王が住む教室

文戸玲

ファンクラブ


 集合場所が図書室になってから何日か経つが,いまだに慣れない。放課後の図書室はほとんど人気がなく,さぼったかすっぽかしてしまったかで図書委員がいないとなると二人きりという時もあった。今日はカウンターに眼鏡をかけた女の子が本の整理をしている。

「驚いたわね。龍樹くんが立候補するなんて」

 常友は腕組みをしながら唸った。腕に乗った胸がカッターシャツをさらに盛り上げた。自分で分かってやっているのかと疑いたくなるほど女っぽいしぐさをこいつはする。

「正直,宮坂くん相手ならどうってことないんだけど,龍樹くんは となると話は変わってくるね」
「そうなのか? なんか教室の雰囲気もそんな感じだったけど」

 ふうっとため息をついて,窓の外を指さした。

「あれを見て。グランドに制服の,とても部活動に熱心に取り組んでいるとは思えない人たちがいるでしょ」

 指さされた方を見ると,サッカーグランドを囲むように制服の塊がちらほらと散見される。

「何やってんだ? あいつら」
「あれは全部龍樹のファンよ。学年もばらばらだし,男の子もいるでしょ。顔も男前だけど,サッカーの腕も抜群なの。名門校から声がかかっているくらいなんだけど,あまりにも惚れ惚れするプレーをするから男子のファンもいるってわけ。おまけにちょい悪。女子ってそういうの好きだし,男子は歯向かえないでしょ」

 常友はそう説明した。くだらない,といった態度で話す様子は,自分の気持ちを押し殺しているようにも見えた。


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