スクールカースト最下層がイケメンに魔改造されたけど、恋愛スキルを誰かください。

真曽木トウル

第10話 モテ期が来てもスキルがない。

   ◇ ◇ ◇




 そして、ゴールデンウィークも明けて。
 サークルの活動中の、大学の体育館の中。


 僕も少しずつ、女の子たちという存在にも慣れてきて。
 一応、自分のことを話すぶんには、スムーズに答えが出てくるようにはなってきた。




「神宮寺くんって背が高いよねー。何センチあるの?」
「182センチ」
「そうなんだ、高いよね~」
(……なんでみんな身長訊くんだろう?)




「ねぇねぇ、文学部の何組?」
「え? えーと、2組」
「わーそうなんだ!
 友達が2組にすごいイケメンがいるって言ってたよ、そういえば!!」
(………ごめん、それ確実に僕じゃなくて鈴鹿くんだ)




「音楽ってどんなの聴く?」
「語学なに?」
「ねぇ、清水寺って行った?」




 サークルにはやっぱり、女子の見学者がたくさん来続けている。
 そして僕は、やたらと話し掛けられる。


(…………………………)


 彼女らの応対におたおたしていると、新橋さんが僕の背中をぽんと叩いてきた。




「どしたん? 神宮寺。なんか困ってんの?」


「あ、いえ、その………見学者の女の子の応対、僕でいいんですか? 先輩の方が?」


「何言ってんの?
 みんな神宮寺目当てで見学に来てるに決まってんじゃん?」


「え?」


「わかってなかったの?
 最初に俺、言ったじゃん。
 最初から神宮寺は8割満たしてるって。
 だから、俺たちが、超イケメンにするって。
 もうなってるんだって」


「………………!?」


「っていうか、水上なんか、最初から神宮寺カッコいいって言ってたじゃん!
 先輩たちの言うこと、信じなさいよ。
 だから、胸張って、笑顔で、新入部員獲得よろしく!」


「…………えーと………はい」




 この前の合コン騙し討ちは、新橋さんの中では、女子と話せない僕への『荒療治』のつもりだったらしい。
 直後に水上さんにきゅーっとシメられたそうで、あとで謝りの電話がきた。


 それにしても。
 クラスの中では、最近ようやくしゃべれる相手ができたぐらいで、次の目標は『友達をつくること』だし。
 まだまだ、しゃべりは壊滅的だし、服のセンスが向上したわけでもないし、眉の整えかたもこれから覚えないといけない。努力しなければいけない点はいっぱい、本当に山のようにある。
 だけど。




(……これまでの人生で、いちばん悩んでいたことが?
 このたった2、3週間で解決するって、どういうこと?)




 まだ一ヶ所も整形していないのに?


 まるで自分が、小中高とは美の感覚が違う異世界に来てしまったかのような感覚さえある。


 ………正直、足元がおぼつかなくて、不安だ。
 ただ、いま、どうやら僕は、このサークルの役に立っているのらしい。それだけは、不安な心を温めた。




   ◇ ◇ ◇




 一方、見学者の女の子たちは、続々と、入部届けを提出してくれているようだった。
 僕の見た目はマシになったんだ。
 そう自分に言い聞かせ。
 いままで友達というものがいなかった僕は、同じサークルの子たちと、友達になろうと試みることにした。




 ――――したのだけど。




「ねぇ、神宮寺くん」




 サークルの活動終了後、みんなでご飯を食べて帰る時間(当然夜。しかもそこそこ遅い時間)、ぱっちりと大きな目に自信が満ちている女の子が、僕を見上げて話しかけてくる。


 夜でもキラキラ輝いている目に、クールビューティーなメイク。
 亜麻色の髪は柔らかく巻いて、オシャレなジャケットに凝った柄のスカート、スタイルも良くて、ファッション誌からそのまま出てきたような美人さん。


 先日の合コンで新橋さんが呼んだ女の子の一人で、他大学の1回生の、橋元サキさん、という。
 僕と同じ学年と思えないほど、大人っぽい。


 その橋元さんが、品よく微笑みながら言う。




「このあと、ちょっと時間ある?
 先輩から素敵なバーを教えてもらったんだけど、神宮寺くんと一緒に行ってみたいなって」


「え、えっと、あの、僕、お酒は………」


「お酒は苦手なんだよねー神宮寺クン!」


「!!?」




 いきなり、橋元さんの反対側から、ぎゅっと僕の腕にしがみついてきた女の子がいた。(当たってます、めちゃめちゃ胸が当たってます!!)




「ねぇねぇ、それよりさ。
 神宮寺クンが好きって言ってたゲームの新作買ったの!
 うちに来て、一緒にやらない!?」




 つやつやの長い黒髪ストレートに、童貞を殺す系のコルセット付きワンピースで、僕を見上げて、にぃっと微笑む、黒い瞳の猫系の美人。
 コルセットに乗っかった大きな胸―――細いけどFカップあるとよく自慢してる―――を、遠慮なく、僕の腕にすりつけてくる。
 この人は、明王寺まほろさん、という、こちらも一回生。
 こちらは同じ大学の、医学部。


 この時間から? 彼女の家で? 2人で?




「……………………」




 巨乳のせいでしばらくフリーズしていたら、
「まぁまぁ、遅いから、土日とかにまた誘ったら?」
と、笑いながら水上さんが間に入ってくれた。


 にこっ、と橋元さんは余裕の笑みを見せて
「じゃあ、美味しいお料理の店を見つけたら誘わせてね!」
と言った。


 明王寺さんは意味深に笑み、
「土日は予定空けててね?」
と言って、離れる。


 ほっと、力が抜ける気がした。
 と、水上さんが、僕の頬をぴたぴたと触りながら、「ごめんな、邪魔して」と謝る。


「え、ええ? いえ、助かり、ました」


「いやー、別のときならともかく、あの2人が同時に誘ってるっていうんがねー。サークルの中の雰囲気が悪くなるとあかんかなーと思って。
 ごめんな。神宮寺くん的には、邪魔せん方がいいんやろうな、とも思ったんやけど」


「い、いえ!? そんなことは!?」


「そう?
 まぁ、いいか。
 トラブルにはならへんようにがんばってな」




 水上さんに頭を下げてから、僕は、早足で自転車置き場へと急いだ。
 自分の自転車にまたがり、家へと、こぎはじめる。


 腕に、大きな胸の感触が残ってる。
 こんな時間に男を誘って、あの2人はどうするつもりだったんだろうとぼんやり考えたり、でもその答えを本当は僕もわかっていたり。


 どうやら、モテている、という状況らしい。
 だけど、モテていても、どうしたらいいのかわからない。
 端的に言えば、ヤりたいという欲求は僕にもある。
 だけど。
 さっきみたいなとき、いったいどうしたらよかったんだ。
 モテてる男は、こういうときどうしてるんだろう。




 叫び出したい衝動を抱えながら、僕は、猛烈にペダルをこいだ。




   ◇ ◇ ◇

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