真昼の月
二ノ月 夜空の月②
始まりはやはり転校初日だろうと思える。
なぜなら二日目にはもう嫌がらせが始まっていたからだ。
けれど、とりあえずまずは来た当初のことから考えてみる。
この魔法の学校に着いてまずさせらたことといえば『魔道文字』と呼ばれる奇妙な言語の習得だった。
■
飛行船で連れられてきた次の日の朝、藤たち飛行船で連れてこられた子供たちは会議室みたいな部屋に集まらされた。
長机がずらりと二列で並び、三つずつ椅子が収まっていて、正面には白板が。
それだけだ。他には何もない。藤たちはたいして言葉を交わすことなく椅子に座った。
隣には当たり前のように凛が座る。
寝てるとき以外は凛が隣でずっと喋っていたので凛のことがよくわかった。
凛はよく喋る。凛は物怖じしない。凛はよく笑うんだ。
藤は凛が喋っていたことに軽く相づちをうったり、うーんと考える振りをしたりしてごまかしていたが内心では楽しかった。どきどきしていた。
凛は可愛かった。
凛と話しながら待っていると五十くらいのおじさんが部屋に入ってきた。
背をピンと張り、そこに年齢は感じさせない。
ただ白髪混じりの髪の毛と長い顔に刻まれた皺から見た感想が五十くらいとなった。
そのおじさんは大谷と名乗った。
名乗ってから大谷のおじさんはいくつかの紙束を一番前の席に置いて、後ろにまわしなさい、と言った。
藤は受け取った紙束を見ながら残りを後ろにまわす。
紙束の表紙にはいびつな円形の、おそらくここ、マギス島の絵が描かれていた。
その上にまるでブロックが重なり合ったような奇妙な図柄が並んでいる。
ぴらりと中をひらいて見るとその奇妙な図柄がびっしりと行儀よく、並んでいた。
「なにかなぁこれ?」
凛がぺらぺらとページをめくりながら小声で呟いた。
どのページも、どのページも図形がづらづらと並んでいるだけなのだ。わけがわからない。
が、想像はつく。
藤はそれを言おうとして凛に顔を寄せたが、同時に大谷のおじさんが説明を始めた。
「おそらくここに書いてあることは君らには何がなんだかわからないでしょう」
うん、とみなが頷く。
大谷のおじさんは笑ってからすぐに、これは文字です、と片手に掲げた紙束の表紙に書かれた奇妙な図形を指でなぞりながら言った。
藤は自分の紙束に目を落とし、眺める。
これが文字とは……象形文字もびっくりである。
さらに続けて大谷のおじさんは藤たちを驚かせた。
「君達にはこの文字が読めるはずなんです」
藤は思わずえっ、という顔して大谷のおじさんを見上げてしまった。
見回せば他の面々も同様の顔をしている。
大谷のおじさんはまた笑い、全員の顔を見回すように顔を振り、言った。
「では表紙の文字を見てください」
見た。どう見ても奇妙な図形でしかない。
凛がちらりと見てくる。藤は首を振った。
「じっと見てください」
じっと見た。奇妙な図形だ。
「じっとじーっと。……さあ、その文字が段々、段々、自分の知る文字に見えてくる」
催眠術かいっ! と、心で突っ込んだそのとき、
「あっ」
奇妙な図形がゆらっと崩れたような気がした。
大谷のおじさんがおっという顔を向ける。凛がちらっと横目で見てくる。
藤はじっとじーっと奇妙な文字を見つづけた。
ゆらゆらと奇妙な図形は崩れ、日本語の文字に変換される。
でもすぐに元の奇妙な図形に戻ってしまった。
だけどなんて書いてあるかは見た。
『魔道都市マギス。魔道学園ウィザルドへようこそ』
と、書かれていた。絶対だ。
藤はふう、と息をつき、疲れたように背を椅子に預けた。
「どうやら読めたようだね?」
いつのまにか大谷のおじさんが側に立っていた。凛がこっちを見てることに気づく。他のみんなもこっちを見ていた。
藤は大谷のおじさんを見上げると、こくりと頷く。
じゃあ読んでみて下さい、と大谷のおじさんが言ったので、藤は表紙に目を落とす。思い出すようにいっぱく間をおいてから言った。
「えーと……『魔道都市マギス。魔道学園ウィザルドへようこそ』って書いてあります」
「はい、正解です」
大谷のおじさんは笑って、言って、白板の方へ戻っていった。
