傷痕~想い出に変わるまで~
告白 5
「あの……お昼ご飯と毛布……ありがとね」
「ん?ああ、ちゃんと食ったか?」
「昼休みの終わりにおにぎり食べて、3時の休憩にタマゴサンド食べた」
「そうか。なら良かった」
門倉はなんともなさそうな顔をして笑っている。
「わざわざ仮眠室から毛布借りて来てくれたの?」
「まあな。おまえなんか寒そうだったし、蒼白い顔してたから」
「ありがと、あったかかった」
素直にお礼を言って、今度はやけどしないようにゆっくりコーヒーをすすった。
「ブラック?いつもはミルク入りなのに」
「眠いから」
「ホントに大丈夫かよ。報告書仕上がる前に眠っちゃうんじゃないか?」
「そうならないように頑張ってるの」
門倉と話していると少しは眠気も覚めた。
あと少しだし、睡魔に負ける前になんとかなりそうだ。
「10分だけでも寝れば?少しは効率上がると思うぞ」
「めちゃめちゃ眠いの、起きられる自信ない。それこそ朝になるよ」
「起こしてやるけど?」
それは門倉に寝顔をさらせって、そういうこと?
いくらなんでも恥ずかしすぎる。
「いい、遠慮しとく。あと少しだし」
門倉は短くなったタバコを灰皿に投げ入れて、伸びをしながら私の方をチラッと見た。
「しょうがねぇなぁ……。篠宮が終わるまで眠らないように横で見ててやる」
「えっ、そんなの頼んでないけど!」
「キーボード枕にデスクで社泊なんてイヤだろ。眠りそうになったら起こしてやるから、黙って言うこと聞け」
うう……ないとは言い切れない……。
頬にキーボードの跡をつけて慌てふためく自分の寝起き顔を想像してしまう。
「俺のせいなんだろ?責任取ってやるよ」
「……門倉のくせにムカつく。膝枕は要らないからね」
「腕枕の方がいいのか?意外と大胆だな」
「要らんわ!」
また門倉にからかわれる前に、さっさと報告書仕上げて帰ろう。
タバコを灰皿に捨ててコーヒーを急いで飲んだ。
「またやけどすんなよ」
「またって……」
やけどしたとは言っていないのに、私が今朝やけどしたことを知ってるのか?!
食べ物の好みだけでなく、口の中まで知り尽くされているようで無性に恥ずかしい。
「篠宮、顔赤い」
「うるさい」
「今度は何想像してたんだ?」
「コーヒーが少し熱かっただけ!」
からになったカップを握り潰してゴミ箱に投げ入れた。
ホントにもう……調子狂う……。
「仕事終わったなら早く帰れば?私はもう大丈夫だし」
「そういうこと言うか?終わったら久々に晩飯おごってやろうと思ったのに」
「そんなのいいのに……」
確かに門倉とはしばらく一緒に食事とか飲みに行ったりしていない。
だけど以前とは状況が違いすぎるから、少し戸惑う。
まぶたが重くなって閉じそうになるたびに、門倉に頭を小突かれたり肩を叩かれたりしながら、報告書が仕上がったのは9時を少し過ぎた頃だった。
「やっと終わった……」
間違いがないか確認した後、報告書を部長のパソコンに送信してパソコンの電源を落とした。
「お疲れさん」
門倉は私の頭をポンポンと軽く叩く。
これは門倉の癖みたいなものなのか?
