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スクールカースト最下層がイケメンに魔改造されたけど、恋愛スキルを誰かください。

真曽木トウル

第37話 絶体絶命。





「えっと……なんでまた、そういうことを言うのかな…?」




 声が泳いでいる、と、自分で思った。
 震えている、というか、泳いでいる。


 僕に興味を持ってくれてるんだ。
 僕に好意をもってくれてるんだ。
 少し前までこの世の最底辺にいた、この僕に。
 無理矢理でめちゃくちゃなやり方だとしても、好意を寄せてくれるなんて、ありがたいことのはずなのに。


 ……受け入れられない、この、土足感。




「違うの?」


「だって、人間、誰しもがほかの誰かを傷つけながら生きてるよね。誰が僕を傷つけたとか、意味あるの?
 どうせ僕も、生きるなかで誰かを傷つけてるんだから」




 一瞬、明王寺さんはきょとん、として。
 それから、目を伏せ、笑顔だけど、どこか忌々しそうな声を出した。




「神宮寺クンっぽくない言葉だね。鈴鹿尋斗みたい。
 人を傷つけるのも、傷つけられるのも、大嫌いなくせに」


「…………わからないんだけど。
 なんでそう、明王寺さんは僕を断定するの」


「誰より見てる自信があるから。
 鈴鹿尋斗よりも、この大学の誰よりも」


「………ストーカー的な意味で?」




 フフン、と明王寺さんは笑う。「勘が良くなった?」


 勘?
 勘って。。。。




「……え! 待って!? どこまで僕を…!?」


「……というほどのことでも?
 キミの高校の出身者を探してSNSでつながってみただけ」




 喉の奥が、急に飲み込めない石がふさいだように、詰まる。


 なんだって?
 僕のことを世界で一番気持ち悪いと、死ねばいいのにと言っていた、あの人たちと?




「キミと同じクラスだった人間もいたよ。
 男も女も、酷く下衆な奴らで、キミのことをペラペラと教えてくれたのはいいけど、神宮寺クンのことをずいぶんいじめてたみたいだから許さない。
 あんな奴らに囲まれて、否定されて否定されて育ったのなら、キミの自己評価がそんなに低いのもうなずける話。
 そういえば、神宮寺クンと京都で会ったって言ってる男もいた。モデルみたいな女を連れていた、とね。
 三条和希先輩はキミとふたりで出掛けたりしないだろうし、可能性があるなら、橋本サキか」




 最低なことするね、といいかけたのをやっと飲み込んだ。


 吐きそうなほど、目の前の美少女が気持ち悪い。


 その僕の心理状態の変化も見通した上でいたぶってくるように、明王寺さんが僕の頬に触れようとしてきて、僕は明王寺さんの手を強く払った。
 明王寺さんが痛そうに、でもどこか満足そうに、白魚のような手をさする。




 その微笑みの、意味がわからない。
 嫌がらせ? 嫌がらせなのか?




「なんで。。。。」


「ほっておいたら、キミは何年たっても言わないでしょ?
 だから、調べた」


「だから、なんで…?」


「あのね。
 一番最初、ボクがサークル見学に行った日。
 キミが急に苦しそうな顔をして、すぐにいなくなったの。水上先輩にどこかに連れていかれて」




 ……僕がいなくなった?
 あの、ゴールデンウィーク前の練習で、気分が悪くなってしまったときのことか?




「それから、ずっとキミを見ていた。
 いつもいつも、周りのすべてに遠慮して、周りの期待にばかり応えようとしていて。
 苦しい本音をずっと押し込めてたように、ボクには見えた。
 キミを傷つけたものは何なのか、その時から、知りたくてたまらなくなった」




「………もう知っちゃったんでしょ。
 もういいから、いやよくないけど、でも、もう、ほっておいてくれないかな……?」




 混乱する。頭がぐるぐるする。今すぐ一人になりたい。自分の部屋で一人とじ込もって、布団をかぶってすべてを忘れたい。帰りたい。帰りたい。帰る。


 立とうとした足元がふらついた。


 いつの間にか明王寺さんの手が絡みついてる。
 強引にほどくのは骨折させそうで怖く、迷った瞬間、とん、と押され、僕は床に背をついた。


 するり。と、明王寺さんが、僕の上にまたがる。
 小さな顔が、見おろしながら、僕のすぐ上まで降りてくる。






「まだボクの質問に答えてないよ。今のキミを傷つけたのは誰?」




 耳元に。そっと口を寄せてきてささやいた。




「答えないなら、このまま襲ってしまうよ?」

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