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葦と歯車~へんてこ少女たちの終末神話~

渡莉鴉

憂愁の花Ⅱ




「大丈夫?お嬢さん」
「ふぇはぇぇ…そらから…まど……」
「明らか大丈夫じゃないわよこれ」
しばらく目をちかちかさせていた少女はシナダに手を差し出されてようやく起き上がった。肩に乗っているウサギは目をチカチカさせて威嚇している。
「ウミ、コイツラ、ヤバイ。撃ツ?」
「撃たない!…手、ありがとうございます。びっくりしちゃいました」
ジッパーやポケットだらけのワンピースの汚れを払う。ウサギの目と同じ澄んだ紫のゴーグルを付けており、髪は石鹸の匂いと油のような臭いが混ざり合っていた。
「こんな所でどうしたの?ここは草と錆びた機械しかないよ」
全く人のことは言えないのだが、まだ幼さの残る少女がひとりでいるような場所ではない。
「私、スクラップ収集をしていて…でも探索道具を一部忘れて困っていたんです」
「なるほど、廃金属集めね」
この世界の人間は生計を立てる方法が非常に少ない。大量の植物やコンクリートの廃屋を片付けるには人手や機械が足らないことが多く、整地を行える生産者は限られてくるからだ。大抵の者は遠征して狩りや採集で生活をするため、彼女のような人間は決して珍しくなかった。
「あたし達は道具一式持っているの。しばらく一緒に行動しない?」
「え…いいんですか?」
「もちろんよ。…そいつがやらかした分何かしてあげられないと気が済まないし」
ヒエダが冷たい流し目を向けるとシナダは真顔でてへぺろをしている。バチンとはたくとそのままぴったり九十度に頭を下げ、その様子に少女はぷっと吹き出した。
「およ?何か面白かったかな」
「ふふっ…あははは!もう…面白さしかないですよ!」
涙を拭いて向き直ると少女はニカっと歯を見せて笑った。
「私は卯海ウミっていいます。少しの間よろしくお願いしますね」


衣兎イト、様子を見てきて」
ウミが背中のボタンを押すとウサギは建物の中に入っていった。
「あの子に何させるの?」
「ここのマッピングですね。自分で動いてくれる端末のようなものなので重宝してます」
まあ人工知能にしては感情的で厄介なAIなんですけど、と溜息をつく。何かしら苦労を被っているらしい。
「シナダちゃんとヒエダちゃんは何で廃墟巡りをしてるんですか?」
「あたしたちは旅人だから採集をしたいってのもあるんだけど…一番の目的は情報収集かな」
「情報?」
ヒエダの端末で周囲を撮影していたシナダが振り返る。
「この建物が元の姿だった頃、世界はどうなっていたか知ってる?」
「聞いたことしかないですけど…コンクリートで地面を固めた国がたくさんあって、人々は数十億人生きていて、当時の最新技術を巡って戦争をしていたとか…」
「そう、ここも昔は何か文化や技術があったはず。その情報が欲しいんだ」
「あたしがその集めた情報をまとめてるの。これからを生きていくには昔のことも学ばないとね、温故知新ってやつよ」
ピコピコ、と音がしたと思うと植物をかきわけイトが戻ってきた。ウミが腕を伸ばすとそこから肩へ飛び移る。
「ウミ、ココ広イ」
「お疲れさま。見せて」
目をシパシパさせてから淡い紫色のホログラムを映し出す。今の時代珍しいものでもないが、汎用性と持ち主の好みが前面に出ているAIだ。
三人で覗き込むと大まかな地図が表示されており、端にはエネルギーを感知しているであろうメーターの針が動いて数値が変動している。建物内部の中央に大きな空間があり、天井はドーム状になっているのがわかる。
「…温室?」
「っぽいね。めちゃくちゃ広いけど」
「さっき見た場所もそうだったけど、この辺りは植物の研究が多いのかしら…?」
「よし、スクラップを集めながら探索してみようか」
シナダは一階が崩壊しているのを確認すると、左腕にフックショットのようなものを装着して二階に向けた。バシュッとコンクリートの柱にフックを刺すとそのまま飛ぶように登り、縄を下へ降ろす。
「…シナダちゃんすごいですね。あんな道具を使いこなすなんて」
「あの子にしか使えない手段だから助かってるわ。じゃ、ウミも一緒に引き上げてもらおっか」
そもそもフックをどうやって射出するのか、刺したあとどうやって固定しているのかなど、色々と疑問に思いながらウミは引き上げてもらう。そしてウサギが落ちていないことを確認して周りを見渡し、目を見張った。
「えっ…?」


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