られたら、どんな噂たてられるか……!!」
「俺は構わんけどな。噂通りになればもっといい」
私がどんなに手を引っ込めようとしても、門倉は離してくれない。
「ねぇ、離してよ」
「離して欲しいのか?だったら俺の言うこと聞け」
またからかわれてる……。
仕方なく素直にうなずくと、門倉は意地悪く笑う。
まずいな。
とんでもない命令されたらどうしよう?!
「じゃあ……離してやるから、今日は家まで送らせろ」
「えぇっ?!それはちょっと……」
「イヤならこのまま会社のやつらに会うまでずっとこの辺歩き回ってやる」
「それも困る……!!」
「じゃあ……ここでキスしてやる」
門倉が無駄にデカイ手で私の頭を掴んだ。
こいつ何考えてんだ!!
「それはもっとダメ!」
「じゃあ素直に送らせろ」
「わかった!わかったから離して!!」
こうなったら門倉が手を離した瞬間に猛ダッシュで逃げてやる。
「言っとくけど、手ぇ離した瞬間に逃げるとかナシだからな。そんなことしたら会社であることないこと言いふらしてやる」
「にっ、逃げないから!」
完全に読まれてたよ……。
ここは素直に従うしかなさそうだ。
とりあえず手を離してもらって、いつものように並んで駅までの道のりを歩いた。
「門倉ってさ……けっこうヒドイよね」
「そうか?俺は好きな女にはとことん優しくする主義なんだけどな」
「ふーん……。じゃあ私のことはそんなに好きじゃないね」
自分で言っておいて、なんだかこっぱずかしい。
門倉は一瞬キョトンとした顔をした後、おかしそうに笑った。
「ホントにおまえは何もわかってねぇなぁ……」
大きな手が私の頭をワシャワシャと撫でた。
門倉が優しいのは知ってる。
だけど異性として優しくされるのには慣れてないから、急にそうされると否応なく胸が痛いほど高鳴って、やっぱりどうしても落ち着かない。
それなのに一緒にいるのはイヤじゃなくて、どこか安心感があって、あろうことかもう少し一緒にいたいような気さえしてくる。
お酒も飲んでいないのにおかしいな。
あまりの眠さのせいで思考回路がおかしくなってしまったのかも知れない。
電車の中で、門倉は私の隣に立って窓の外を眺めていた。
その目は窓の外の景色なんかよりもずっと遠くを見ているように感じた。
「篠宮、ホントに座らなくて大丈夫か?」
私はよほど眠そうな顔をしているんだろう。
心なしか眠さのせいで頭がボーッとしている。
「アジフライにはウスターソースよりとんかつソースだと思うんだよね」
「は?」
「この前、社食の味噌汁にピーマンが入ってた。出汁はトマトでじゅうぶんなのに……」
「おい篠宮、寝ぼけてんのか?」
門倉に肩を掴まれ体を揺すられて、私は今何を言っていたんだろうと首をかしげた。
「報告書はワンタン麺でいいんだっけ?」
「はぁ?やっぱ寝ぼけてんな。おまえここ座れ」
門倉に手を引かれ座席に座らされた。
私の隣に門倉も座る。
「無理やりついてきて良かったわ。着くまで寝てろ、起こしてやるから」
「いや、それはちょっと……」
確かに眠くて死にそうだけど、寝顔を見られるのは恥ずかしいんだってば。
「つべこべ言うな」
門倉は強引に私の頭を引き寄せて、自分の肩にもたせかけた。
「こうしてりゃ寝顔も見えん。安心して寝てろ、バカ」
「バカって言う方がバカなんだからね」
「はいはい、おまえのためならいくらでもバカになってやるよ」
ホントに強引だな、門倉は……。
口は悪いし意地悪だけど……優しくて……あったかい。
体に伝わってくる門倉の鼓動と体温があまりにも心地よくて、目を閉じるとあっという間に眠りに落ちた。
 
あまりに唐突すぎて鼓動が急激に速くなる。
「ちょっ……!門倉……!!」
「いいじゃん、たまには」
「良くないよ!会社のすぐそばでこんなとこ社内の誰かに見られたら、どんな噂たてられるか……!!」
「俺は構わんけどな。噂通りになればもっといい」
私がどんなに手を引っ込めようとしても、門倉は離してくれない。
「ねぇ、離してよ」
「離して欲しいのか?だったら俺の言うこと聞け」
またからかわれてる……。
仕方なく素直にうなずくと、門倉は意地悪く笑う。
まずいな。
とんでもない命令されたらどうしよう?!
