スクールカースト最下層がイケメンに魔改造されたけど、恋愛スキルを誰かください。

真曽木トウル

第54話 ところで『帰省』を『キショウ』って読んでたのは僕だけでしょうか。

   ◇ ◇ ◇




 誰が予想しただろう。
 新幹線もまともにチケットとれないだろう、このお盆のさしせまった時期に、翌日出発できるなんて。


 しかも。






(――――なんで、プライベートジェットっ!!??)






 なぜか僕たちは、カラオケした翌日には、小ぶりながら超豪華な飛行機の中で、快適な空の旅をお過ごししていた。


 そのまま眠れるんじゃないかという快適な座席に腰かけて、夢かまことか境界線が曖昧あいまいになりそうな非日常を僕は体感していた。


 え、ええと、帰省……だったんだよね、これ?
 帰省ってことは僕の家方面に向かってるよね?
 リゾート行くとかじゃないよね?




「すっごいねーさすがまほちゃん。
 車でも出してくれるかと思ったら、まさかプライベートジェットを出してくれるなんて!」




 にこにこ笑うサキさん。


 そのサキさんの完璧美人な笑顔を、強烈な目でにらみつけているのは、巨乳黒髪美少女……もとい、なんだかとっても久しぶりに会った、明王寺みょうおうじまほろさんだった。




「そっちが『責任をとって移動手段を出せ』ってボクに言ってきたんでしょう!?」


「だってまほちゃん、私に借りがあるよね?」


「……だから、その……」




 うん。
 明王寺さんは、サキさんの年齢をサークルのみんなに暴いたという、大きな借りがある。


 しかもその結果、サークルの女子のなかでも『あれはない』という結論になりつつあって。
 逆に、どちらかというと明王寺さんが、女の子たちのなかで孤立ぎみになりつつあるらしい。
 ううん、自業自得というべきか……。


 ……あかん、泣きそうな顔してはる(←4ヶ月の京都生活で微妙に関西弁を習得しつつある)。




「で、でもさ!
 今回は助かったよ、本当に!
 ありがとう明王寺さん!!」


「あれ、でも、もとはと言えば明王寺が色々とアレなことをしたのが原因でもあるような気が」


「って、新橋さんっ!?」




 一瞬、濡れたように煌めく瞳で、じっとこちらをみた明王寺さんだけど、今日はいつもみたいに僕にまつわりついてくることはなく、おとなしく席についている。


 ホッとするけれど、でも何だかいつもの明王寺さんらしくなくて心配になるところもある。
 いや、いまもしいつもの明王寺さんだったら、たぶんめっちゃ困るんだけど。。。。


 それにしても、明王寺さんのおうちは、ものすごいお金持ちなんだな……と改めて感じた。




 プライベートジェットのなかに乗っているのは、
 僕、神宮寺賢一郎。
 ジェットの持ち主、明王寺まほろさん。
 提案者、新橋さん。
 賛同者、橋元サキさん。
 心配してついてきてくれた、鈴鹿尋斗くん
それから。
 窓の外を静かに眺めている、水上紗映子さん。


 水上さんは、ちらりと一瞬こちらを見て、微笑んで、また目を窓の外に戻してしまった。






 僕の家には家族以外に5人も泊まれないので、どうするのかと思ったら、ホテルをとったそうだ。全員個室で。


 人件費に燃料費にホテル代……。


 この帰省(?)にいったいいくらかかっているんだろう……と思うけど、恐くて計算できない。
 もしこの費用、あとで明王寺さんから請求されたら、僕は破産宣告まったなしです。臓器でも売らないといけないやつです。




 いや、そんなことは、最初からわかってることだった。
 それでも、他にかえられないと思ったんだ。




(待ってろよ、綾矢あや




 僕は窓の外を見つめて、決意を新たにした。




   ◇ ◇ ◇




「…………帰ってきた」




 僕の地元の最寄りの空港で、飛行機を降りた僕らを待っていたのは……大型のリムジンだった。
 そのリムジンに送られて、僕の地元の町にたどり着いたのは、さすがに日が暮れそうな頃だった。




「ここが、神宮寺くんが育った町……」




 明王寺さんがつぶやく。


 町並み、というには家の合間に田んぼや畑が中途半端に挟まりすぎた田舎。
 18年間見慣れた風景が目に入ってくると、胃のあたり、心臓のあたりが、きゅうっと締まるような痛みを覚えた。


 といっても、いりくんだ細い道がまだまだ残っている土地なので、リムジンではこの町は走りづらいだろう。


 京都で4ヶ月すごして、あらためて地元を思ってみる。
 関東圏ではあるけれど過疎化が進み、狭い世界の中ですべての人間関係が動かずに真空パックされているような、そんな土地だ。
 人間関係は濃かったのかもしれない。
 それだけに、ずっと、窒息しそうだった。




「みんな、ごめんね?」




 何度目かわからない言葉が、またつい僕の口から漏れた。
 もう言わないって決めたのに、ああ、もう。
 隣に座っていた鈴鹿くんが、僕の頭にぽん、と手をやって、何度かぽんぽんとした。




「ところで、実家はこの先のマンションなんだよね?」と橋元さん。


「う、うん」


「あれって、たぶん知り合いだよね? あたし見覚えがある」


「え?」




 見ると、僕のマンションへつづく道で待ちかまえるように、同級生ー今回は男だけだったーが数名、たむろしている。




「やりすごして、マンションに向かって」




 明王寺さんが運転手さんに指示を出した。
 僕は、運転席のすぐ後ろの、外から見えにくい位置に移動し、念のため顔も隠した。
 外の音は何もきこえない。
 彼らなら、リムジンに何かの反応をしているかもしれないけど、ああどうか、車を傷つけてきませんように。


 それと同時に『なんでいるんだよ、暇か』と胸のなかで突っ込みが浮かぶ。
 だいぶ彼らを相対化できている自分に、ほっとしたとき、




「抜けました」と運転者さんが声をかけてくれた。




   ◇ ◇ ◇

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