スクールカースト最下層がイケメンに魔改造されたけど、恋愛スキルを誰かください。

真曽木トウル

第53話 電話越しの戦いと、その先。





『……耳、キーンってなった、キーンって!!』




 いきなり電話の向こうの相手が変わった。
 男だ。誰だ?
 なんだかガサガサした声だ。聞き覚えがあるような、ないような。




『もーしもーし!
 じんぐーじくーん?』




 今度は女が電話でしゃべる。
 ギャハギャハと後ろで下品に笑ってる奴らがいる。


 何なんだ?
 どうして、綾矢はこんな奴らといるんだ?
 いったい、何者たちなんだ?




『なんで連絡してくれないのー?』
「は……?」
『ほらー。ずっと既読スルーじゃん?』




 女の声に、僕は息を飲んだ。
 ずっと僕に連絡をしてきていた同級生の女子だ。




「なんで……」


『こっちのセリフー。
 なんで返事してくれないの?』


「……どのつら下げてそんなこと言えるの?」




 自分でも驚くほど低い声で、自分でも驚くような言葉が出た。




「ねぇ。
 何を僕に言ってきた?
 何を僕にしてきた?
 全部忘れたわけじゃなくて覚えてて、そういうことしてるんだよね?」


『…………………』いつの間にか、電話の向こうの笑い声が止まっている。


「よくわかった。
 何も僕が悪いわけじゃなかったんだ。
 ただ、そっちが、僕だったら何言っても、何やってもいいって思ってただけなんだ。
 そうやっていま、綾矢のことも同じように思ってるんだ。だから電話かけさせてるんだ」


『はい? もしも―し電話変わり……』


「うるさい、犯罪者」




 電話の相手がまた男に変わったけど、止まらない。




「また、綾矢に同じことをして、また同じことをするために僕を呼び戻そうとしてるんだ。怒りしかないよ、君らのことばに傷ついてた自分に」




 ああ、怒ってたんだ。
 怒ってたんだ、僕は。
 ずっと言いたかったんだ。




「……望みどおり、そっちに帰ってやる」




 僕は黙っている相手にことばをぶつけた。




「誰が綾矢にそんなことをしたのか、綾矢から聞くから。誰ひとり逃げられないから、そのつもりで」


『は、はあ!? おまえ、おかしく……』


「とっととうちの家から出ていけ!!
 いますぐ!!!」




 そう言いながら、僕は電話を切らなかった。
 しばしの時間ののち、電話の向こうでなにかぶつくさと男女が文句を言いながら、動いている気配がした。


 全員帰った、と思われたとき。


 綾矢が、泣き崩れる声がした。


   ◇ ◇ ◇


 僕は、電話を切らなかった。
 綾矢はそれから、ポツポツと教えてくれた。


 僕が卒業してからのことじゃない。
 もっと前から、ずっと綾矢も、僕と同じひどい扱いを受けていたのだという。
 僕の妹だから、という理由で。
 だから、僕の顔を見るのもつらかったのだと。




『ねぇ、私、そっちに行ってもいいかな?』




 あまりに追い詰められていたのか、綾矢はそんなことを言い出した。
 高校を中退して、僕と京都に一緒に住み、こちらで高卒認定試験を受けたい、と。


 綾矢のことを何もわかっていなかった自分にショックを受けながらも、それもいいかもしれないと一瞬僕は思ってしまった。


 どうしようもない奴らからは逃げるしかない。
 僕は男で、体は大きいからまだましだけど、綾矢は女の子で平均的な身長で、華奢きゃしゃだ。
 身に危険が迫るぐらいなら、逃げてしまった方がいい、そう、思ってしまった。




 だけど、暑い中、外で僕たちの電話をそばで待ってくれていたみんな(ただしサキさん以外の合コンにきていた女子の皆様はお帰りいただいていた)は、
「悪くない方が去らなきゃいけないなんておかしい」
と、声をそろえた。




「ねぇ、神宮寺。
 いったん、帰ってみようぜ。
 


「へ……?」




 なんか、新橋さんがおかしなことを言い出した、と思ったら「賛成!」とかサキさんが言い出した。


「俺も8月12日に京都にいればいい。
 それまでの間なら移動できる」


 常識人の鈴鹿くんまで何か言い出した。
 なんなの、新橋さんに毒されたの。


「き、気持ちはありがたいけど……僕の実家、関東だよ。僕ひとりならともかく、大勢で移動できる手段がないよ。今じゃ、新幹線もいっぱいだし、車で行こうにも………」


「大丈夫!!!」




 いたずらっぽい笑みを浮かべて、サキさんが自分の携帯を取り出した。




「私、貸しがある人がいるから」




   ◇ ◇ ◇

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