凛がすごいすごい、と小声で言ってくる。藤は照れたように笑った。
白板の前に戻った大谷のおじさんが話し始めた。
「今、広沢くんが言った魔道学園ウィザルドというのは君達が入学することになる魔法の学校です。魔道都市マギスというのはこのマギス島のことです。島全体をさして我々は魔道都市マギスと呼んでいるのです。そしてこの魔道都市は魔道学園のために造られた魔道学園の教師と生徒のための街なのです。おそらく君達も休日などには色々とお世話になることでしょう」
「お金はどうするんですか?」
少年の一人が聞いた。
「お金は必要ありません」
「必要ない?」
「そうです。物を食べるのにも、施設で遊ぶにもお金はいりません。この学生証を見せればすべて事足ります」
言って大谷はキャッシュカード大のカードをみなに見せた。
「ですが、タダ、というわけではありません。君達のパーソナルデータに何を食べた、どこで遊んだということがすべて記録には残ります。そして君達が将来立派な魔法使いとして社会に出て行った後に少しずつ返してもらう、ということになります。ですのであまり羽目を外し過ぎないようにお願いします」
借金というわけだ。
「さてと、もう一度表紙を見てください」
見た。
「この文字は『魔道文字』といいます。魔法使いになる素質、つまり魔力を持っていないと読むことができない文字です。そして話す言葉は『魔道言語』といいます。僕が今話しているのも魔道言語なんです。でもみなさんにはちゃんとぼくの声がきこえていますね?」
頷く。
「魔道言語は念話、テレパシーに似た魔法の一種です。魔道言語を知ることにより、色々な国の人と自由に話すことができるのです。そしてここマギスには色々な国の人がいます。魔法使いの人ならば言語を変換する魔法でどの国の言葉も理解することができますが、お店の人などには普通の人もいます。そういう人には魔道言語で話してあげないと言葉が通じません。だから君達がまず初めにすることは、この魔道文字を習得することなのです」
えーっとそこらから声が上がった。
そりゃそうだ。言語一つ習得するのにどれくらいの年月が……
「心配ないですよ。この冊子を全部読むことができれば、魔道文字はほとんど完璧です。そしてこの冊子を読み終えたころには魔道言語も話すことができる力がついているはずなのです」
大谷がぱんと紙束を叩く。
話は終わった。
一ヶ月間、冊子と格闘する毎日が始まった。
■■■
二ノ月 夜空の月③
「終わったぁ~~」
冊子とのカクトウを初めてから一ヶ月。解放感たっぷりの声を響かせながら凜は万歳するように腕を伸ばしたままテーブルに倒れこんだ。
まぁ一ヶ月毎日冊子とにらめっこしていたらそんな声も出るだろう。
藤の方はもう一週間くらい前に読み終わっていて、ずいぶんと暇を持て余していた。
この一週間という差はひとえに集中力の差だろう。
一緒に読んでいるときの凛はいつも何かしら思いつくと、口にせずにいられないとばかりに喋りかけてきた。無駄な話が多かった。
が、さすがに藤が読み終わってしまうと焦り始めて真剣に読破しようと集中するようになっていた。
藤は途端に退屈になってしまったので凛に話しかけると、凛は黙って、と相手にしてくれない。
どうしようもなく、ただ凛の隣に座ってじっとしていた。
しかし、まるで外国を一人出歩くようで怖くて外にも出られなかった、というのはいかにも情けない。しかたのないことかもしれないが。
結局藤は凛に付き合ってもう一度冊子に目を通すようになっていた。
冊子に書かれていたことは概ね生活のことと魔法のことだった。
『魔道都市マギスの説明』『魔法のこと』『魔法の使い道』『授業のこと』『校歌』『校是』などなど。
校是と校歌はまあ、いいだろう。魔道都市マギスの説明も、まあいい。
魔導都市マギスには街が一つあり、あとは訓練施設みたいのが島中に点在しているということくらいだ。
おいしいケーキ屋の説明も今は特には思い返す必要はないと思える。
『魔法』のことは復習しといた方がいいだろう。
