スクールカースト最下層がイケメンに魔改造されたけど、恋愛スキルを誰かください。

真曽木トウル

第45話 7年前の僕は小学6年生だった。

   ◇ ◇ ◇




「高校まで行って、その先大学進学って選択肢が最初からなかったんだよねぇ。経済的にも。
 先生たちからは、奨学金を取ってでも絶対大学に行っておくべきだってくりかえされたんだけど、家を否定されたみたいな気がして、ちょっと意固地になってたかなぁ」


「奨学金は奨学金で、たいへんですけどね」




 橋元さんの言葉に、いま絶賛奨学金によって生命を維持している鈴鹿くんは口を挟む。


 緊急事態もろもろの処理のため鈴鹿くんはアルバイト時間を予定より早く終了し、渦中の橋元サキさんとともに、丸太町の僕の家まで来ていた(こういうときに喫茶店とかカラオケとか使うお金がないのが僕ら貧乏学生だ)。


 美男美女を、決して綺麗とは言えない家にお迎えし、本当ならもっと緊張しているところだけど、それよりも、橋元さんの話が気になり、僕は耳を傾けている。




「かと言って、どんな仕事に就いたらいいかわからないし、多少体力ある以外、なにができるんだろうって。
 そんなこと考えてたら、その年の秋に、豪雨災害があったのね。たくさん家が、濁流に流されてて」


「豪雨災害………」




 7年前。僕が小学6年生の時。
 当然ニュースで見たことがある災害のどれかだと思うけど、毎年のように災害の話は耳にして、どれがどの年にあったことかが、もうわからなくなっている。
 たとえば2011年の東日本大震災、1995年の阪神大震災は、産まれてなくても、記憶がなくても、忘れないのに。


 そんな僕の様子を見てとったか、寂しそうに、橋元さんは微笑む。




「そうだよね。じゃなかったら、なかなか覚えていられないよね」


「う、うん、ごめん……」




 当事者とは、被災した人のことか、対応に追われ、救助に追われた人のことか。




「すっごい覚悟を決めたわけじゃ、なかったの。
 ただ、なにかが起きたときに、その人たちを守る人間がいるんだなってことを思ったのね。いろんな人間が、社会を回してて。その人たちを守る人間が必要なのかな、と思って。
 ――――まぁ、すごいヒーローになってみたいって夢見た気持ちも、ないわけじゃないんだけど」


「わかるよ」




 役に立てる場所があれば、そこで人の役に立ちたい。
 そしてカッコよく活躍してみたい。
 もし望んでいいなら、褒めてもらいたい。
 どれも、痛いほどわかる。




「5年、できる限りのことは、がんばったよ。毎年のようにいろんなところで。助けられた人もいれば、そうじゃなかったこともあったし。
 外部には言えないことも多いけど、しんどかったことも、キツかったことも、がんばった。ひとことじゃ、言えないかな」


 少し遠い目をした橋元さんが、そうそう、と、僕らに目を戻した。


「自衛隊の格闘術って日本拳法がベースになってるんだけど、近くの道場に教えにいったりとかしたんだ。高校生の頃の鈴鹿くんが一時期通ってたんだけど、女の子同士のトラブルが多発して半年ぐらいで出禁になってたよね」




 なるほど………。
 危険な投げ技と、鈴鹿くんの『先生』よびの謎がとけた。
 憮然とした顔の鈴鹿くんが、水を飲んでいる。これも彼にとってはトラウマなのかな。




「大学に入り直した時に、歳を最初に言えば良かったね。
 ごめんね」




 ううん、と、僕は首をふった。


 学校、という、多くはおんなじ年の人間ばかりが集まる場で、同じ学年の面々よりも少し年上だというのは、キツイだろうなというのは僕にも想像がつく。




「18歳に戻って、みんなと同じ歳の子のように青春を過ごしたいっていう気持ちは、何も責められるべきものじゃない。
 僕だって………」




 一瞬ためらって、僕は続けた。




「スクールカーストの一番下で、誰からも嫌われて相手にされなかった僕だって。
 ただ普通に、仲間と笑い合いたかった」





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