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王が住む教室

文戸玲

意外なやつ



 生徒玄関に向かうと,意外なやつに声を掛けられた。

「帰るの? 立候補用紙は出した?」

 柔らかい言葉遣いなのに,凍り付くような冷たい声にぞっとした。制服姿の相良と,ムーミン谷からやってきたチンアナゴがニョロニョロと金魚の糞のようにくっついてきていた。

「さっき出してきて,今から帰るんだよ。お前の方は,部活はいいのか? ファンを待たせて人気投票に悪影響が出ないといいけどな」
「これから生徒会室に行くところなんだ。あ,ぼくも生徒会長に立候補することになったんだ。よろしくね」

 そう言って,相良は手を差し出してきた。「ムーミン谷からやってきたやつに聞いたよ」と言って力を込めて差し出された手を握ると,相良は笑い出した。

「本当に君は面白い。また名前を教えてね」

 じゃ,と背中越しに手を挙げて相良は生徒会室へと向かっていった。何を言っているのかよく理解が出来ていないチンアナゴは,少しあたふたした後におれに中指を立てて小走りで相良の後ろを追いかけていった。


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