『魔法』というのは魔力と呪文で発現させるものだという。これを基本的にマギスでは魔術と呼ぶらしい。『フロー』などがこれの一種である。
マスタークラスになれば示した空間を瞬間、熱爆発させる『フレア』や瞬間移動、つまり『テレポート』などができるようになるのだという。
『フロー』などの簡単なやつを下位魔術。後者の分子・原子をいじくるような難しいやつを上位魔術と呼ぶらしく、上位魔術を使う者たちのことを世間一般に魔術士と呼ぶのだという。
では次に『呪術』。
魔力と呪文で発現させるというところは魔術と一緒だ。
でも呪術はもっと大規模で、魔方陣を描き、触媒をもって行われる儀式呪文を使う、らしい。
実はよくわからなかった。
次に『召霊』。
これも魔力と呪文で発現させるというところは魔術と一緒だ。
でも特殊な才能がいる。
その才能とは『声』だ。召霊士になるには特殊な声が必要だということだった。
そして魔法の亜種としてはこれだ。武器や拳に魔力を巻きつけて攻撃力を増す『魔闘』。
これを使う者を単純に魔闘士と呼ぶ。
魔闘士になるには魔力の強化だけでなく、格闘のセンスと訓練も必要なので結構きついのだそうだ。
これらをまとめて『魔法』と呼んだ。
魔法のことはこれくらいでいいか。あとは魔法の使い道かな……。
魔法の使い道は基本的にはやはり戦闘である。
人同士の戦争もあれば、人を襲う獣を退治するときなどにも役に立つ。
魔法は強力な力なので魔法使いはどこの国も欲しがる人材ならしい。需要がたっぷりで食いっぱぐれはないということだった。
授業のことについてはほとんど語ることもない。
普通の中学の授業に魔法関係の特別授業がサンドイッチされたもの、と考えてまず間違いない。
魔法関係の特別授業はほとんどが魔法を習得するための実技である。
あとはこの授業はどんな、だとか、あの授業はどこどこでやる、だとかが大雑把にかかれていた。
とにもかくにもこれで、魔道言語の習得はなったという。
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なぜなら二日目にはもう嫌がらせが始まっていたからだ。
けれど、とりあえずまずは来た当初のことから考えてみる。
この魔法の学校に着いてまずさせらたことといえば『魔道文字』と呼ばれる奇妙な言語の習得だった。
■
飛行船で連れられてきた次の日の朝、藤たち飛行船で連れてこられた子供たちは会議室みたいな部屋に集まらされた。
長机がずらりと二列で並び、三つずつ椅子が収まっていて、正面には白板が。
それだけだ。他には何もない。藤たちはたいして言葉を交わすことなく椅子に座った。
隣には当たり前のように凛が座る。
寝てるとき以外は凛が隣でずっと喋っていたので凛のことがよくわかった。
凛はよく喋る。凛は物怖じしない。凛はよく笑うんだ。
藤は凛が喋っていたことに軽く相づちをうったり、うーんと考える振りをしたりしてごまかしていたが内心では楽しかった。どきどきしていた。
凛は可愛かった。
凛と話しながら待っていると五十くらいのおじさんが部屋に入ってきた。
背をピンと張り、そこに年齢は感じさせない。
ただ白髪混じりの髪の毛と長い顔に刻まれた皺から見た感想が五十くらいとなった。
そのおじさんは大谷と名乗った。
名乗ってから大谷のおじさんはいくつかの紙束を一番前の席に置いて、後ろにまわしなさい、と言った。
藤は受け取った紙束を見ながら残りを後ろにまわす。
紙束の表紙にはいびつな円形の、おそらくここ、マギス島の絵が描かれていた。
その上にまるでブロックが重なり合ったような奇妙な図柄が並んでいる。
ぴらりと中をひらいて見るとその奇妙な図柄がびっしりと行儀よく、並んでいた。
「なにかなぁこれ?」
凛がぺらぺらとページをめくりながら小声で呟いた。
どのページも、どのページも図形がづらづらと並んでいるだけなのだ。わけがわからない。
が、想像はつく。
藤はそれを言おうとして凛に顔を寄せたが、同時に大谷のおじさんが説明を始めた。
「おそらくここに書いてあることは君らには何がなんだかわからないでしょう」