「じゃあ……離してやるから、今日は家まで送らせろ」
「えぇっ?!それはちょっと……」
「イヤならこのまま会社のやつらに会うまでずっとこの辺歩き回ってやる」
「それも困る……!!」
「じゃあ……ここでキスしてやる」
門倉が無駄にデカイ手で私の頭を掴んだ。
こいつ何考えてんだ!!
「それはもっとダメ!」
「じゃあ素直に送らせろ」
「わかった!わかったから離して!!」
こうなったら門倉が手を離した瞬間に猛ダッシュで逃げてやる。
「言っとくけど、手ぇ離した瞬間に逃げるとかナシだからな。そんなことしたら会社であることないこと言いふらしてやる」
「にっ、逃げないから!」
完全に読まれてたよ……。
ここは素直に従うしかなさそうだ。
とりあえず手を離してもらって、いつものように並んで駅までの道のりを歩いた。
「門倉ってさ……けっこうヒドイよね」
「そうか?俺は好きな女にはとことん優しくする主義なんだけどな」
「ふーん……。じゃあ私のことはそんなに好きじゃないね」
自分で言っておいて、なんだかこっぱずかしい。
門倉は一瞬キョトンとした顔をした後、おかしそうに笑った。
「ホントにおまえは何もわかってねぇなぁ……」
大きな手が私の頭をワシャワシャと撫でた。
門倉が優しいのは知ってる。
だけど異性として優しくされるのには慣れてないから、急にそうされると否応なく胸が痛いほど高鳴って、やっぱりどうしても落ち着かない。
それなのに一緒にいるのはイヤじゃなくて、どこか安心感があって、あろうことかもう少し一緒にいたいような気さえしてくる。
お酒も飲んでいないのにおかしいな。
あまりの眠さのせいで思考回路がおかしくなってしまったのかも知れない。
電車の中で、門倉は私の隣に立って窓の外を眺めていた。
その目は窓の外の景色なんかよりもずっと遠くを見ているように感じた。
「篠宮、ホントに座らなくて大丈夫か?」
私はよほど眠そうな顔をしているんだろう。
心なしか眠さのせいで頭がボーッとしている。
「アジフライにはウスターソースよりとんかつソースだと思うんだよね」
「は?」
「この前、社食の味噌汁にピーマンが入ってた。出汁はトマトでじゅうぶんなのに……」
「おい篠宮、寝ぼけてんのか?」
門倉に肩を掴まれ体を揺すられて、私は今何を言っていたんだろうと首をかしげた。
「報告書はワンタン麺でいいんだっけ?」
「はぁ?やっぱ寝ぼけてんな。おまえここ座れ」
門倉に手を引かれ座席に座らされた。
私の隣に門倉も座る。
「無理やりついてきて良かったわ。着くまで寝てろ、起こしてやるから」
「いや、それはちょっと……」
確かに眠くて死にそうだけど、寝顔を見られるのは恥ずかしいんだってば。
「つべこべ言うな」
門倉は強引に私の頭を引き寄せて、自分の肩にもたせかけた。
「こうしてりゃ寝顔も見えん。安心して寝てろ、バカ」
「バカって言う方がバカなんだからね」
「はいはい、おまえのためならいくらでもバカになってやるよ」
ホントに強引だな、門倉は……。
口は悪いし意地悪だけど……優しくて……あったかい。
体に伝わってくる門倉の鼓動と体温があまりにも心地よくて、目を閉じるとあっという間に眠りに落ちた。
 
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