王が住む教室
図書室にて
休憩時間に,図書室に寄った。図書館に足を運ぶのも人生で初めてだし,自分から本を手に取ろうと思ったことすらない。そんなおれが学校で熱心にノートを取り,挙句の果てに図書室の場所を聞いてまで本を探しに来るなんて,少し前なら考えられなかった。
演説について考えてみたものの,何をどう書けばいいのかさっぱり分からない。そもそも,演説がどういうものかも分からない。
自分の能力に嫌気がさし,イライラしていても仕方がないからこうして本を探しに来た。図書室にいるおばさんに,「文章を書ける本はないか」と尋ねると,嬉しそうな顔をして本棚を案内してくれた。おすすめの本をいくらか手渡しきたが,何となく恥ずかしくなって「自分で気に入ったのを見つけるからどっか行ってろ」とぶっきらぼうに言った。それでもおばさんは嬉しそうだった。
どの本がいいか決めあぐねていると,後ろで人の気配がしたので振り向いた。
顎に手を当てて不思議そうな顔をした常友がこちらをじっと見つめていた。
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