部下にもこういうことしたりするんだろうか。
いや、歳下ならともかくさすがに歳上の部下にはやらないか。
私はしょっちゅうされてるんだけど。
同期なのにまるで子供扱いだ。
顔をしかめながら帰り支度をしていると、お腹が大きな鳴き声をあげた。
よほど大きな音だったらしく、門倉はおかしそうに吹き出した。
「腹減ってんだろ。行くぞ」
「あ……仮眠室に毛布返しに行かないと」
「持ってやる。借りてきたのは俺だしな」
「……ありがとう」
なんだかやけに門倉が優しい。
いつもそうだったのか、それとも急にそうなったのか。
そんなことまでわからなくなってしまう。
「ん?ああ、ちゃんと食ったか?」
「昼休みの終わりにおにぎり食べて、3時の休憩にタマゴサンド食べた」
「そうか。なら良かった」
門倉はなんともなさそうな顔をして笑っている。
「わざわざ仮眠室から毛布借りて来てくれたの?」
「まあな。おまえなんか寒そうだったし、蒼白い顔してたから」
「ありがと、あったかかった」
素直にお礼を言って、今度はやけどしないようにゆっくりコーヒーをすすった。
「ブラック?いつもはミルク入りなのに」
「眠いから」
「ホントに大丈夫かよ。報告書仕上がる前に眠っちゃうんじゃないか?」
「そうならないように頑張ってるの」
門倉と話していると少しは眠気も覚めた。
あと少しだし、睡魔に負ける前になんとかなりそうだ。
「10分だけでも寝れば?少しは効率上がると思うぞ」
「めちゃめちゃ眠いの、起きられる自信ない。それこそ朝になるよ」
「起こしてやるけど?」
それは門倉に寝顔をさらせって、そういうこと?
いくらなんでも恥ずかしすぎる。
「いい、遠慮しとく。あと少しだし」
門倉は短くなったタバコを灰皿に投げ入れて、伸びをしながら私の方をチラッと見た。
「しょうがねぇなぁ……。篠宮が終わるまで眠らないように横で見ててやる」
「えっ、そんなの頼んでないけど!」
「キーボード枕にデスクで社泊なんてイヤだろ。眠りそうになったら起こしてやるから、黙って言うこと聞け」
うう……ないとは言い切れない……。
頬にキーボードの跡をつけて慌てふためく自分の寝起き顔を想像してしまう。
「俺のせいなんだろ?責任取ってやるよ」
「……門倉のくせにムカつく。膝枕は要らないからね」
「腕枕の方がいいのか?意外と大胆だな」
「要らんわ!」
また門倉にからかわれる前に、さっさと報告書仕上げて帰ろう。
タバコを灰皿に捨ててコーヒーを急いで飲んだ。
「またやけどすんなよ」
「またって……」
やけどしたとは言っていないのに、私が今朝やけどしたことを知ってるのか?!
食べ物の好みだけでなく、口の中まで知り尽くされているようで無性に恥ずかしい。
「篠宮、顔赤い」
「うるさい」
「今度は何想像してたんだ?」
「コーヒーが少し熱かっただけ!」
からになったカップを握り潰してゴミ箱に投げ入れた。
ホントにもう……調子狂う……。
「仕事終わったなら早く帰れば?私はもう大丈夫だし」
「そういうこと言うか?終わったら久々に晩飯おごってやろうと思ったのに」
「そんなのいいのに……」
確かに門倉とはしばらく一緒に食事とか飲みに行ったりしていない。
だけど以前とは状況が違いすぎるから、少し戸惑う。
まぶたが重くなって閉じそうになるたびに、門倉に頭を小突かれたり肩を叩かれたりしながら、報告書が仕上がったのは9時を少し過ぎた頃だった。
「やっと終わった……」
間違いがないか確認した後、報告書を部長のパソコンに送信してパソコンの電源を落とした。
「お疲れさん」
門倉は私の頭をポンポンと軽く叩く。
これは門倉の癖みたいなものなのか?
部下にもこういうことしたりするんだろうか。
いや、歳下ならともかくさすがに歳上の部下にはやらないか。
私はしょっちゅうされてるんだけど。
同期なのにまるで子供扱いだ。
顔をしかめながら帰り支度をしていると、お腹が大きな鳴き声をあげた。
よほど大きな音だったらしく、門倉はおかしそうに吹き出した。
「腹減ってんだろ。行くぞ」
「あ……仮眠室に毛布返しに行かないと」
「持ってやる。借りてきたのは俺だしな」
「……ありがとう」
なんだかやけに門倉が優しい。
いつもそうだったのか、それとも急にそうなったのか。
そんなことまでわからなくなってしまう。
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