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真昼の月

彩火透火

二ノ月 夜空の月④

 藤たちが次にしたことは身体測定だった。

 身長。体重。胸囲。座高。体力測定。身体調査。
 そして、魔力測定。

 身長やら体重やらはいいだろう。体力測定も然り。
 身体調査は視力やら聴力やら、つまり身体に欠陥がないか調べることで、これもいいだろう。

 問題は魔力測定だ。
 なんだそりゃといったところである。

 言葉はわかる。魔力の測定だ。だがンなのどうやって調べる?
 首をかしげる藤に、身体測定を監督していた白衣の魔女は一メートル前に貼られたテープを指差して、言った。

「はい、そこに立ってー」

 立った。

「はい、目を閉じてー」

 閉じた。

「はい、息を吸ってー。吐いてー」

 スー、ハー

「はい、全身の毛穴をひらく感じでー」

 全身の毛穴をひらく? こうか?

「はい、鼻の穴は広げなくていいのよー」

 ふむ。

「はい、集中!」

 集中。自然にムッと眉間に皺が寄った。

 すると全身がぽっと生暖かい空気の中に放り込まれたような感じに包まれた。
 驚いて目をひらくと全身をオーラが包み込んでいた。青白っぽくて光っている。
 なんだこりゃ、と見ていると、

「はい、いいよー」

 白衣の魔女は紙に文字を書き込んでいた。
 キツネにつままれたような感じでその場を離れる。

 はい、そこに立ってー、背中で聞こえる。
 振り返ると別の奴が青白い光に包まれていた。
 やっぱりそいつも、キツネにつままれたような顔をしていた。

 あの光が魔力、ということだろう。よくわからないが。


■■■
二ノ月 夜空の月⑤


 身体測定のあとはまた最初に魔導文字の説明を受けた部屋に集まった。
 最初と同じように座る。このころには他の子とも話すようになっていたけど、隣にはやっぱり凛が座った。

 どうだった、と身体測定の紙を見ようとしたら、凛は顔を赤くして、ばっと紙に覆い被さり、だめっと怒鳴った。
 何が恥ずかしいんだろ、と疑問に思ったが、そういうものなのだろうと学習した。
 身体測定の結果は恥ずかしいもの。どこか間違っている、と思えなくもない。

 集まってからしばらくして部屋に入ってきたのも最初と同じ大谷のおじさんだった。

「一ヶ月ご苦労様でした。これで君達は魔力の使い方を覚えた、ということになります」

 えっ、と周りで声があがった。寝耳に水だ、藤も思った。
 大谷のおじさんは笑い、冊子を掲げ、

「これを読ませたのは魔道文字の解読はもちろん、魔力の使い方を覚えさせるためだったのです。
 魔道文字を読むのには魔力が必要だと言ったでしょう? 魔力が使えなくては絶対に読めません。魔法とはまず魔力と人の意思で発現するものなのです」

 冊子といってることが違うような、気がしなくもない。

「いえいえ違いません。呪文というのはつまるところ人の意思を言葉にしたものです。人の意思とはまさに水のように簡単に形が変わってしまいます。人の意志を決まった容器に入れたものが呪文なのです。言葉によって不安定な意思を明確にする、それが呪文の必要性なのです」

 なるほど、藤は納得したように小さく二度頷いた。

「ですが魔道文字を読むくらいなら「読もう」という意思と魔力でなんとかなるのです。それは話す言葉も同じです。君達の話す言葉は君達の魔力が反応してすでに魔道言語を話しているのです。自分ではまだよくわからないと思いますがね」

 あ、と呟いてみる。あ、はやはり、あだった。

「そして君達が魔力の使い方を覚えたのを表すのが魔力測定です。まだまだ君達の魔力の大きさはきっと身体を包むくらいだと思いますが、立派な魔法使いになれば、君達が寝泊りしている寮よりも高い魔力になる。……かもしれませんね」

 なんじゃそりゃ。

「さてと……話はこれくらいにしましょう。明日から君達には魔道学園ウィザルドに通ってもらうことになります。今からウィザルドに通うための制服や、教本などを渡します。では名前を呼ばれたら身体測定の結果表を持って前にきてください。
 井沢くん――


 ■


 こうして藤たちの魔法使いへの道は始まった。一歩目を踏み出したのだ。
 しかし二歩目で躓くことになると誰に予測できるだろうか。
 それはもちろん藤にもわかっていなかった。

 転入初日目へと続く。


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二ノ月 夜空の月⑥


 魔道学園ウィザルドは初等部、中等部、高等部の三つに分かれている。
 大学部はない。必要がないからだ。

 初等部というのは普通の小学校と変わりはない。
 性格形成に重要な幼少期に下手に魔法は教えない。魔法という言葉も使わない。
 魔法はともすれば危険なものであるから善悪のはっきりしない子供に魔法を教えて、へたな問題を起こされてはかなわない。
 だから初等部では社会に必要なごく最低限の知識しか与えない。
 あとは仲間を作るということや協調性といった常識を自然に叩き込む。
 ただ魔法を教えないといっても、魔道言語を使用しているので、魔力の安定度は藤たちとは比べ物にならない。卒業は六年。

 そして中等部。藤たちが入ることになるクラスだ。
 ここで初めて魔法という言葉を用いられる。
 さらに高等な知識と魔法の基本的知識を与えられるようになる。
 基本的知識、すなわち呪文と魔力のコントロールと下位魔法の確実な発現とコントロール。
 これが中等部における最大の学習目的である。これを為さずして中等部の卒業はありえない。たとえ何年かかってもだ。
 もちろん勉学にも嘘だろ?と思わずにはいられないボーダーラインも存在する。

 最後の高等部。
 ここは進路によっていくつかに別れることになる。
 つまり魔術や呪術、召霊と専門的な魔法の習得を目指す。
 さらに高等な知識も要求される。
 そして高等部に卒業はない。
 三年の義務教育を過ごし、簡単な上位魔法を覚えてぼく魔術士といえば、もう魔術士である。
 これで魔法使いとして社会に出ることができる。
 が、何年いてもいい。
 ただマスタークラスになればとっとと追い出されることになる。

 大学部はない。必要ないからである。


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