うん、とみなが頷く。
大谷のおじさんは笑ってからすぐに、これは文字です、と片手に掲げた紙束の表紙に書かれた奇妙な図形を指でなぞりながら言った。
藤は自分の紙束に目を落とし、眺める。
これが文字とは……象形文字もびっくりである。
さらに続けて大谷のおじさんは藤たちを驚かせた。
「君達にはこの文字が読めるはずなんです」
藤は思わずえっ、という顔して大谷のおじさんを見上げてしまった。
見回せば他の面々も同様の顔をしている。
大谷のおじさんはまた笑い、全員の顔を見回すように顔を振り、言った。
「では表紙の文字を見てください」
見た。どう見ても奇妙な図形でしかない。
凛がちらりと見てくる。藤は首を振った。
「じっと見てください」
じっと見た。奇妙な図形だ。
「じっとじーっと。……さあ、その文字が段々、段々、自分の知る文字に見えてくる」
催眠術かいっ! と、心で突っ込んだそのとき、
「あっ」
奇妙な図形がゆらっと崩れたような気がした。
大谷のおじさんがおっという顔を向ける。凛がちらっと横目で見てくる。
藤はじっとじーっと奇妙な文字を見つづけた。
ゆらゆらと奇妙な図形は崩れ、日本語の文字に変換される。
でもすぐに元の奇妙な図形に戻ってしまった。
だけどなんて書いてあるかは見た。
『魔道都市マギス。魔道学園ウィザルドへようこそ』
と、書かれていた。絶対だ。
藤はふう、と息をつき、疲れたように背を椅子に預けた。
「どうやら読めたようだね?」
いつのまにか大谷のおじさんが側に立っていた。凛がこっちを見てることに気づく。他のみんなもこっちを見ていた。
藤は大谷のおじさんを見上げると、こくりと頷く。
じゃあ読んでみて下さい、と大谷のおじさんが言ったので、藤は表紙に目を落とす。思い出すようにいっぱく間をおいてから言った。
「えーと……『魔道都市マギス。魔道学園ウィザルドへようこそ』って書いてあります」
「はい、正解です」
大谷のおじさんは笑って、言って、白板の方へ戻っていった。
凛がすごいすごい、と小声で言ってくる。藤は照れたように笑った。
白板の前に戻った大谷のおじさんが話し始めた。
「今、広沢くんが言った魔道学園ウィザルドというのは君達が入学することになる魔法の学校です。魔道都市マギスというのはこのマギス島のことです。島全体をさして我々は魔道都市マギスと呼んでいるのです。そしてこの魔道都市は魔道学園のために造られた魔道学園の教師と生徒のための街なのです。おそらく君達も休日などには色々とお世話になることでしょう」
「お金はどうするんですか?」
少年の一人が聞いた。
「お金は必要ありません」
「必要ない?」
「そうです。物を食べるのにも、施設で遊ぶにもお金はいりません。この学生証を見せればすべて事足ります」
言って大谷はキャッシュカード大のカードをみなに見せた。
「ですが、タダ、というわけではありません。君達のパーソナルデータに何を食べた、どこで遊んだということがすべて記録には残ります。そして君達が将来立派な魔法使いとして社会に出て行った後に少しずつ返してもらう、ということになります。ですのであまり羽目を外し過ぎないようにお願いします」
借金というわけだ。
「さてと、もう一度表紙を見てください」
見た。
「この文字は『魔道文字』といいます。魔法使いになる素質、つまり魔力を持っていないと読むことができない文字です。そして話す言葉は『魔道言語』といいます。僕が今話しているのも魔道言語なんです。でもみなさんにはちゃんとぼくの声がきこえていますね?」
頷く。
「魔道言語は念話、テレパシーに似た魔法の一種です。魔道言語を知ることにより、色々な国の人と自由に話すことができるのです。そしてここマギスには色々な国の人がいます。魔法使いの人ならば言語を変換する魔法でどの国の言葉も理解することができますが、お店の人などには普通の人もいます。そういう人には魔道言語で話してあげないと言葉が通じません。だから君達がまず初めにすることは、この魔道文字を習得することなのです」
えーっとそこらから声が上がった。
