スクールカースト最下層がイケメンに魔改造されたけど、恋愛スキルを誰かください。
第48話 『ざまぁ』は人生に必要なのか。
「まえにも言ったよね?
俺が素材だったら限界があるけど、もっといい原石の男だったら超イケメンにできるって」
「え、ええ……」(むしろ限界がある素材は僕なのでは?)
「最初に会ったときから、こいつ超イケメンになれるなって思ってたから、声かけた。それだけ」
にこっ、と新橋さんは笑う。
「でも、もっとこう………やりやすい奴がよかったとか、思いませんでした?」
「えーなに、珍しいね。
そういうめんどくさいカノジョみたいな質問するの」
けらけら笑ったあと、そうねー、と新橋さんは考え、
「まぁ、他の男よりも、神宮寺をイケメンにしたかった、つーのはあるよ」
「それは、なんで……」
「ほっといたら遠慮しすぎで死にそうだから」
「!?」
「なんか、サークルの見学に来てくれてたときから、周りのみんなに遠慮してばっかりでさ。自己評価もひっくいし。
ああ、これは周りがこれまで、この子をちゃんと評価してこなかったんだなぁ、と思ったら、なんか腹立ってきて。
その、会ったことないんだけど、腹いせもあってね。神宮寺が超イケメンになって、そいつらが度肝を抜かれればいい、悔しがればいい、って、そう」
「なんで………」
「なんつうか、世の中って理不尽で、たいていのことってやられたもの損、やられっぱなしじゃん。一矢報いたいときってあるよね」
ぺたん、と、僕の横に新橋さんが体育座りして、続ける。
「まぁ、俺が中学のとき、やられる側、つーか搾取される側だったんですけど。それが嫌で、ちょっと上の方の高校行ったのね。いまの俺なら、そいつらにも反撃できるけど、やり返せる機会はもうない。
それに、多分2度と会わない方がいい」
「それはどうして……」
「記憶は人によって違うからさ。あいつらの記憶をこちらにぶつけられた時に―――たとえばあいつらにとっては楽しく遊んでるつもりだったとか、加害してるとさえ思ってなかったとか―――さらにダメージをこちらが食らうかもしれないなら、触れない方がいい。
とかいいつつ、モヤモヤしてんのはモヤモヤしてんのよね。大学にはいって精一杯リア充してるけど、あいつらが見て悔しがるほどじゃないし。
俺はそんなんだけど、神宮寺はちがう」
新橋さんは、ぺたぺたと、僕の頬を触った。
水上さんの触り方に似ている、と僕は思った。
もしかしたら、昔、誰にも言わずに付き合っていたことがあったのかも、と、ほのかに邪推した。
「僕も――――会わない方がいいと思いますか?」
「うーん。
俺の個人的感想を言えば、神宮寺をバカにした奴に超イケメンになった神宮寺を見せて、悔しがらせて、それを写メりたい。性格悪いから」
新橋さんが笑うのに、つられて、笑った。
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