スクールカースト最下層がイケメンに魔改造されたけど、恋愛スキルを誰かください。

真曽木トウル

第27話 いちばん心理的ハードルが高い系美人。

   ◇ ◇ ◇




「しばらく忙しかったの?」


「うん、まぁ。サークルの方はみんな元気?」


「元気は元気かなぁ、まだ辞めた子はいないのかな多分」


「なんでそんなネガティブなのw」




 レトロな金属の器でコーヒーをのみながらほほえむ、橋元さん。
 前に別の喫茶店に行ったときも思ったけど、この人の美しさは、文学的で硬派なものとも、とても合う。


 『辞めた子は~』発言の僕の念頭にあったのは、ついこの間の、鈴鹿くんの、女の子に恋したことない宣言。
 もちろん、人の心の中なんて自由だし、鈴鹿くんの恋愛事情に干渉していい人間もこの世に一人としていない。
 それでも、実際鈴鹿くんに夢中になっていた女の子は、


(何人か、辞めてしまうのでは?)


と僕は思っていた。


 恋しないのも自由、恋するのも自由。だったら、恋が叶わずサークルを辞めてしまうのも自由。
 トレイルランイベントだって、実際、山なんか走りたくねーよって学生は多いはず(ソースは僕です。走るか登るかどっちかにしようよって内心思ってますけど口には出さない)。




 そういった、いまのサークルの変化。
 橋元さんの方には、どれぐらいの情報が伝わってるんだろう?


 明王寺さんが広めているらしい、『既成事実』のこととか。




(明王寺さんの性格的に、真っ先に橋元さんに言いそうだけど、そもそも橋元さんと明王寺さん、連絡先交換してるのかなぁ?)




 いつもと変わらず、美人顔をにこにこさせている橋元さん。
 意外とその表情は、読めない。
 いきなり連絡してきた僕のことを、どう思っているのかも。




「祇園祭は誰かと行くの?」


「うーん。どうだろう……予定が空いてたら行くかも」


「ふーん?」


「橋元さんは……」




 いちばん聞きたいことをそんなに後回しにせずに、僕は口にした。




「忙しくなくなったら、またサークルにくるよね?
 落ち着いたら……来れるよね?」


「ん? うーん。どうしようかな?」


「え?」




 コーヒーのなかにミルクをたらして、くるくると回しまぜながら橋元さんは言う。




「真面目に毎回出てたときは一度も神宮寺くんから連絡してきたことなかったのに、サボってた方が連絡がくるんだもの。
 真面目にやってた方が損した感じするよね?」


「え、……いや……その!?」


「うそ、うそ」


 ケラケラ、橋元さんは笑った。


「もうー。そんな、『また間違えた!?』みたいな絶望的な顔しないでよ。
 他人の人生背負う義務、神宮寺くんにはないでしょ?」


「う、うん………?」


「あと、私、真面目が悪いなんて思ってないよ?
 ただ、真面目が必ず報われるわけじゃないからね。
 自分を恨まないためにも、時々不真面目に楽しく生きてます。OK?」


「うん、………うん」


「ところで神宮寺くん、ごはん食べる? パフェにする?」


「え、あ、あの、橋元さんは?」


「大丈夫、パフェも別腹だから」


(……………ほんとに?)


 太って恨まれたりしないだろうか、と思いながら、メニューの中で気になっていたパフェを、僕は指差した。「これがいいかな。でも、橋元さんは好きなものを」


「よし、頼もう」


「…………………………」ほんとに大丈夫?




 ――――胃袋はともかく。
 橋元さんと話していると、時々、『手練てだれ』って言葉が浮かんでくる。


 明王寺さんと別ベクトルで会話スキルが高い。
 いや、明王寺さんは会話の攻撃力が高いと言うべきで、橋元さんは、くるくると何がどうなっているかわからないまま転がされる隙のなさ、そつのなさ。一回先輩にかけてもらったことがある、少林寺拳法の技みたいな。




(……たぶん、じゃなく、確実にモテるよなぁ)




 普通に立っていても声をかけてくる男がたくさんいるんじゃないかという美人でおしゃれな人で、会話力や観察力に優れている。
 モテない理由は一切ないと思う。
 男なんて、よりどりみどり選べる立場だと思う。




(この人こそ、果たして僕でいいのか?)




 わりと橋元さんは、僕の中身を色々見抜いてる気がする。
 そとづらに騙されている人じゃない。
 いやむしろ、恋愛目的だと思ってるのが僕の自意識過剰で、橋元さんのほうは男友達その23ぐらいと会ってる感覚なのでは……。


 色々考えていると、パフェが来た。
 ブラウニーののったチョコパフェ。
 美味しそう、と思いスプーンをいれようと思ったら。






 「………なにアイツ、神宮寺じゃね?………」
 「え?…あ、うっそ、アイツだわ」
 「……女連れ? え、アイツが?」






 店のなか、やや遠くから、僕の苗字を呼ぶ声が聞こえた。




「……!?」




 声がしたほうを恐る恐る、見ると、こちらをガン見している男ばかり3人の客と、目が合った。




 ――――最悪だ。




 会いたくない、高校の同級生たちだった。





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