そりゃそうだ。言語一つ習得するのにどれくらいの年月が……
「心配ないですよ。この冊子を全部読むことができれば、魔道文字はほとんど完璧です。そしてこの冊子を読み終えたころには魔道言語も話すことができる力がついているはずなのです」
大谷がぱんと紙束を叩く。
話は終わった。
一ヶ月間、冊子と格闘する毎日が始まった。
■■■
二ノ月 夜空の月③
「終わったぁ~~」
冊子とのカクトウを初めてから一ヶ月。解放感たっぷりの声を響かせながら凜は万歳するように腕を伸ばしたままテーブルに倒れこんだ。
まぁ一ヶ月毎日冊子とにらめっこしていたらそんな声も出るだろう。
藤の方はもう一週間くらい前に読み終わっていて、ずいぶんと暇を持て余していた。
この一週間という差はひとえに集中力の差だろう。
一緒に読んでいるときの凛はいつも何かしら思いつくと、口にせずにいられないとばかりに喋りかけてきた。無駄な話が多かった。
が、さすがに藤が読み終わってしまうと焦り始めて真剣に読破しようと集中するようになっていた。
藤は途端に退屈になってしまったので凛に話しかけると、凛は黙って、と相手にしてくれない。
どうしようもなく、ただ凛の隣に座ってじっとしていた。
しかし、まるで外国を一人出歩くようで怖くて外にも出られなかった、というのはいかにも情けない。しかたのないことかもしれないが。
結局藤は凛に付き合ってもう一度冊子に目を通すようになっていた。
冊子に書かれていたことは概ね生活のことと魔法のことだった。
『魔道都市マギスの説明』『魔法のこと』『魔法の使い道』『授業のこと』『校歌』『校是』などなど。
校是と校歌はまあ、いいだろう。魔道都市マギスの説明も、まあいい。
魔導都市マギスには街が一つあり、あとは訓練施設みたいのが島中に点在しているということくらいだ。
おいしいケーキ屋の説明も今は特には思い返す必要はないと思える。
『魔法』のことは復習しといた方がいいだろう。
『魔法』というのは魔力と呪文で発現させるものだという。これを基本的にマギスでは魔術と呼ぶらしい。『フロー』などがこれの一種である。
マスタークラスになれば示した空間を瞬間、熱爆発させる『フレア』や瞬間移動、つまり『テレポート』などができるようになるのだという。
『フロー』などの簡単なやつを下位魔術。後者の分子・原子をいじくるような難しいやつを上位魔術と呼ぶらしく、上位魔術を使う者たちのことを世間一般に魔術士と呼ぶのだという。
では次に『呪術』。
魔力と呪文で発現させるというところは魔術と一緒だ。
でも呪術はもっと大規模で、魔方陣を描き、触媒をもって行われる儀式呪文を使う、らしい。
実はよくわからなかった。
次に『召霊』。
これも魔力と呪文で発現させるというところは魔術と一緒だ。
でも特殊な才能がいる。
その才能とは『声』だ。召霊士になるには特殊な声が必要だということだった。
そして魔法の亜種としてはこれだ。武器や拳に魔力を巻きつけて攻撃力を増す『魔闘』。
これを使う者を単純に魔闘士と呼ぶ。
魔闘士になるには魔力の強化だけでなく、格闘のセンスと訓練も必要なので結構きついのだそうだ。
これらをまとめて『魔法』と呼んだ。
魔法のことはこれくらいでいいか。あとは魔法の使い道かな……。
魔法の使い道は基本的にはやはり戦闘である。
人同士の戦争もあれば、人を襲う獣を退治するときなどにも役に立つ。
魔法は強力な力なので魔法使いはどこの国も欲しがる人材ならしい。需要がたっぷりで食いっぱぐれはないということだった。
授業のことについてはほとんど語ることもない。
普通の中学の授業に魔法関係の特別授業がサンドイッチされたもの、と考えてまず間違いない。
魔法関係の特別授業はほとんどが魔法を習得するための実技である。
あとはこの授業はどんな、だとか、あの授業はどこどこでやる、だとかが大雑把にかかれていた。
とにもかくにもこれで、魔道言語の習得はなったという。
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