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スクールカースト最下層がイケメンに魔改造されたけど、恋愛スキルを誰かください。

真曽木トウル

第49話 カラオケ用の歌なんて準備してない!!

「……なに話してんのー?」




 ひょこっ、と、汗をかいたサキさんが、僕たちの顔を覗いていた。




「どうだった? 鈴鹿くんとの組手」


「うーん……なまってたよぉ…」


「待って。1年前まで現役の自衛隊員だったのに!?」


「うん。。。。私じゃ全然相手にならなかったぁ」




 サキさんが落ち込んだようなことを言うのは珍しい。
 腰を曲げて僕たちを見下ろす姿勢は、丸い胸が意外と強調されていて、……気づいたらちょっと目のやり場に困る。
 サキさんから押しつけられたことはないけれど。
 とか思っていたら、ぺたん、とサキさんが僕の前に座った。




「まぁ、体重体格差がだいぶありますから」鈴鹿くんもそう言いながら、こちらに近づいてくる。「どうしても競技ルールになると金的や目、喉なんかがないので、体格差や男女差が出ますね」


「ああ、うん、そうだねー。攻撃がだいぶ限られてちょっとやりにくかった。……ってか敬語使うなっつったよね!?」


「………………」なぜふたりとも、急所攻撃ありがデフォルトになってるのでしょうか。あと、鈴鹿くんがいるとたまにサキさんの地?が出るので面白い。そして動じない新橋先輩。


 ふと、新橋先輩が僕に目を向けた。


「ところで神宮寺、海とか――――」
「――――絶対嫌です」
「即答!?」


 きっぱり断るのは僕にしては珍しいけど、これだけはどうしても譲れない。


「無理です嫌です水泳は………トラウマが」
「トラウマ?」
「聞きたいですか?」


 僕が新橋先輩、鈴鹿くん、サキさんの順番に目をやると、みんな、なんとなくうなずいた。
 じゃあ、いいか。


「中高で、水泳の時間が終わったら『神宮寺がこっち見てた、恐い』って言う女子が出て、その子の友達につるし上げを食らうか、彼氏に殴られるっていう目に、3回ぐらい遇いました」


「…………………」
 自分の知らない世界に、言葉を失う鈴鹿くん。


「あ、うん………たしかにその、学校の水泳ね、、、男子と一緒だと嫌だね。目線が気になって神経質になっちゃったりとかはあった。けど……」
 どうやら女子なので気持ちが一部わかってしまうらしい、サキさん。


「ええ、と。海、は、そんなことないんじゃないかな?」
と、新橋先輩。




 僕だって、そのこと自体は最近まで忘れていた。連絡してきた同級生女子が、水泳後の事件のもとになったひとりでなければ、もっと忘れていられたかもしれない。
 あのときは、告白したことを学年中にばらされたあとだったので、もう、ずっと、存在が許されないような空気だった。思い出してしまうと、本当にしんどい。




「なので、行かれる時は皆様でどうぞ!」


「いや。でもさぁ、神宮寺ももっとリア充なことしようよ。
 学生のうちに、楽しいことしないとさ」


「鈴鹿くんちで本読んでても、みんなで運動してても楽しいです」


「うーん。。。そうじゃなくて、さ。。。。こう、選択肢を増やしていくというか。。。。」


 新橋さんの言いたいこともわかるんだけど、僕も屈するわけにはいかない。一生懸命抵抗していると、


「あ、じゃ、トラウマにも関係なくてお金が安く済んで、移動距離も近くて済むことからしていきましょうよ!」とサキさんが口を挟む。


「距離が近くて済むこと?」


「うん、たとえばカラオケとか。他の子も呼んで」


「お、いいんじゃないですか!?
 歌いたい俺!!」


「いいですよね?
 服も変えないでいいし、特にしんどい要素もないですし!!
 えっと、神宮寺くんはどう!?」


「えっと……」僕は鈴鹿くんに目を向ける「す、すずかくんはどうだろう?」


 硬派な鈴鹿くんにカラオケが好きなイメージはないから、鈴鹿くんが反対してくれるんじゃないかとちょっと期待して目を向けたところ、「聴くだけなら」とサラッと返事をする鈴鹿くん。うんそれ、断っていいとこじゃないの!?


「じゃ、神宮寺が大丈夫なら、他のやつも呼ぶから!!」


 いつのまにか脳内で僕が承認したことになっているらしい新橋先輩がスマホを取り出すのに、僕は半ば諦めながら、「はい。。。。」と言ったのでした。






 ――――声を出して歌ったことがあるのは、たぶん中学での合唱が最後なんですが、いったいどうしたらいいですか?






   ◇ ◇ ◇

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